2018年10月4日(木) 7:00pm コンサート・ホール、オペラシティ、初台
ブラームス、ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.77 23-9+8
ヴァイオリン、チョン・キョンファ
(encore)
バッハ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番より アダージョ 4
Int
サン=サーンス 交響曲第3番ハ短調op.78 オルガン付き 10+10、8+7
チョン・ミョンフン 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
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みなさんこの年齢になったとはいえ、弟さんの伴奏棒で弾くお姉さんソロ、いいもんですね。一時代を作り上げたプレイヤーですし。個別の思い出はなくてもなんだか神妙になってくる。音楽が引き寄せる力かな。
入念な入りの序奏から始まったブラコン。提示部も練る練る。基盤、インフラががっちりと出来上がる。そしてキョンファのヴァイオリン、厳しい音楽スタイルは安定より前進を目指す。美音かどうか、スキルの劣化はどうか。そんな議論には組しない。これ、ほんと、そんなことで、いいとかわるいとか、聴くレベルがそんなもんか、彼女の中でそう思っているのかどうかは神のみぞ知るだけれども百戦錬磨のプレイヤーは達観した弾きだ。
どのエレメントも全く揺れることのないプレイ、ビシッと決まった緊張感あふれる鉄演。演奏スタイルとして方向性が明確であって、その意思を強く感じる。ゆっくり目な伴奏の中、やや乾いた音が作品を作り上げていく。響きを締めて豊穣な音楽を作り上げる。軽い弾きなんて一切なかったなと、聴き手が問われる演奏で、精根尽きました。心地よい疲れではあります。本格的なシンフォニック伴奏のもとキョンファ会心のプレイでした。お見事。
サン=サーンスの3番はミョンフンお得意の物件。これだけ巨大なスケールで聴かせてくれる演奏もめったにない。マウントフジかエヴェレストか、そびえ立つような演奏で、時として空虚な作品が跡形もなく最高峰の頂と化す。演奏が作品を越えた瞬間ですね。
指揮者とオケが一音ずつ噛み締めながらの演奏を、聴き手側が同じように噛み締めて聴く、その聴かせ方をミョンフンはよく知っているのだろう。マジックですな。
様相を徹底的に振幅大にして、出来る限りの深彫り、立体的な彫琢を作り上げる。まるで初めて聴く様な感覚に襲われる。フレッシュで大きなものを観た。感動の嵐です。
両曲ともに知性と感情が渦巻く様な、手ごたえ満載の演奏会でした。
ありがとうございました。
おわり