平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「江戸繁昌記 ニ篇」 64 箆頭舗22
花が終れば種子がタンポポのような綿毛を持ち、風で拡散して行く。
「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。
解すべからざるを以って、解すべしと為さば、天下何物か、解すべからざる無らん。それ俳句は連歌より流れて、連歌はもと詩の連句に出づ。痔を舐(なめ)るは車を得るの事。愈々(いよいよ)下りて得る、愈々多し。
※ 解すべからざる - 解すことが出来ない。理解できない。「理解できないものを、理解したとなせば、天下に理解できないものは無くなる」
※ 痔を舐(なめ)るは車を得るの事 -「舐痔得車(しじとくしゃ)」自分を卑しめることまでして大きな利益を手に入れること。使者として秦に行き、大きな車を与えられて帰国したのを見て、痔を患っている秦王の患部を舐めて車をもらってのだろうと揶揄したという故事から。
宗匠の門戸、学士に比べれば、高きこと数等。予、毎(つね)に貧書生の為に浩(ひろ)く言いて嘆ず。聞く、前者には愚輩相議し、芭蕉の為に祠を建てんと、これを官に䟽す。官、令して曰う、民に功徳無き者、何を用いて奉祀せん。愚輩、口を閉じて退くと。
※ 䟽(疏)す(しょす)- 事柄の筋を分けていちいち説明する。
※ 奉祀(ほうし)- 神仏・祖霊などをまつること。
然れども、その盛んに世に行わるゝや、士(侍)もまたこれを為し、大夫(有位高官の者)、またこれを為して、或は聞く、矦(貴人)にしてまた学ぶ有ると。豈に哀しからずや。解くべからざるの言を吐きて、解くべからざるの教えを受く。圏點○(ワゴテン)を得るが如き、また鬼の首を得るの思いを為す。要に他に愚弄せらるゝのみ。然もなお、古俳人の句の如きは、較々(こうこう)、今の詩人の解すべからざるに愈(まさ)れり。
※ 圏點○(けんてんまる)- 輪五点(わごてん)。俳諧で、宗匠の批点の一。普通の五点よりすぐれていることを表す丸印。
※ 愚弄(ぐろう)- 人をばかにしてからかうこと。
※ 較々(こうこう)- 明らかに。
解すべからざるの人多くは茶事を好む。これまた畢竟、解すべからざるもの。客曰う、茶は何の時に始まる、叟、能く識るや否や。曰う、奈何(いか)んぞ、記せざらん。談、港に入る。
※ 茶事(ちゃじ)- 茶の湯において懐石、濃茶、薄茶をもてなす正式な茶会のことです。
※ 談、港に入る - 話が少し途切れたことを表わす。途切れた理由は、以下にある。
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