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小説「日本国債」を読む

(幸田真音著「日本国債 上・下」)

幸田真音の講演会を聴いてから、その小説にはまっている。土曜日に図書館から借りてきて、「日本国債」上下2冊を読了した。彼女の本はこれで6冊目になる。

「日本国債」、経済書のようなネーミングだが、推理小説仕立ての小説である。題材はそのものずばり、日本国債である。よく耳にしながら、一般庶民には何とも理解し難い材料である。日本国債は言うなれば日本国が背負っている莫大な借金である。借金だから返済しなければならない。返済するお金がなければ、また国債を発行して借金を繰り返すしかない。多重債務者のように借入を繰り返す。しかし貸してくれる先がある限り、日本国が破綻することはない。毎月のように発行される決して良い条件とはいえない国債をいったい誰が引き受けているのか。

この辺りから小説が始まる。この小説の中で活躍する人たちは、莫大な金額の国債を引受、その売買を扱いながら、ほとんど表に出ることがない、金融機関の日本国債のトレーダーたちである。決して高利が稼げるわけではない日本国債が、引受不足、つまり「未達」を起すことなく消化されていくのは、引受ける金融機関がシンジケート団を作って、粛々と従順にノルマを果たしているからである。

そんな矛盾に満ちた日本国債発行の危うさに危機感を懐いたトレーダーたちが、入札を減らして「未達」を引き起こし、警鐘を鳴らすことを考えた。しかし、考えても出来る訳がない。ところがそんな未達がある日起こってしまった。見る間に、債券、株、円が暴落して、日本売りが世界を駆け巡った。いったい誰が何の意図で引き起こしたのか。

もちろん実際に起こったことではないのであるが、ほんの少し前には起こる可能性のあったことである。その後、個人向け国債なども出来たりして、国債の市場もずいぶん改善されてきたようである。もともとそんな場所に近いところにいたとはいえ、著者の取材力はすごいものがある。お陰で判りにくい日本国債の仕組みが、いくらか判ったような気がする。

幸田真音、しばらくはこの作家にはまって読み漁ることになると思う。
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