駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇月組『I AM FROM AUSTRIA』

2019年12月29日 | 観劇記/タイトルあ行
 宝塚大劇場、2019年10月4日15時(初日)、5日11時、22日13時、18時(新公)。
 東京宝塚劇場、12月19日18時半、26日18時半。

 ここはホテル・エードラー、ウィーンにある老舗四つ星ホテル。跡取りのジョージ・エードラー(珠城りょう)は伝統と格式を重んじる両親に対して、今の時代に合わせた改革を進めていくべきだと考え、積極的に経営に参加している。この日ホテルでは悲願の五つ星達成をかけた大物ゲストを迎える準備が進められていた。ハリウッドで成功を収め、今や世界的な有名人となったオーストリア出身の女優エマ・カーター(美園さくら)がお忍びで滞在することになったのだ。しかしこのトップシークレットをフロント係のフェリックス(風間柚乃)がSNSに投稿してしまい、ホテルは大混乱に。ジョージは投稿したのは自分だとフェリックスをかばいその場を取り繕うが、エマと彼のマネージャー・リチャード(月城かなと)の怒りは収まらない。ジョージはエマに謝ろうと、名物のエードラー・トルテを手にスイートルームを訪れるが…
 作詞・作曲/ラインハルト・フェンドリッヒ、脚本/ティトゥス・ホフマン、クリスティアン・シュトゥルペック、潤色・演出/齋藤吉正、編曲/手島恭子。『エリザベート』『モーツァルト!』などの数々の大ヒットを生み出したウィーン劇場協会が2017年9月にオーストリアそのものを題材として作成したミュージカルを、日本とオーストリアの国交樹立150周年を記念して日本初上演。全2幕。

 初日の感想はこちら。回数を観ていないのでわかりませんが、東京公演でも大きな変更はなかったようなので(パブロ(暁千星)がフェリックスを見初めた(笑)ときに照明がピンクになる、ズバリ改悪くらいでししたかね…)、おおむねこちらで語り尽くしているな、という感じです。とにかく組子ががんばっていて優秀などけに、訳詞と台詞の日本語にもっとデリカシーと深みが欲しかった。それに尽きます。仕事してヨシマサ!
 もちろんいろいろ改変は大変だったんだろうし先方との交渉も折衝も大変だったことでしょう。現地版未見で語っているので申し訳ありませんが、それでも演出的なことはおそらくとてもよく改変できていると思うんですよね。なのに脚本が、日本語がザルい。宝塚歌劇は伝統的に脚本・演出は同一人物が手がけているんですけれど、もしあまりに大変だったのなら、あるいは一方が激しく苦手なら、別の人間がやりゃいいじゃんとは言いたくなります。フレキシビリティが大事だってジョージもヴォルフガング(鳳月杏)も言ってたよ劇団…
 今回の作品が大きく宝塚歌劇化されている点として、現地版はエマが主人公なのにジヨージ主人公としたこと(『エリザベート』と同じパターンですね)、パプロの相手をフェリックスにしたこと、台詞での言及しかなかったエマの母親ヘルタ(夏月都)を実際に登場させたこと、があるかと思います。いずれも成功しているし、望ましい改変だったと思います。でもこういう改変や翻案が許諾されていたのなら、なおさら訳詞や台詞なんて、ぶっちゃけ先方には日本語の細かいニュアンスなんかわからないんだから黙テンでもいいからもっと手を入れちゃえばよかったのに、と思ってしまうんですよ。もともとがいわゆるカタログ・ミュージカル(ジュークボックス・ミュージカル、とも言われますよね)で既成の歌を並べただけのものにストーリーを後付けした作品なので、歌詞が実は話にそぐわなかったり微妙だったりするのは当然だと思うのですが、まんまドイツ語でやるわけじゃないんだからもっとストーリーに寄せて思い切って訳してしまえばよかったじゃん、と思うんですよ。
