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ふすまの下張りの解読

(S氏から頂いた襖の下張り)

古文書の解読の勉強をしていると聞いて、S氏からふすまの下張りを頂いた。S氏は旧家である。家を新築した際に出て来た、ふすまの下張りに使われていた古文書を、はがして持ってきてくれたのである。切れ切れの古文書にどんなことが書かれ、価値あるものなのかどうか、興味津々である。さっそく一枚取り出して読み始めてみた。今日取り上げるのは、最も読みやすいほとんどが楷書の古文書である。

【解読】
(この前の部分は破れて失われている)
木村辰次郎北大組第十九区安治川通二丁目山本清之介両人御国量目ニ割直シ製作致候西洋形秤来ル十二月一日ヨリ売弘メ免許候條大蔵省検査極印ヲ証トシ従前ノ秤ト同様相用可申此旨布告候事
  明治六年十一月十五日  右大臣岩倉具視

第三百七十九号
本年四月第百四十号布告蚕種取締規則改正同三月大蔵省布達生糸売買鑑札渡當ノ箋ニ付犯則之者見出訴出候者ヘハ事実取糺之上取上品稀代ノ分合ヲ以給與候筈ノ処取上品無之節ハ科料金之十分一給與可致且又壬申十一月第三百三十一号布告蚕種原紙並本年一月第三十二号生糸製造ノ儀ニ付テモ以来右ニ準シ取上品払代ノ十分一又取上品無之節ハ科料金ノ十分一給與候此旨布告候事
  明治六年十一月十五日  右大臣岩倉具視


【解釈】
この二つの文書は明治新政府の通達であろうか。一つは洋秤の販売許可の通達、もう一つは生糸売買の鑑札制度と告訴人に報奨を与える通達である。いずれも通達者として岩倉具視の名前が出てくる。印刷のない時代、人手をかけて全国に分ける通達を書き写したものであろうか。明治維新がなればすぐに待っているのが、こまごまとした行政である。

(途中から)木村辰次郎、北大組第十九区安治川通二丁目、山本清之介、両人御國の量目に割直し製作致し候、西洋型秤(はかり)、来る十二月一日より売り弘め免許し候条、大蔵省検査の極印(刻印)を証とし、従前の秤と同様に相用いるべく申し、この旨布告し候こと。
  明治六年十一月十五日  右大臣岩倉具視


第三百七十九号
本年四月、第百四十号布告、蚕種取締規則改正、同三月大蔵省布達、生糸売買鑑札渡当の箋に付、犯則(反則)の者を見出し訴え出し候者へは、事実を取り糺しの上、取上品(没収品)を稀代の分合を以って給與し候筈のところ、取上品これなき節は科料金の十分の一の給與を致すべく、かつまた壬申(明治五年)十一月、第三百三十一号布告、蚕種原紙、並びに本年一月第三十二号、生糸製造ノ儀、に付ても、以来右に準じ取上品払代の十分の一、また取上品これなき節は科料金の十分の一給與し候。この旨布告し候事。
  明治六年十一月十五日  右大臣岩倉具視

※「稀代の分合」は、「その時に応じた分配」ほどの意味か。
※「科料」は、軽微な犯罪に科する財産刑で、刑の序列としては罰金より軽い。
※「原紙」は、コウゾの皮を原料にしてすいた、堅くて厚い紙。蚕卵紙(さんらんし)に用いる。

ふすまの下張りはまだたくさんあるので、少しずつ読んでみようと思う。
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