河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2296- ブルックナー8番、小泉和裕、名フィル、2017.3.20

2017-03-20 21:16:16 | コンサート

2017年3月20日(月) 3:00pm コンサートホール、オペラシティ

ブルックナー 交響曲第8番ハ短調(ハース版) 15′14′25′25′

小泉和裕 指揮 名古屋フィルハーモニー交響楽団

(duration)
第1楽章 15′
提示部 1s-2′ 2s-2′ 3s-2′
展開部 5′
再現部 1s-1′ 2s-1′ 3s-1′
コーダ 1′

第2楽章 14′
スケルツォ 5′
トリオ 4′
スケルツォ 5′

第3楽章 25′
A1-5′ B1-4′ A2-3′ B2-3′ A3-7′ コーダ3′

第4楽章 24′
提示部 1s-2′ 2s-2′ 3s-2′
展開部 8′
再現部 1s-3′ 2s-2′ 3s-2′
コーダ 3′


不動のインテンポ、パッセージ節目での加減速も無い。8番の造形美が見事に浮き上がる。ブルックナー最高峰のパーフェクトバランス。
第1楽章の提示部3主題ほぼ等速、主題の移り変わりはパースペクティヴの効いたダイナミズムや細やかに変化する美しいフレージングといった音楽の表情が移りゆくものと。構造に光をあてた小泉棒はものの見事にきまりました。
この頭3主題から終楽章再現部の3主題まで徹底して平衡感覚に優れたブルックナー表現で造形の美しさは時間軸がバランスしてこそというものだと小泉さんが棒で言っている。全体俯瞰を常に念頭に置きながらのタクト、お見事の一言に尽きる。
それから、8番で多用される経過句。これが小泉には良い方向に作用している。1月に聴いた5番ではうまくいかなかった。
5番はパウゼがポイントになると思うが、今日の8番では経過句の扱いがポイント。その経過句の流れは主題推移のブリッジになっているというよりも主張がより濃いもの。補助的な役割としてではなく造形ウエイトが高まることになり、聴いた耳でも流れより形がきまっている。素材が有れば有ったでウエイトを高めつつ使い尽くす。逆説的な話であるが、この意気込みが小泉の8番を形作っている。音がうねりながら進んでいくように聴こえてくるのはこのためですね。スバラシイ。

第1楽章のソナタは3主題が充実していて提示部、再現部が濃くて、展開部は案外短いもの。あっというまに終わる。第4楽章も同様ですね。
オーケストラは冒頭のダークな第1主題からテンションが高く、緊張感に満ちた演奏。張りのある弦のしなやかな歌がやや明るくウェットに響く、美しいものです。ウィンドも充実していて一本のソロの美しさと滔々と流れるアンサンブルのハーモニー。ブラスはホルンをはじめとしてブルックナーサウンドを味わえた。崩れないフォルムに合わせ常に平衡感覚を保ったインストゥルメントのサウンドはお見事なもので、まぁ、小泉棒も作用しているのかもしれない。

第2楽章のスケルツォはトリオをはさんだ双方ともに後半部分が充実。ブラスセクションのアタックも自然で良い流れで推進力あります。
トリオのアタックはちょっと鉄板に壁ドンなみにきついものでしたがすぐに戻る。小泉棒はしっかりと3拍子押さえている。インテンポの迫力がここでも光る。ちょっとファジー目な叩きのティンパニーもいい。

第3楽章は充実した弦の歌に力感があり、細やかな味付けも含めよくコントロールされている。指揮者の意を汲くんだ演奏となっています。この楽章はABABAcodaとなっており、聴きようによってはこれまたあっというまに終わってしまう。オケメン全員、渾身の演奏だったと思います。AB主題が同格の扱いでドッシリ感でます。3回目のロングなA、ピアノから頂点のフォルテまで美ニュアンスで極めた白眉の演奏となりました。そのあとの天国的なコーダはうっそうとした森を思わせる濃厚なホルンセクション。この深い緑があればこそ終楽章の第1主題のファンファーレが最も効果的に響くという具合ですね。

終楽章ソナタは第1楽章と同じモードながら、提示部より再現部のほうがより長くて味わい深くなっている。腰の据わった演奏を実感させるもの。また、第1楽章よりも第1,3主題でのブラスの活躍が派手になっている。小泉棒はオケのテンポを抑えるようなところもあり懸命にインテンポを守り通す。ブラスによる圧倒的なオルガンハーモニーが響き渡りますが、克明な振りでときに押さえ込むようなところもあり、ぶれないワントーンロングハーモニーが強烈にきまっていった。
再現部第3主題に第1楽章の第1主題が炸裂して重なる。圧倒的なブラスの咆哮。オーケストラの明るめのサウンドが、きっちりザッツ、できまった。この咆哮はこの楽章のコーダ予兆というよりは、曲のフィナーレの予兆。
テンポを全く動かすことなく重層にして奇跡的な譜面を克明に表現。折り重なる全主題が現れ下降を繰り返しながら垂直にフィニッシュ。フラブラもフラ拍も無い、静寂が訪れた。

結果、造形は見事に出来上がりました。美しい構造物が出来上がりました。雨風きても、まぁ、しばらくは倒れそうもない。美しいフォルムと演奏。スバラシイ。
ブルックナー8番、味わい尽くしました。
ありがとうございました。
おわり

名古屋フィルハーモニー交響楽団 創立50周年記念 東京特別公演