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厳しい雨降りの修行であった

(早朝、みなみ旅館前を出発)

予報ではこんなに雨が降るつもりではなかった。みなみ旅館を出るときには、すでに合羽など雨仕度をしっかりとした。出掛けにおにぎり2個とタオルの接待を頂き、有難く出発した。この雨でタオルのお接待はありがたい。お遍路の気持をよく考えた旅館の姿勢には頭が下がり、また来たくなる。

全身びしょぬれになりながら、32kmの歩きをこなして、午後4時頃に、今夜の宿、室戸の最御崎寺へあと15.6km残す、民宿徳増へ着いた。その間、雨はほとんど止む間を見せず、降り続いた。海岸に沿った国道55号線にはスピードを上げて車ががんがん通る。お遍路さんの姿を見ると、ほとんどの車が中央に除けたり、スピードを落としたりしてくれるが、中に水溜りにタイヤを突っ込み、ざんぶと水を頭から掛けて過ぎる車もある。このやろう!と腹を立てかけて、お大師さんもここで水行とは人が悪いと思い直す。

最後に佐喜浜で前回も入った、みかど食堂に入った。びしょぬれの合羽のまま店先に立つと、銀行へ出かけ掛けようとしていた女将さんが戻って来て、濡れるのをかまわずに、リュックや腰掛けるところを指示してくれる。たまごうどんを頼む。

地元の男性と、仏海庵の国道からの標石が見えにくく、見逃してくるお遍路さんが良くある。目立つ看板を立てるように頼んであるのだが。国道から入ってくる道があるのですね、自分は旧道を来たから、見逃しようが無かった。3年前にも通ったとき、この店に入ったというと、覚えていなくてごめんなさい。お遍路の立ち寄る食堂として、彼女も遍路道途上でお遍路さんを見守っている女性の一人である。うどんを食べ終わった頃、銀行が3時で閉まるからと留守番を客に頼んで出かけた。

海に沿った大雨の国道を一人で黙々と歩いていて、うれしいことが二つあった。目の前に車を止めて、傘を差して出て来て、これから室戸まで行くのですが、乗っていきませんかと声を掛けてくれたおじさんがいた。このびしょぬれをそのまま乗せようという好意には頭が下がる。自分が逆の立場だったら絶対やらないだろう。けれども、歩くと決めているので、申し訳ありませんと、丁重に断った。

もう一つは後ろから来た車が自分の脇に止まり、お遍路さん、ご苦労様です。これお接待、ジュースでも飲んでください。200円の現金と飴玉を頂いた。現金を頂くのは初回も含めて始めてのことであった。さっそく宿に着いて乾燥機使用料に使わせていただいた。

「非遍路」さんのことを少し書く。昨日のみなみ旅館で同宿で、今夜の徳増でも同宿であった。自分はお遍路では無いといきなりの発言があった。聞いてみれば、自分の父親は10回もお遍路をしている。昨年車でお遍路のコースを走り、今年はそのコースを歩いている。しかし、お寺には寄らないからお遍路ではない。だから、旅館などでお接待を頂くのは筋違いだと思う。もっとも有難く頂いているが。

お父さんがお遍路を10回もしたなら、あなたもお遍路にすればよかったのに。何も宗教としてお遍路をしている人ばかりではない。般若心経は上げるが、自分も信者になったわけではない。結局、「非遍路」さんは来年はお遍路をしますと断言した。

お遍路を10回もした父親のことをもっとよく知りたくて、同じコースを旅してみているのであろう。おそらく、父親のことは知りたいが、その宗教的な部分には反発を感じていたのではないだろうか。旅に出てみて、お遍路のコースを歩きながら、遍路ではないと言う、けったいさに気付いたのであろう。父親の生死は聞かなかったけれども、多分、父親を亡くして居るのだろうと想像した。「非遍路」さんとは明朝は別れて先へ行ってしまうので、名刺を渡した。
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