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とうとう拝まれてしまった

(民宿夕日はこんなところにあった。
真ん中の白い建物が民宿夕日)

この日、民宿叶崎に宿泊。お遍路を始めてから25日目にして初めて回線が繋がらない事態が発生。それだけ、日本の最果てまで来ているのだと思った。書き込みは明日まとめて行うこととして、記録は別途認めておく。(アップは翌日宿毛に出て行ったが、日付は4月29日とする)

この頃思うのだが、白衣、菅笠、金剛杖、リュックの歩き遍路スタイルは、四国以外で見かけたら異様な姿と映るに違いないけれども、四国では風景に溶け込んでしまっている。カメラを向けられることも何度かあり、四万十大橋から屋形船を見ていたら、屋形船からも何人もこちらを見ている。カメラを向けられてもいる。観光バスからも、視線を感じることがある。多分、ガイドが歩き遍路のことを説明しているのだろう。あのように、四国をぐるりと1200km、歩いて88ヶ所の札所を巡っている。それ、今右手にも一人いますなどと。

足摺岬を回るとお遍路の姿はぐっと減る。札所は無いから遠回りする必要は無いのだけれども、今夜の宿泊の叶崎より7km進んだ先に月山神社という、弘法大師ゆかりの神社がある。昔から、金剛福寺を打ち終えた遍路は、打ち戻って延光寺を打ってから築(月)山詣りをするか、月山詣りを終えて延光寺を打つかのどちらかだったという。延光寺から次の観自在寺に至る途中に、一本松町札掛という地名が残っているが、月山神社に詣でられなかった遍路はそこから遠く月山神社を遥拝し、この地に札を掛け先へ進んだ。そんな名残である。その月山神社に明日詣でる。(江戸時代はお寺だったものが、明治の神仏分離で神社に衣替えした)


(ジョン万次郎の復元された生家)

中浜の集落で、ジョン万次郎の復元された生家を見学して、先へ行こうと歩き始めて、杖を忘れたことに気づき取りに戻った。その間に追い越されたようで、遍路道に戻ると前方を歩き遍路が一人行く。遍路道を迷っているのに追いついて、しばらく一緒に歩くことになった。若い男性の足元が賑やかで、10日に歩き始めて15日でエアーシューズのエアーがすべて抜けて、歩くたびのぐしゃぐしゃと、ずうっと砂利道状態だと笑う。砂利道を歩くような音を立てて歩いている。とりあえず、「ジャリ靴」さんと呼ぶことにした。幾つに見えますと聞くから、25歳くらいかと答えると、今年大学を終わったばかりで、お遍路に出てきたという。就職浪人かときけば、就職活動はしなかったから就職浪人とも言えないと口ごもる。野宿をしながら一人で歩いていると、自然にいろんなことを考えている。妄想のようなこともたびたび浮かび上がってくる。「ジャリ靴」さんは、話せないような迷いごとを抱えているのだろうか。

遍路道から楽な車道へコースを変えて、「ジャリ靴」さんと色々なことを話した。野宿を続けていると、野宿臭のような雰囲気が付いてきて、自分でも近寄りがたい気がする人もいる。自分はそうはなりたくないので、風呂と洗濯はこまめにするように、受け入れてくれる温泉などを見つけて、こまめに入るようにしているという。「ジャリ靴」さんを風体からすぐに野宿とは感じなかったのはそのためだったようだ。

「ジャリ靴」さんは愛知県の三河出身だという。なまりが出ないねというと、出さないようにしているからと答える。金剛福寺への途中でおばあさんに接待を受けて、帰りにも寄りなさいと言われているからと、土佐清水から以布利へ別れて行った。悩み多き青年の未来に幸あれと願う。

あしずり港近くを歩いている時、突然自転車を引いたおばあさんが自分に向けて手を合わせ、「南無大師遍照金剛、南無大師遍照金剛、南無大師遍照金剛」と拝まれてしまった。話には聞くが、遍路をしていて初めての経験で、どうして良いか解らず、こちらも両手に地図帳を挟んで、手を合わせるだけであった。どうすれば良かったのか、今もって解らない。

長い海沿いの道で、逆打ちの若い夫婦遍路に逢った。両手にストックを持ったノルディックスタイルのお遍路である。挨拶して月山神社から先の遍路道の様子を聞いた。地区の遍路道保存会でしっかり整備されて、歩きやすい道だったと話す。今朝は民宿叶崎に宿泊していて、今日は足摺パシフィックホテルに泊まると話す。その情報で、雨は心配だが、予定通りに進もうと思った。

道の駅めじかの里でちらりと見かけ先へ進んだお遍路さんが下川口のバス停に座っていた。どうかしたかと聞くと、今日はここまで歩いて終わりにするのでバスを待っているという。近くの人が日帰りで区切って歩いているのであろう。そんな歩き遍路もある。

それで、今日出会ったお遍路さんはすべてである。27km歩いて、宿には2時半に着いた。女将さんは明日5時に出かける用事が出来たので、朝飯はどうするという。雨も気になるので早く出るから、作っておいてくれれば食べ次第出かけたいと話す。雨が小降りのうちに宿毛の町へ出てしまいたい。月山神社経由で、宿毛のホテルマツヤまで約30kmである。
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