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「江戸繁昌記 ニ篇」 72 墨水桜花4

(駿府城公園内のクスノキの巨木)

駿府公園内の南端にあったクスノキの巨木である。もともとあったものではなくて、戦後、公園内に移植されたものと思うが、それからでも50~60年経っている。クスノキなら50年で幹回りが少なくとも50センチは太くなっているだろう。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

児女欣喜戯嬉飢えを忘る。紛々落花と齊(ひとし)く飛び、躚々蝴蝶と共に一様。また見る、宮女の伴を結ぶを。翠袖、霞を披(かぶ)りし、宮髱(シイタケタボ)、雲を簇す
※ 欣喜(きんき)- 非常に喜ぶこと。
※ 戯嬉(ぎき)- うれしそうに遊び戯れること。嬉戯。
※ 紛々(ふんぷん)- 入りまじって乱れるさま。
※ 躚々(せんせん)- ひらひら舞うさま。
※ 一様(いちよう)- 全部同じようすであること。また、そのさま。同様。
※ 翠袖(すいしゅう)- 青緑色の衣袖。
※ 簇す(そうす)- 群がり集まる。集める。


靚粧麗服を競い、を闘わし、各自に窃(ひそ)かに、我れが中老尾上(オノエ)に比す。(某侯女官、隠本鏡山に見ゆ)花を観るの間、肚裏暗に、三外様の男児に撞着せんことを祈る。(優人団十郎、三外と号す)
※ 靚粧(せいしょう)- 化粧して、すっきりと装うさま。
※ 麗服(れいふく)- 美しい衣服を着ること。
※ 冶(や)- なまめかしいさま。
※ 妍(けん)- 美しさ。
※ 中老尾上(ちゅうろうおのえ)- 歌舞伎の演目「鏡山旧錦絵」で、町家上りの中老尾上は、お局岩藤の策略に陥ち、無実の罪を着せられた上、草履で打擲という屈辱を受け自害した。
※ 肚裏(とり)- 腹の中。心のうち。
※ 撞着(どうちゃく)- つきあたること。ぶつかること。
※ 優人(ゆうじん)- 俳優。役者。


また大石義雄に擬する藩士輩(やから)有り。歩々踉蹌、醉いを声妓の肩に扶(たす)けられ、楚声(オクニゴエ)にして歌いて曰う、

   櫻兮櫻兮見詠歌    さくら、さくらと詠歌(うた)われて、
   亂兮亂髪亂如麻    乱るゝ乱髪、乱れて麻の如し。

※ 歩々(ほほ)- 一足一足。一歩一歩。
※ 踉蹌(ろうそう)- ふらふらとよろめくさま。 蹌踉。
※ 声妓(せいぎ)- 歌をうたって酒宴の席をとりもつ女性。うたいめ。
※ 楚声(そせい)-「おくにごえ」とルビあり。地方の藩士だから、お国訛りの入った声の意味であろう。


読書:「継続捜査ゼミ」 今野敏著
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