駒子の備忘録

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宝塚歌劇花組『オーシャンズ11』

2013年05月03日 | 観劇記/タイトルあ行
 東京宝塚劇場、2013年4月14日マチネ、27日ソワレ。

 服役中の天才詐欺師ダニー・オーシャン(蘭寿とむ)が晴れて仮釈放となるその日、ダニーの妻テス(蘭乃はな)の弁護士が離婚届を手に面会に訪れた。テスはラスヴェガスのホテル王テリー・ベネディクト(望海風斗)が新たに建設するホテルのショースターに抜擢され、犯罪歴のあるダニーとは別れるつもりだという。しかもテスはベネディクトの新しい恋人だとも噂されていた。今でもテスを愛しているダニーは刑務所を出て、ラスヴェガスへ向かう…
 脚本・演出/小池修一郎、作曲・編曲/太田健。2001年公開の同名ハリウッド映画の初ミュージカル化で、2011年に星組で上演されたものをブラッシュアップして再演。

 星組版の感想はこちら

 正直、スターの魅力はそれぞれそれなりに出てはいてもストーリーとして抜群におもしろかったとか作品としてとてもよくできているとかまでは思えなかったので、再演と聞いたときには若干がっかりしましたし、チケット前売りも芳しくなかったようで残念に思っていました。
 でも、蓋を開けたらなかなかに好評で、チケットも尻上がりに売れたようですし、まずはよかったよかった、というところでしょうか。
 今回二度観て、やっぱりお話が抜群におもしろい、ということはないと思うのですけれど(^^;)、星組版より確かにブラッシュアップされているし、生徒さんたちはキラキラがんばっているし、まゆたんの花組がやっといい演目に当たったのかな、という気がしました。
 お披露目の『ファントム』は私は好きな作品ですが、花組としての再演が前回から近すぎた気がしましたし、エリックがまゆたんのニンだったかというと微妙だと思いましたし(まゆたんらしいエリックになっていたとは思いますが)、その後の作品もファンはまあまあ喜ぶかもしれないけれど外からのファンが増えるような役や作品ではなかったかも…という印象だったんですね。
 でもこのダニーは、そしてこの作品は、特にファンでない人が観てもカッコいいな、楽しかったな、素敵だったな、と思うタイプの作品だったと思うのですよ。それがよかったなあと、素直に思うのでした。

 なので以下、主に演者の感想を。

 ダニーのまゆたん、オトナのオトコでカッコよかったです。
 ちょっと顔が痩せすぎて枯れて見えすぎちゃう嫌いがあるのが心配ですが、スーツが似合うし気障な感じも似合うし、楽しそうでよかったです。
 フィナーレのダンスも素敵でした。
 テスの蘭ちゃんは、わりと声や歌がねねちゃんテスそっくりに聞こえて、ちょっとアレッと思ってしまいました。
 でも役としてはもう少し若いというかまっすぐすぎる感じのテスになっているように私には見えて、それはダイアナ(桜一花)が言うところの「カマトトエコ女」ギリギリなんだけれど、最後にサインをもらえた離婚届を破いてダニーに抱きついちゃうところが自然に見えて、よかったかなと思います。
 とはいえ私はマイ初日に高校時代からの親友ふたりと観劇して、ふたりとも「でも結局ダニーは犯罪者なのであり、だから手を切るべきであり、とりあえず離婚はしてそれでも好きならつきあうだけにしておいた方がいいだろう、このラストは納得いかん」と、乙女心ナッシングのフェミニズム&リベラル発言をしていて笑いました。もちろん私もそう思う。だからこのお話が抜群だと言いがたいわけで、でもまあそれはそれとして宝塚ロマンスとしてはこれでアリなんだろうからさ、というハナシだということです(^^;)。

 ラスティー・ライアン(北翔海莉。ところでこれは原作のせいだがラスティーとライアンとライナスという混同しやすい名前を出すのは創作としては下の下だと私は思いますよ)は専科のみっちゃん。
 ジョンソン先生のアドリブといい、縦横無尽の活躍で、いい風になっているのではないでしょうか。次回の月組への投入といい、番手ごまかしの便利使いに落ちないことを切に願いますよ劇団さん…
 ベネディクトはだいもん、すごくよかった! やはりこの時期にこういう役をかっちりできるということは大事です!!
 ベニーのベネディクトはこれからすると生真面目でいい人っぽく見えてしまいそうだったかもしれません。でもだいもんのベネディクトはちゃんと悪かった。テスに対しても高圧的だったり愛情が押し付けがましかったりする点がちゃんと表現されていたし、過去や自分の思いを語るナンバー「夢を売る男」が泣きや同情を誘う形にならず、気持ちはわかるがしかし悪いよそれはダメだろう、と思わせるのが素晴らしい。
 これが成立しているからこそ、テスがベネディクトで泣くダニーを選ぶラストが納得しやすくなるんだもんね、大健闘でした。
 歌えて踊れるのも強いし、フィナーレの歌手もちゃんと空気を変えて、でも純情バージョンのベネディクトにもちゃんと見えて、胸打ちましたよ。
 同期のみりおが組替えして来るのはいろいろアレですが、踏ん張り時だよね、がんばれ!

 大劇場前半では一部休演があったというみつるのイエン(華形ひかる)はキュートでチームのマスコット役をきちんと務めていました。しかしエトワールはアレだと思うよ、いくら番手ごまかしったってさ…
 バシャー(春風弥里)のみーちゃんはこれですっかりブレイクか!? 思えば『サンテグ』でチョイ役なのにインパクトと色気を見せたのが劇団の扱いを変えたのかもしれません、とにかく踊れるしね! 前髪、スリーピースのスーツ、長い脚、生着替え、腰つき、キザり方…素晴らしすぎる。どんどん使ってもらっていいポジション得てほしいわあ。

 フランク(瀬戸かずや)のあきらは、私はあきらが好きでともみんは実はそんなに…なんですが、「あれっ、やっぱりともみんってただ濃いだけじゃなくて(オイ)ちゃんとしてたんだな!」と思うくらい、期待していたよりは精彩がなく見えてしまい、がんばり時だぞ!と念じてしまいました。
 まよちゃんのリビングストン(鳳真由)も、みやちゃんの歌の方が歌詞が聞こえたな…と思ってしまった。でもなんかすごく役には合っていました(^^;)。
 キキちゃんは顔が可愛いのに声が意外に男っぽいですよね。ライナス(芹香斗亜)は当時のまっかぜーより当然踊れていて、11人の大ラスに大型新人出ますよ!って感じがどんぴしゃでよかったです。
 モロイ兄弟(水美舞斗、柚香光)も輝きを出してくるようになっていい感じでした。持ち味がほぼ逆のふたりがいいところを盗み合っている感じもするし、期待高まるわあ。

 イチカはとみにジュンベさん以来の完全別格娘役になってきましたねー、フィナーレもみんなとお揃いの衣装じゃなかったしね。そもそもはれみちゃんのために作られた役だけれど、最後の小気味のいい去り方といい、素晴らしかったです。
 ジュリアの休演でポーラ(華雅りりか)はりりか、コケティッシュでよかったです。繰り上がったヤング・テスの春妃うららちゃんも可愛かった。スリー・ジュエルズではユキちゃんばっかり観ていました。

 下級生にまでたくさん役がある、ミュージカルらしい、いい作品ですね。そういうところは素直に評価したいな、と改めて思いました。


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