 日本人の民族性として、というと話が大きくなりすぎますから私個人の話にするとたとえば私はショーの見方が下手な自覚があって、たとえばバレエなんかもコンテンポラリー・ダンスやガラ・コンサートよりも古典の全幕ものの方が好みで、それは要するに「物語」を愛しているからなんですね。漫画でも小説でも映画でも演劇でも、それこそ歌やダンスでも、その背景に物語を見たい派なんです。歌やダンスをただ純粋に楽しむスキルがない、と白状してもいい。もちろん上手い!とかすごい!とかで感心はするけど、技術的なものすごさの裏にさらに、それがなんらかのストーリー展開やキャラクターの感情を歌ったり踊ったりしているものでドラマが見えれば、より楽しめるということです。もちろんショーはストーリー仕立ての場面ばかりが好きということはなくて、ただ歌ってるだけ踊ってるだけでも十分楽しめることもありますし、宝塚歌劇の場合はその場面や歌やダンスをそのスターがやる、ということにすでにドラマを見ることができることがあったりするものなので私は大丈夫なのです。でもコンテとかはホント困惑しちゃうんですよね私はね…まあそれはいい、なのでとにかくもっとストーリーと役の感情を掘り下げ深く表現する方向に訳詞と台詞を持っていってほしかったのです。
 たとえば主人公のジョージが最初に歌う大ナンバー「NIX IS FIX」が、そもそも訳すらされていなくて意味不明、ということがまずもって許しがたいです。現地では、外来語としての英語を取り入れていてオシャレでかつ十分通じる言葉なのかもしれません。NIXってNOTHINGの意味なんだそうですね。でもそれがわかる日本人なんていなくないですか? また主語を広げすぎですか私? 私が知らなかっただけ? でも私、友達に何人も「なんて意味?」って聞かれましたよ?
 なのでこれは「決まったことなど何もない、可能性は無限だ」みたいな意味だそうなんですが(プログラムに一応(「全てが可能」)って足されてましたけどね…姑息すぎる)、ならサビの、許可が出なかったのなら全部じゃなくて何箇所かだけでもたとえば「♪できるはず」とか「♪やってやる」とかに言い換えさせちゃダメだったの?と私は初日感想でつぶやきましたが、どうですか? ル・サンクにも実況CDにも歌詞が掲載されない(ちなみに脚本も非掲載)ので確認できませんが、前振りの台詞が良くないのもあってなんの場面、なんのナンバーなのか意味がよくわからず、ただ楽しいだけでは裏打ちだろうとなんだろうと手拍子しづらいしたくない、だって場面の意味がわからなくてキャラクターの心理に同調できないんだもん!…と考えるのが私なのでした。細かいことを考えずにノれよ! 楽しんだ者勝ちだよ、という意見ももちろんわかりますが、無理矢理ノるんじゃなくて、どうせなら、これは頭の固い両親に対していろいろチャレンジしたがっているジョージがノリノリで夢や未来や可能性を披露する明るく楽しい歌だって観客がちゃんとわかって、歌とダンスと歌詞からもあんなこともできるこんな未来もあるきっと楽しいはずってちゃんと思えて、ジョージに共感し応援したくなってついつい手拍子しちゃう…って流れに自然に誘導できた方がいいと思いませんか? それが脚本・演出の仕事でしょう?
