駒子の備忘録

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『オーシャンズ11』

2014年06月21日 | 観劇記/タイトルあ行
 シアターオーブ、2014年6月16日マチネ。

 4年間服役していた天才詐欺師ダニー・オーシャン(香取慎吾)が仮釈放となるその日、妻テス(観月ありさ)の弁護士が離婚届を手に面会に訪れた。テスはラスヴェガスのホテル王テリー・ベネディクト(橋本さとし)の元で歌手としてスタートし、ダニーとは別れる気であるという。テスはベネディクトの新しい恋人だとも噂されており、今でもテスを愛しているダニーは衝撃を受けつつ、ある壮大な計画を思い描く…
 脚本・演出/小池修一郎、作曲・編曲・音楽監督/太田健、美術/松井るみ、振付/桜木涼介、YUSUKE、衣裳/有村淳。2001年公開の同名のアメリカ映画を2011年宝塚歌劇星組でミュージカル化、13年花組にて再演、その新バージョン。全2幕。

 星組版の感想はこちら、花組版の感想はこちら
 どちらも2回ずつくらいしか観ていませんし、まあ楽しかったな程度の感想しかなかったのですが、ラスティー役の山本耕史のファンだし、ダイアナ(霧矢大夢)をきりやんがやるというのでいそいそと出かけました。
 暗い中セリ上がったダニーの姿に、ああそういえばオケピから銀橋に出たんだっけ、まんまやるんだなと思い、囚人服がもこもこだったので引き抜いてスーツになるのねとワクワクし、なっても拍手が入らないのでああ宝塚とは違うのねと思い、振り付けが違うオープニングもバリバリ踊る男優陣がカッコよくてああいいじゃん!と盛り上がり、やっとシメに拍手が入れられて満足し…
 で、結局はぶーぶー言うハメになりました。
 比較して観てしまうのがいけないのかもしれません。しかしあえて言いますが私は星組版も花組版もそんなに入れ込んで観ませんでしたし、そういう意味では冷静に観られているつもりです。
 その上で言う、主役ふたりがひどい。
 シンゴちゃんはプログラムで、当初は宝塚版を強く意識しすぎたそうで(これがなくてももともとファンだもんね? よく日比谷でお見かけします)、男役みたいにカッコよくやろうとがんばりすきで苦労した、でもヘンに作らなくてもそもそも男なんだから、ということに気づいてからは楽になった…みたいなことを語っているのですが、役は作らなくちゃ役にはならないんですよ。あなたがただ舞台に立ってもそれはただのカトリシンゴでしかなくて、ファンにはそれでいいのかもしれませんが、演目を観に来ている人にとってはただのトウが立った青年ないしなんかもっさりした中年男にしか見えません。ダニーに見えない。そんなのダニーじゃない。
 歌は上手かったですよ? でも音程がきちんと取れている歌が聞けたからってハートが伝わらなきゃ意味がない。役が役の感情を歌っているからミュージカルの歌には意味があるんだよ? でなきゃ突然歌い出すワケないでしょ? カトリシンゴの歌が聞きたいならSMAPのコンソートに行くよ、カトリシンゴが見たいならテレビを見るよ。でも私たちはダニーとテスの物語が観たくて劇場に行ってるの! ダニーになって見せてくださいよ。
 シンゴちゃんのダニーは笑いもしません。クールでニヒルなキャラクターってこと?と思うと別にそうでもなさそうで、ただなんとなくめんどくさそうに動いているだけで、本気でやっているように見えませんでした。この人ホントに妻のことが好きなの? ライバルに妬いてるの? 自分の技量にプライドがあるの? 仲間のことを大事に思っているの?とハテナマークが私の脳内に飛び交いました。真情が見えない、性格が見えない、キャラクターとして魅力がわからない。物語の主人公としては完全に失敗していると私は思いました。
 演じること、まったく別の人格になりきることが楽しくないのなら役者なんかやらずにタレントでいればいいと思います。残念ながら私はショースターとしての魅力も感じなかったけれど、それは私に見る目がないせいなのかもしれません。
 でもとにかくこれだけは言う。ダニーじゃなかったし、主人公失格でした。
 観月ありさの在り方は、また違ったかな。シンゴちゃんはあれでいいんだと思ってやっている感じだったけれど、観月ありさは単に下手なだけ、スキルがないだけ、キャリアがないだけ…というふうに見えました。
 タカラジェンヌを見慣れている目にもびっくりの顔の小ささなんだけれど、でもじゃあものすごくスタイルがいいかと言うとそんなことはなくて、まず姿勢が悪くて立ち居振る舞いの訓練ができていないからどこからどう見ても美しい!という身体が作れていないし、そもそも身体が絞れていない。あんなに足が長いのに何故あんなにヒールが低い靴を履くの? 綺麗じゃないじゃん! 相手する男優はみんなそこそこタッパがあるし、たとえ女優の方が背が高くてもちゃんと女に見えますよ宝塚の男役と娘役じゃないんだから。ヒロインには綺麗でいる義務があるんです、そのことに対しなんの努力もしていないように見えることにまず腹が立つ。テレビで美人だろうがそんな無防備にノー・テクニックで板に立って間が持つもんじゃないんだよ舞台ってのは! イヤ出たことないから知らないんだけどね、それでもね。
 たとえばアンサンブルのスリー・ジュエルズ、エメラルド(真瀬はるか)にいまっちがいましたが、正直路線とも言い切れないうちにやめちゃったOGですよ。でも全然訓練ができていた。いつ見てもどこから見てもキュートでセクシーで可愛らしく、キビキビと動いていて気持ちがよかった。普通にヒロインができますよ。舞台役者ってこういうことだと思います。
 歌は上手かった。ねねちゃんより蘭ちゃんより断然上手かった。でも何度も言うけれどあなたの歌が聞きたいならCD買いますよ、違うのテスの歌を聴きたいのよ、テスの想いを歌に乗せてほしいのよ。それがミュージカル女優の仕事です。
 テレビや映画などの映像の役者が舞台にチャレンジしたがることは最近多いけれど、そして私もいくつか観ていますが、こんなにもすごい失敗例はなかなかないな…というくらいあきれました。
 もしも原作映画をまったく知らず、ヤマコーやさとっさんが出るから、小池先生の作品だからというだけで観たミュージカル・ファンがいたら、あきれたと思います。というかなんの話かわからなかったんじゃないかな? ダニーは詐欺師なんだかよくわからないし、ダニーとテスとベネディクトの三角関係のラブストーリーだとも思えなかったのではないでしょうか。そんな恋心が表れていませんでしたからね。
 ああ、つらかったわ…

 というワケで山本くんは上手いしさとっさんもいい仇役っぷりでした。きりやんは完全に役不足ですね。楽しそうにやっていて圧巻でした。坂元さんもフランク莉奈ちゃんもさすがでした。
 以上終了。

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