河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2286- ラインの黄金、ハンペ、沼尻、京都市響、2017.3.4

2017-03-04 23:08:11 | オペラ

2017年3月4日(土) 2:00-4:45pm びわ湖ホール

びわ湖ホール プレゼンツ
ワーグナー 作曲
ミヒャエル・ハンペ プロダクション
ラインの黄金

キャスト(in order of appearance, also voices’ appearance)
1-1.ヴォークリンデ、小川里美(S)
1-2.ヴェルグンデ、小野和歌子(Ms)
1-3.フロスヒルデ、梅津貴子(Ms)
2.アルベリヒ、カルステン・メーヴェス(Br)

3-1.フリッカ、小山由美(Ms)
3-2.ヴォータン、ロッド・ギルフリー(Br)

4.フライア、砂川涼子(S)
5-1.ファゾルト、デニス・ビシュニャ(Bs)
5-2.ファフナー、斉木健詞(Bs)

6-1.フロー、村上敏明(T)
6-2.ドンナー、ヴィタリ・ユシュマノフ(Br)

7.ローゲ、西村悟(T)
8.ミーメ、与儀巧(T)
9.エルダ、竹本節子(Ms)

沼尻竜典 指揮 京都市交響楽団

(duration)
序奏 5′
第1場 20′
第2場 45′ (場面転換から)
第3場 28′ (場面転換から)
第4場 42′ (場面転換から)
第4場ハンマー 10′


第4場、アルベリヒがヴォータンに指環をむしり取られる陰惨なシーン、序夜最悪のシーン。アルベリヒは指環に呪いをかけて去り、ローゲとヴォータンは一仕事終えたと短い会話。そして、ヴァイオリンが弱音で弧を描く序夜最高の美しさ、はっと息をのむ11小節。(Dover1985, p244Massig und sehr ruhig)、この二人の名状し難い心の綾が表現された瞬間。
なんでこんなことが可能なのか、あまりに違う音楽!、陰惨な美。
それに響きは、遠くない先にマーラーやブルックナーが出てくることになるだろう予感高ぶりの美しいライン。
色々と詰まったシーン。
普段聴くことのないオーケストラではありますが、清らかな美を感じた瞬間でもありました。

続いて、指環渡さないダダコネヴォータン。地割れしてエルダの出現はいわばスーパーヴァイザーコールのようなものだと思うが、ヴォータンがエルダ出現の前に指環を渡してしまうとカミタソの話は折れるしで、やっぱり、作曲家のストーリーテーリングすごいもんだと思う。そのなか、
エルダはノートゥングと思しき剣を持って現れ、警告を発し剣は持ったまま地に沈む。最後の入城シーン前、その地割れスポットから、さっきと同じと思われる剣がニョキと出てくる。それをヴォータンは鞘に納め神様たち虹を渡り入城エンド。
つまり、エルダが持っていた剣が、ヴォータンが引き抜いた剣かどうかは、本当のところわからない。演出の解釈に幅を持たせる行為と言えよう。