 エマが最初に歌う「私の居場所」ももっと彼女の今の悩みや立場のジレンマに寄せた具体的な歌詞にしちゃえれば観客はもっと物語に引き込まれるし、ジョージとエマが初めて一緒に歌う「キス!キス!」も…以下同文。
 そして最大の難問、主題歌の訳詞については、逆にこれ以上は無理なんじゃないの?と私は考えているのですが、それとはまた別の問題も感じています。
 主題歌は現地では第二の国歌とも言われているそうで、国と地域の歴史的な成り立ちなんかも踏まえて現在に至るまでの、現地人のとても複雑で繊細な想いを込めた歌詞になっているそうですが、それはさすがに全部は訳せないし、訳せたとしても極東の島国に暮らす我々日本人なんかには同じように感じられるわけないじゃないですか。また主語を大きくしてすみません。でもヨーロッパの地続きの、言語も文化も近い、国籍や人種が入り乱れてでも確かに国境はあって、似ているような違うような同じような…なところで暮らすことの感覚は少なくとも私には想像しかできないし、それもかなり怪しいと考えています。「わかる」なんて口が裂けても言えません。
 だからまんまは無理。まんまを望むならそれは現地で現地人が現地語で上演するしかないし現地の観客が観ればいい、ということになってしまうでしょう。
 でもまんまは無理でも、せめて意図を、そしてそのエッセンスを組まなければいけないと思うのです。主題歌はともかく、作品タイトルは「I AM FROM AUSTRIA」ですよ、「I’m Austrian」でも「Ich bin osterreicher(「o」はウムラウトつき)」でもない。ウィーン・ミュージカルで、英語で、大文字。そのニュアンスを尊重すべきだと思うのです。
 だから安易に珠城ジョージに「僕たちはオーストリア人なんだ!」とか言わせないでほしい。全然わかってない、この件に関して考える気ゼロなんだなってモロバレです。鈍感すぎます、恥ずかしい。こんな感覚で世界に打って出るとかマジで無理だから。
 だって「オーストリア人」って何? 人種? 国籍? ジョージたちが炊き出ししているホームレスたちって多くが実は移民や難民だったりしませんか? さらに言えば国どころか家がない人に向けて、人種がどうとか言う意味あります? オーストリア人じゃなかったら助けないの? 日本でも先日の台風でそういう対応したどこかの役所がありましたけど、それの何がどう問題とされているのか、考えたことがないの? 現代劇を上演するのにそんな鈍感さでいいの? 
 人種も国籍も違っても、今、彼らはオーストリアにいる。だからオーストリアの仲間だ、我々は家族だ、この先どこかに移ったときには「オーストリアから来ました」「オーストリア出身です」と言うだろう…ってことなんじゃないの? 正直、自分でもこの解釈でいいのか自信ありませんが、少なくとも人種や国籍の話をしているのではない、ということがわかる訳、会話の流れであるべきなのでは? 
 あとホームレスだっつってんのに「ここがホームなんだ」とか支離滅裂すぎる。ちなみにくらげロミー(海乃美月)に「私たちはファミリー」って言わせるのもやめてほしい。イタリア・マフィアか? 普通の日本人はこういうときに家族のことをファミリーってわざわざ英語で言わないでしょ? 日本人が日本語で上演する作品に翻案しているんだから、脚本家には外来語も含めた日本語にもっともっと繊細でいてほしいです。
 人種とか国籍とか血縁とかではなく、今同じ場所にいるから仲間であり家族だ…というゆるく広い連帯、みたいなものがこの作品のテーマなのではないか、だからこそそこにきちんと立脚しなければこの作品を外国人が外国語で外国で上演しても意味ないんじゃないか?というのが、私が今回不満に思う最大の点なのでした。
 だったらこの程度のストーリー、それこそユーミンでもジャニーズでもAKBでもいいから許可取って並べてオリジナルのジュークボックス・ミュージカルを作ればいいじゃん。上っ面撫でただけの輸入とか、手抜き以外の何ものでもないですよ。
