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事実証談 巻之三 異霊部19 疱瘡神祭るを禁ず、石臼の目切の不思議

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午後、自動車免許証の更新に行く。次回は5年後、あと何度、更新できるのだろう。

「事実証談 巻之三 異霊部」の解読を続ける。

第45話
豊田郡森本村、伝八郎という者は、並々ならぬ者にや有りけむ。ある時、小児疱瘡煩うにより、妻疱瘡神を祭らんと言えども許さずて言いける。この国にてこそ、疱瘡神など言いて祭もすれ、西国順礼に行きし者の物語を聞くに、紀伊国にては百日癩病とか言いて、百日の間は山奥に出し置くよし。その時のみか、生涯人の面に疵付け醜くからしむる病なるを、などかはさる疫病神を祭るべきとて、萬ず禁じ許さゞる事を、

妻はたえず思いて、密かに物蔭にて祭けるを、主見付け大いに怒りて言いけるは、我言に背くやと言うまゝに、疱瘡神の棚を打ち砕き捨てたりけるを、妻いとゞ心にかけて、大方このわたりにては、病者の死にたりし時にのみこそしかすれ。かく神をも恐れざれば、如何なることかあらんと案じつるを、小児皆順痘にて、痘瘡(もがさ)の数もなく、遊びつゝ安らかに(療養に)つとめたりと。則ち伝八郎嫡男、太郎左衛門の物語なり。


第46話
山名郡松袋井村、村松八郎左衛門、ある時、川狩りすとて、袋井駅の南なる川を網うちつゝ、川上へ上りけるに、はからず深みに入れりけるを、汀(みぎわ)に上らむと、木に取付いて上りたるに、その比、袋井駅にて、疫病煩う者多かれば、立祓とて、修験して疫病神を送り出す事あり。

かの立祓の幣帛の川辺に捨てたるを、有るとも知らで上りしに、それに触れると即ち、頭に釘さす如く覚ゆる故、さては立祓の幣帛にこそと、いとゆゝしくみそぎして帰りつるに、疫病神こそつきたりけめ、大熱の病起り、甚くなやみて百日ばかりにて全快せしは、実に怪しかりきと、則ち、かの人ぞ物語し。
※ 幣帛(へいはく)- 神前に供える物の総称。みてぐら。


第47話
安永年中の事とかや。榛原郡住吉村、長左衛門家内、残らず畑に行くに、雨戸をもさしたり。この隣りは伝左衛門という者の家なるが、これも同じく畑に行きて、年老いたる老婆のみあるに、長左衛門の家にて石臼の目切音しけり。伝左衛門の石臼も目尽きたりければ、切りしめんと、家族の帰るを待ちけるに、午の時過ぐる比、両家の人々帰りきつ。さて老母、長右衛門にしかじかのよし言いけるに、今日我ら家、こぞりて留主なれば、かつてさる事なしとぞ答えける。

さて、後、長右衛門の妻、を挽(ひ)くに、常よりことに細末なりけるを怪しみ見れば、いつしか石臼の目切りて有りけり。いよ/\怪しくつら/\見るに、切目ごとに梵字の如く見ゆれども、文字に似て文字とも定め難しと言えり。それより萬ず物挽けども、その目尽きる事なく、今は三十年にあま連ども、更に切る事なしというは、いと怪しくなむ。
※ 炒(こがし)- 米・麦などを炒って、粉にひいたもの。湯にとかして飲んだり、砂糖を加えて練って食べたりする。香煎。
※ 細末(さいまつ)- 細かい粉。粉末。


第48話
佐野郡岡津村、松永平太夫が許にても、百年ばかり以前に、同じさまなる事有りしが、その石臼、今に持ち伝えて、挽くにその目切事なく、尽きる事なきよし。こは今の主の、高祖母の若きほどの事なりしと、則ちその家に言い伝えたり。
※ 高祖母(こうそぼ)- 祖父母の祖母。

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