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事実証談 巻之三 異霊部16 疫病神の告げ

(菊川市 大頭龍神社 /2014.4.14撮影)

午後、「古文書に親しむ」講座に出席した。今期最初の講座である。今年は13人の出席で、昨年メンバーより、高齢で一人減っただけの顔見知りのメンバーである。先生に断わって、全員に「再び」の本をもらって頂いた。

「事実証談 巻之三 異霊部」の解読を続ける。

第33話
城東郡加茂村に、清九郎という者の家に、文化七年と言いし年の九月の比より、薬売人宿りたるに、疫病を煩い付きしかど、為方(せんかた)なく宿さしめ置きたるに、十一月の初めよりかつがつ快く、十日比には労(つかれ)のみにて、疫病の気、退きたれば、主の衣服を重ね着せて、寒さをしのがせ、清九郎付き添いて、凡そ二里ばかりなる道を、かろうじて掛川駅に至れる比は、日も西に傾きて風吹まさりて、寒かりければ、病人に着せたりし衣服を、重ね着て帰りし故にや、
※ かつがつ(且つ且つ)- 不十分ながら成り立つさま。どうにか。ともかく。

清九郎をはじめ、家内四人疫病を煩いしのみならず、本家勘七が許にても、家内、親類、西方村の縁者、奥野村の縁者までも、一同に煩いし故、そのわたりなる者、恐懼(おじおそ)れて近寄る者、かつてなかりしを、同村なる医師ばかり、せん方なく病者に近寄り、とかくせしに、これもその気をうけて、煩い付きしかば、いよ/\人々恐懼れたりしに、

翌年の正月八日比にて有りし由、疫病神や着きたりけむ。勘七女房、譫言の如く言いけるは、我ら四人新野原へ行かむと思い立ちしが、一人は老人なれば馬にても行くべきかと言いけるを、人々怪しみ狐にても着きしにやと窺えども、然にもあらず。それより、かつがつ皆快方せしに、実は疫病神の告げにや有りけん。
※ 譫言(せんげん)- うわごと。病気で熱の高いときなどに無意識のうちに口走る言葉。

同村大頭龍権現(こは上に云へる疫病除けの神なり)の神主、白松丹後守の家に、先年仕えし女、新野原の者なるが、正月廿日比、神主の許に来て言うよう。この五、六日比より、近隣四軒にて俄かに疫病煩うにより、大頭龍権現の御社参詣に参りつと云うに、さては過ぎし日、勘七妻の譫語の如く言いしことは、正しく疫病神の告げにて有りしにこそと、人々疫病神の有る事を語りて恐懼(きょうく)せりと、則ち丹後守の物語なり。


第34話
豊田郡中泉村に、秋鹿立也(あいかりゅうや)という医師有りしが、寛政年中の比、磐田郡見付駅にて疫病煩う者有る時、治療に行きしに、譫語(うわごと)の如く、我らは二宮村に立ち越えむと云いしが、怪しとも思わず帰りしに、それより四、五日ばかり過ぎし比、俄かに二宮村にて疫病煩うにより、また秋鹿立也行き見るに、同症にて有りつと、立也の物語なり。

第35話
駿河国三軒屋にても疫病煩う者、兵太夫新田へ立ち越さんというに、果してかの方にて煩いたりと、その村の近きわたりなる僧の物語なり。
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