 理解とリスペクトが足りない仕事はやめていただきたい。日本語の細かいニュアンスが理解されていないだろうから今のところセーフなんだろうけれど、せめて先方には未だにバレていないことを切に願います。途中でバレてたら引き上げられるか、二度と仕事させてくれないかのレベルの問題だと私は思います。
 ホント毎度口うるさくてすみません。でも高みを目指すのは無駄ではないと私は思っているのです。まあライトに1、2回観るくらいなら楽しくてよかった、という方も多かったろうけれど、でも「よくわからない作品だった」「自分は好きじゃない」というお友達も私の周りには多かったので、やはりなあ、と思いました。贔屓がいるからリピートするけど毎回引っかかってつらかった、というお友達たちもね。
 海外ミュージカルあるあるで役は少ないんだけれど組子は本当にみんながんばっていて、アンサンブルなんかも現地版より人数の多さで圧倒し華やかさも賑やかさも増し増しで良かったんだろうなとも思いますし、現地スタッフや取材陣がフィナーレに大興奮したそうですけれどそれはさもありなんだし我々ファンとしても鼻が高いです。宝塚歌劇化で良くなった部分もたくさんある。だからこそ根本が甘いのが私は悔しかったのでした。

 以下、気分を切り替えて組子語り。
 ジョージ珠城さんは本当に素敵でした。本人はもうちょっと庶民派で無骨かつややギャル(笑)かなと思うだけに、いい感じにボンボンで軽口を父親から受け継いでいてもちろん真面目にいろいろ考えてもいるんだけれどライトな今どきの若者で…というキャラクターを、実に上手く的確に演じていると思いました。あたりまえだけどただの素ではないですよね。
 なんの変哲もないセーター姿が様になるのもすごいしシャツイチの破壊力もすごい。宝塚歌劇的な男役のカッコ良さが出過ぎちゃうと駄目な役だし、かといって普通にやると地味になりかねないしお話の主人公にもならないところを、絶妙なバランスで成立させていたのがさすがすぎました。
 原作準拠なだけかもしれないけれど、山小屋の一夜が情熱のあまりほぼ無理矢理…とかでなかったのも、現代のコードとしていい。エマがためらったらちゃんと一度離れますからね、大事なことです。今話題の性的同意って、「やりますか?」「やりましょう」ハンコ、みたいなことじゃないんですあたりまえですが。何故わからない振りをして騒ぎ立てるんだ世の男ども、そんなに自信がないのか恥ずかしくないのか? …脱線しましたが、そのあとのエマの反応はちゃんと違っていて、だから言葉はなくてもふたりが同じ気持ちでいることがお互いちゃんとわかって、だからなだれこむ(笑)わけでさ。お互いの愛情の確認と、望むならその先、身体も…ってだけのことなんです。シンプルで、強く、美しい。翌朝の「後悔してない?」が今さら感や言い訳感ゼロで成立するのも素晴らしい。人徳ですね、そりゃみんな結婚したいよね珠城さんと!!!
 エマさくさくは、私はさくさくファンなだけに、やややり過ぎに感じなくもなくもない…でしたが、これまたこういうベタな「ハリウッド女優」をヒロインとして演じるのって意外と難しいことだと思うので、さくさくの技量に惚れ直しもしました。
 製菓部の制服で銀橋でお芝居するところ、いつもボロ泣きの大熱演で、だからこそ余計にもっといい台詞で演技させてあげたかったと思ったものでした。派手なジャージの素晴らしい着こなしといい、現代的な役が似合うタイプのトップ娘役さんなのかもしれませんが、古典的なメロドラマもちゃんと似合うと思うので、次のレナール夫人もめちゃくちゃ楽しみにしています!
 そしてリチャードれいこ、ホント顔がいい…!
 この人ももちろんカレーニンとか大好きだったし古典的な芝居にもハマるんだけど、これだけ顔がいい人が全力で小悪党ってところが本当にいいツボなので、今回の作品にはハマりましたよねー。復帰おめでとう!
