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「発心」出来たのか

(大根峠の遍路道)

お遍路7日目 5月13日(水)歩数44095歩-距離27.4km

夜半に雨が降り、霧がかかった朝が来た。天候は回復すると確信して龍山荘を出た。今日の予定は龍山荘-7,7km-平等寺-19.7km-薬王寺、のコースである。

平等寺の手前に標高200mの大根峠がある。峠道の左手に棚田が続き、林の中に入るが、そこもかつては棚田だったのだろう、石垣の痕跡が見える。その上に30~40年の杉が成長している。その峠道で猿を何回も見た。里へ降りていたずらするのだろう。一句作った

      猿候も 遍路に行くか 峠道

沢蟹がのんびりと道を渡るのを見て、

      春遍路 猿蟹そろい 見送るか


(もうもうと啼きからす牛)

峠を越えると、谷間に読経の声が聞こえてくるように思った。平等寺にはまだ遠いし、読経とは違うようだ。ほら貝が谷間に響いているのだろうか。やがて音源が分かった。谷間の入り口で放牧されている牛が一頭、必死で啼いているのであった。これほど必死に啼く牛をはじめて見た。あまりに一生懸命で、声をからしている。その牛の啼き声が谷に反響して、読経やほら貝に聞こえたのだった。

この後、トンネルをいくつか抜けて歩いたが、トンネル内に響くエンジン音まで読経に聞こえ始めた。今日で「発心の道場」としての阿波の国(徳島県)を終えるが、心境の変化が出てきたのだろうか。そんな訳はないか。

峠を下った集落でお接待を受けた。農家のおばさんにチオビタドリンクをいただいた。平等寺でそのドリンクをいただき、ビン、缶の籠に空きビンを捨てようとして、何本か同じビンが捨てられているのに気づいた。お天気はすっかり上がり、ドリンクに元気が出て、しばらくは金剛杖の鈴で調子を取りながら歩いた。

道が少し登りになったところで、後からお遍路さんと呼ばれた。遍路道はこっちだよ。わずかに車道から外れてショートカットしてまた車道に戻る道だが、途中に、月夜御水庵というお堂があった。地元の人はお遍路さんがこのお堂を見逃して行くのは耐えられないのであろう。通り過ぎようとするお遍路さんについつい声を掛けてしまう。

薬王寺に至る遍路道には国道55号線に沿って山中を行く道と、県道25号線に沿った海岸を行く道がある。師匠は海岸の道を行くと言っていた。どちらを取ろうか迷ったが、歩いた道は結局距離的に短い山中の道であった。後で薬王寺の門前町で師匠とすれ違って立ち話した。師匠は海岸の道は思ったより大変であったと話していた。

山中の道は国道55号線に沿ってひたすら歩いた。歩道のあるところもあるが、日陰を行きたくもあり、歩道とは反対側が日陰が多いこともあって、脇をスピードを上げて通り過ぎる車が怖いのを我慢して進んだ。遍路道になっている割には歩道の整備が遅れている。出来れば木陰の多い山側に一段高くして遍路道(歩道)を作ってほしい。お遍路が四国に落とす経済効果は計りようが無いが、相当なものだと思うから、県は国道のそういう負担金ならばぜひとも出すべきだと思った。

昼食は途中の星越茶屋でざるうどんを食べた。古びたドライブインの割には美味いうどんであった。平等寺の境内から予約した宿、弘陽荘には午後4時に着いた。明日は30km越えを目指そう。幸い足にまめも靴擦れも出来ていない。たぶんこの2週間で靴は履きつぶすことになるであろう。足への負担をみな靴が受けてくれているように思う。良いウォーキングシューズだ。
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