ということで、4場は一番長い場で内容も、音楽、演出、両者色々と腕の見せどころですね。止まらず流れる時間軸を支配する指揮者も秀逸でした。

照明を落とし幕が開き映像が映し出される中、いつの間にか指揮者がポーディアムに現れ、川底からホルンが極めて弱音の地鳴りの開始。映像メインの舞台だなとまず認識。
舞台は川底から川面を見上げるような映像模様。乙女たちが泳ぎながら歌っている。ハンペの演出の弁、第1センテンスの自己問答を序奏のあとすぐに自ら答えを見せつけるという話ですね。この映像乙女たちが川底のアルベリヒとやりあうときは実物歌い手となり舞台に現れる。映像とリアルのシームレスなつながり。あざやかにシンクロしていました。
映像はだいたいこんな感じで最後まで続く。この1場の川底、2場のお城、3場のニーベルハイム、竜(竜です)、4場のお城、そして虹の橋を入城。奥行きがあまりない舞台に立体的な映像を駆使。なかなか迫力あります。カラフルな色合いは映像だとさらに明瞭になる。原色モードの色彩感。ダイナミックな音が欲しいところですが、オケは総じて音が薄く、蹴り上げていくような勢いが今ひとつ。十分な力感とはいいがたい。
ポジションは、歌がしもてサイドに寄る場面が多々ある。虹はかみて側過ぎる。
キャラクターの出し入れはオーソドックスなもので、歌う順番に出てくる。14キャラクターは分かりやすい設定と動き。
第1場の乙女たちは視覚映像と実物がうまく一致。ヴォークリンデ小川さんをはじめとしてみなさん見栄えしますしね。歌は芯がありソロよく、アンサンブルバランスも聴き応えあり。
アルベリヒのキャラはきっちりときまりました。メーヴェスの動きはきっちりと役にまっていましたね。ニーベルヒムではアルベリヒ、ローゲ、ヴォータンと、キャラが濃い連中のやり取りとなるだけに、この1場でアルベリヒのキャラ決め、まずは第1ポイント。

といった具合でエンターテイメント風味の演出、わかりやすくて飽きのこない舞台が続いていきます。

2場は神様たちの場、ヴォータンはじめみなさん人間くさい言いぐさが満載の神様たち。中で、フリッカのウィーと押すような歌い口はあまり好みではありません。
巨人2人。映像ではなく実物で一番ぶっ飛びそうなリアル感。2人で1人。足と上半身、2人で1人分。4人で巨人2人。衣装、化粧、動き、表情、大変そう。C-3PO風味の動きが面白い、というかこれだけ大掛かりだと自然にあの動きになってしまいますよね。彼らとフライアのやりとりは自然。他の神様たちが巨人を見上げる様子もおしなべてナチュラル。エンタメモードになってきているので客側は奇抜さを楽しみに変えて観てる感じ。
そこにローゲが登場。場がますますゴチャゴチャと立て込んでくる。14キャラ中8キャラがそろい踏み。
ローゲの西村さんは演奏会でも時折聴く機会があります。今日は爆発ヘアの体当たりの演技と歌。少し柔らかみのあるテノール。策士ローゲ、この暗い劇に妙な明るさをもたらした。今日一番の頑張り。拍手喝采。出し惜しみすることによって価値を高める情報を一つずつ紐解いてみせる策士のうまさをよく表現できていたと思います。

3場、ミーメ与儀。地の底の一番下層に生きる相応な存在感、ありました。メイン3人のやりとり、ヴォータンは傍観せざるをえない状況。策士ローゲとアルベリヒのやり取り。頭巾と舞台スポットの上下移動、滑らかな移動で魅せてくれる。そして映像竜、まぁここが一番の映像効果だったかと思います。演出の方針がよく出ていました。ここと大詰め4場の虹のシーンと双璧でした。

4場のことは最初に書いた通り。
エルダは役どころとしてはおいしい場をサクッと5分ほどの出番で持っていってしまう。次の劇につなぐ重要な役どころではあります。場の中断、エルダ竹本渾身の歌唱。次にエルダの話が出てくるのは来年、ワルキューレの第2幕、ヴォータンの長い語りまで待つことになりますね。
ドンナーのハンマーでうっとおしい空気払い。雄大な3拍子(8分の9拍子)は徐々にカタルシス的気分をもたらして、乙女たちがラインゴールドと、ハーモニーがエコーする中、次のワルキューレの激しい3拍子への変化を感じさせつつフィニッシュ。

オーケストラともども頭から飛ばしてほしい気もしますが、手探り感は無くて、十分なリハを積んだ準備万端で臨んだラインの黄金だったように思います。
満喫しました。ありがとうございました。

カーテンコールにはハンペ他、みなさんも一緒で。
おわり