 マネージャーとしてはおそらくとても有能なんでしょうね、間違いなく彼の手腕でエマはビッグになれたんでしょう。エマに惚れたり手を出したりしていないところも素晴らしい、でも単にそれ以上にお金が好きなだけなのかもしれない(笑)。というか自分が好きなのかな、支配欲の強いナルシストで、そういう意味では古い男性像でもありますよね。エマが嫌がっているのをわかってて、言うこと無理矢理きかせる自分に酔ってますもん。だから今嫌われがちなキャラクター・ナンバーワンだと思います。それを顔のいい、えくぼがキュートなれいこがノリノリでやっているから楽しめるわけで、宝塚歌劇ってホントすごいなと感動するのでした。
 パブロありちゃんも大ヒットでした。あたりまえですがムキムキのボディビルダーみたいなマッチョではなかったけれど、筋肉質の世界的ファンタジスタ、ワイルドでモテモテのスターアスリートにちゃんとなりきってくれました。ものすごく研究したんだろうし、いい弾みになったと思います。可愛く見られがちだけどそれだけではない、というのは今までももう十分伝わっていたスターさんだと思うのですが、今すぐ古風で古典的な渋い大人の男がハマるかと言えば微妙にも思えるだけに、新たな魅力の発揮の仕方ができて、財産になったと思うんですよね。
 現地版ではフェリックスがこてこてのウィーン弁で笑いを取るそうですが、その代わりなのか日本版ではパブロが片言しゃべりの外国人をやらされていて、まあこれも表現として古いしなんなら差別的だと糾弾されてもおかしくないところをありちゃんのチャーミングさで救ってもらっているんだから劇団は感謝し反省してください。
 また、初日に私が危惧した、パブロに迫られて嫌がるフェリックスを嗤う構造にしてほしくない、それはいじめであり差別である、という点は、現地スタッフからも指摘が入ったそうで、ありちゃんもお茶会なんかで語っていましたがグイグイ迫っても最後の最後は待つ、相手の意思を尊重し、相手を無視して無理矢理押し切ったりはしない、という役作りをちゃんとしていて、安心しましたし微笑ましく見守れました。
 フェリックスおだちんも、前作は理事を向こうに回して研30の大奮闘だったわけですが(笑)、こういう等身大のライトな若者役がやっと回ってきて肩の力を抜いて演じられそうで、よかったね、という感じです。もちろん当人はもっとしっかりしているタイプでしょうが、だからこそ「駄目ダメな若者」をきっちりかつキュートに演じていて素晴らしかったです。
 フェリックスはどこにでもいる普通の、やや駄目なだけの男子なので、サッカーもF1もそりゃ大好きなわけです。だからパブロのことも普通にファンだったのでしょう。それがリアルで知り合える、というのを飛び越して口説かれたらそりゃ当惑しますよね。いくら同性愛がもっと一般的で差別がないとされている現代ウィーン社会であろうと、思ってもいなかった人から告白されたらまずとまどうのは当然です。私たちだって、大ファンでもたとえばユリちゃんとかから告白されたらまずとまどうでしょう(笑)。その案配の表現がおだちんは絶妙だったと思います。もちろん素でありおだが仲良しらしいという情報がファンにはある、というのも大きいわけですが。
 だからこそ、時ちゃんアンナ(叶羽時)の扱いが微妙で、脚本家にまた腹が立ちましたよね…フェリックスは本当にアンナが好きだったの? アンナはどう思ってたの? いい車に乗ってない男なんか男じゃない、って本当に思っているような女だったの? マーチン(春海ゆう)と舞踏会に行くのは本当に彼のダンスが上手かったから、だけ? 上手いダンスを踊れない男なんか男じゃない、ってこと? 自分に気がある男ふたりを両天秤にかけるような女なの?
 彼女をそういう女性に描くと、そんな彼女に惚れているフェリックスのことも下げることになるんですけど、ヨシマサそれわかってる? 舞踏会でフェリックスがパブロに告白されたときのアンナのあの台詞、要る? 餞別にしてももっといい出番の作り方があったと思いませんか? 残念すぎました…
 おかえりなさい!なヴォルフガングちなつもさすがの至芸でした。この軽みは簡単には出せません。脚が長くて大空さんのスーツの似合うこと!
 ちなつだったからこそのこのキャラの方向性だったのかなあ、もっと単なる「おじさん」「お父さん」だったりもありえたキャラクターだと思うのですが、くらげロミーともども理想のカップルの在り方になっていたのが新しく、素晴らしかったです。
 そのくらげちゃんも復帰おめでとう! パレードのひとり降りも快挙でしたが、そもそもこれくらいの実力者には当然これくらい遇すべきです。
 ちゃんとジョージの母親に見えたしちょっとキリキリ働きすぎてる職業婦人に見えました。若い頃のヤンチャ(笑)もよかった、素晴らしいダルマでした。これで卒業、とかでないのも本当によかった…役柄は選ぶかもしれませんがまだまだ活躍してほしい娘役さんですし、こういうところにきちんと役を書く劇団であってほしいです。
 さすがすぎるるうちゃんも素晴らしかったですね。エルフィー(光月るう)という名前は妖精のエルフから来ているのかもしれません。ホテル・エードラーの良き魔女、白き魔女ですね。ただ必要以上にババア呼ばわりされるいわれはないのでよく考えてください劇団よ。
 ヘルタのなっちゃんがまたいい感じで素晴らしく、ミス・ツヴィックルのさちかもありがちな役作りなんだけれど手堅い。てか本当にスタイルがいい。
 れんこん、るねっこ、ゆいちゃんじゅりちゃんがひと絡げなのは役がないせいで残念。ゆりちゃんはーちゃんやからんちゃんはさすが手堅い。まゆぽんも役不足ギリギリなんだけれどさすがの存在感でしたね。そうそう、ギリギリやヤス、ぱるに彩音くんとかがやはりちょいちょい目立ちました。

 大劇場新公も観られたので簡単にその感想も。
 うーちゃんは手堅かったけど地味だったかなー…でも主演ができたことはとてもよかったと思いますし、これから弾けていってほしいなと思っています。
 りりちゃんはとてもよかった! 初ヒロインでこういうお役は難しいと思うのだけれど、舞台度胸があるのかばーんとやれていて見ていて胸がすきました。あと声がとにかくいい!
