北海道新聞の本日付夕刊に「クールビジネス」というタイトルの署名付きコラムが掲載されました。
その内容は「釧路の涼しさを都会に持って行けないものかと考えるが、実はそんな実験が5年前に行われていた。苫小牧地区で冬に作った氷を首都圏に運んで冷房に使う試みだった」というもの。まさに私が担当していた雪氷輸送実験のことでした。
実はこの記事を書いた報道部長のTさんが半月ほど前に私の元を訪れてきて雑談をしました。
そのときはTさんから「昔の映像ライブラリを整理していたら、ヘルメットを被ったこままささんが映っていたのを見つけて、そういえば氷を運んでいた実験はどうなったのかと思い出したんですよ」と言われました。
このときの雪氷輸送の問題意識は、北海道に向けて荷物を運んでくるトラックが帰る時に運ぶ荷物が少ないため高コスト構造になっている、ということで、空で帰るくらいだったら氷をちょっとした経費で運んでもらい、東京で冷房に使えないか、という発想でした。
実験の結果は可能性がないわけではないものの、氷の安定的な製造や切り出す技術はもっとノウハウを積み重ねなくてはダメだというものでしたが、結果的にはその後燃料代が高騰したために全体のスキームが狂ってしまいました。
氷を受け入れて冷房に使おうという建物の方は、嵐などで氷が届かなかった時のことを考えると氷に頼るだけではなくやはり電気による冷房装置も必要になるため、効率化も難しいというもの。なにより氷は重量があるので、その安全性を保つのも難しいという事が分かりました。
ただ氷冷房が無理というのではなく、氷を動かさない条件で行えばかなり効率性も高まるというのが結論で、こういう形で冷熱を運ぶことを考えると電気は本当に安いのだな、と思ったものです」
でも大震災と津波、さらに原子力発電所の事故などでり電気が高価なエネルギーになるのなら、こうした実験に再び光が当たってもおかしくありません。
しかし私としては、氷を運ぶのも良いけれど、やはり涼しい釧路を訪れてもらってその土地柄を味わってもらう方が好きです。釧路の数多い魅力を冷たい熱だけに収斂させてしまうのはもったいないことです。
英語のクールには「かっこいい」という意味もあります。釧路の「クールビジネス」は涼しさに加えて、山と湖と湿原に原始河川という多様な自然を背景に、釣りやカヌー、登山にドライブなど他では得られない体験が得られる「かっこいい」という意味のクールもビジネスに結びつけたいものです。