 ぱるも、私はずっと気になっていたんですけどいつまでももさーっとしてるしなかなかバーンと出てこないなあと案じていましたが、がんばっていました輝いていました! さらに弾けてほしいです。
 蘭くんも小柄でニンでないのに奮闘していて好感。彩音くんは成績が悪いの? もっと役付き良くてもいい気がするのですが…
 大楠くんが達者で仰天したのと、転向したばかりでまだ濃い蘭世ロミーが濃さが効いていたのも印象的でした。あとゆいちゃんのミス・ツヴィックルが、そもそも色っぽいんだけれどちゃんとクレバーな方の役作りでむちゃくちゃよかったです。じゅりちゃんのヘルタも情感があってよかったなあ。
 そうそう、おだちんがさすが新公レベルではない上手さで光っていましたね。
 大きく代替わりしていた印象で、でもみんな奮闘していてキラキラ光っていて、楽しい新公でした。

 クリスマスに開催された「第12回演劇フォーラム 宝塚歌劇とウィーンミュージカル」にも参加してきました。
 ウィーンミュージカルの成り立ちや、主に『エリザベート』の宝塚版、東宝版との相違についてなどを語ってくださった渡辺芳敬先生の講演はとても明晰でおもしろかったのですが、オーストリアを舞台にした宝塚歌劇作品について語った石井啓夫先生の講演は配付資料をなぞっただけで、残念でした。そもそも冒頭の植田紳爾先生の開催挨拶が長かったのかもしれませんが、石井さんもお題に関して造詣が深いわけでもない単なるファントークに終始し、尺が押したせいでその後の齋藤吉正先生とのトークもまったく深い話にならず、まったくもってもったいなかったです。ヨシマサが農大出身だとかファンはみんな知ってるから! そこじゃなく、今回の作品に関しどこをどう何故改変したのかを語らせようよ! なのにそもそも現地版を観ていないような口ぶりでしたし、はっきり言って人選ミスですよね。竹下さんや中井さんならもっと勉強してきたと思うよ…?
 休憩も二部冒頭の映像も時間を短くしたりやめたりできただろうにしなかったので、たまさくれいこトークが予定よりだいぶ短かったのも残念でした。ただ、石井氏が司会をほぼ放棄したので、珠城さんの素晴らしいトーク力やれいことの楽しい絡みが見られたのは収穫でしたね。さくさくは緊張していて、それでも話を振られて現地版エマ女優のテクスチャーを大事にして演じている、と発言したのがさすがでした。テクスチャー! それで言えばウィーンときてクリムトの話を出すれいこもいかにもかつ興味深かったのに、何ソレ美味しいの?みたいな顔した石井氏ホントどうなの…
 まあまあな金額を取っているんだし、イベントとしてもうちょっと濃いものにしていただきたかったなというのが正直な感想です。


 今年はこれで宝塚観劇納めでした。来年は花組国際フォーラム公演からかな、ドラマシティ&雪組大劇場が遠征始めになりそうです。
 来年も良き演目良きスターとの出会いがありますように…!



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