河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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1255- ≪祝≫第50回横手高校吹奏楽部定期演奏会

2011-06-14 22:00:54 | インポート

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2010-2011シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから。
2010-2011シーズン
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ほぼ都内ばかりで聴いていますがこの日は今シーズン、昨年10月にびわ湖でのトリスタン以来2回目の旅路。
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【第50回横手高校吹奏楽部 定期演奏会】
2011年6月11日(土)6:00pm
横手市民会館大ホール
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校歌 斉奏
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【Stage1】Gratitude~音楽の贈り物
ショスタコーヴィッチ 祝典序曲
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佐藤博昭 天国の島
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グラズノフ アルトサクソフォーン協奏曲
 アルトサクソフォーン、成田 徹(OB)
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J.B.チャンス 呪文と踊り
 OB合同演奏、招聘指揮 石塚 保
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【Stage2】007~横手高校吹奏楽部オリジナルヴァージョン
James Bond Theme
Live And Let Die
For Your Eyes Only
(ステージドリル構成・演出)
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【Stage3】Cheers!
サム・スカンク・ファンク
The Beer Time~ビールCM曲メドレー
ハナミズキ
アイドル・ヒットナンバー・ア・ラ・カルト
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(アンコール)2曲
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指揮・顧問 高橋 直樹、他
演奏:横手高等学校吹奏楽部
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この学校の吹奏楽部は創部が昭和31年(1956)で本年55周年、第1回定期演奏会が昭和37年(1962)ですので今回で50回目の定期演奏会だそうです。現役生徒主体の学校行事ですので、「祝」の部分はありますが、浮足だった祝典では全くありません。校歌に続く一曲目に祝典序曲を置きあくまでも曲で、力で、祝いを表現する、この高校らしい。
半世紀以上の、陳腐な言葉でいえば伝統、それはそれで素晴らしい。継続も力なり。これだけやっていればいいときもわるいときもあったのでしょうか。
全日本吹奏楽コンクールは、1970年以前は順位制でした。今みたいに金・銀・銅といったファジーな世界ではありませんでした。参加校増加やスキルレベルの向上という言い訳もあるのでしょうが、審査員の進歩しない耳が優劣を峻別できない。それだけが今の普門館でも、なにもかわらず継承されている。伝統の遺伝子は生徒が変わっても脈々と波打っていながら時代の要求に柔軟に応えている、他方、なんだか場当たり的な選出による審査員は隔世遺伝子さえないのではないか。金銀銅なんかやめて順位をつけろ、コンクールなんだから。普門館での初日、金賞受賞校は翌日デスマッチで再度争い、1位から9位までつけるというのは以前このブログで提案しました。日取りの関係とか争いごとをしているわけではないなど、いろんな理由で実現できないでしょうね。話がそれました。
四半世紀を二回以上積み重ねてきている同部、いいときもわるいときもある。
昭和43年(1968)、京都での全国大会でカリンニコフの交響曲第1番の第4楽章を演奏して第3位になった。それは素晴らしい出来事。翌昭和44年(1969)は、後年全日本で名を轟かせるような高校ばかりが7校もそろった県大会で、シードされ、ふさわしくその日の有終の美を飾った演奏曲目はなんと、
「パルジファル前奏曲」
東北大会で2位に甘んじる結果となり全国大会は果たせなかった。
長らく名将の座にあった進藤史生先生の脳内を今でも覗き見たくなる。この曲を選曲するに至った経緯を。
ブラス主体のコンクールといったものとはもっとも遠いところにある曲に違いない。当時はやったもう一方のワーグナー、エルザの行進とはわけが違いすぎる。
パルジファルは2回の休憩を含め約6時間に迫ろうというロングなオペラだ。第3幕の聖金曜日の奇跡、そのカタルシスに浸るまでへたすると4時間半以上かかる。
また、第1幕の揺れが指揮者によりものすごく、最速で1時間半の人、レヴァイン系の棒だと2時間15分ぐらい。そもそも前奏曲は祈りのピアニシモからはじまり、ずっと弱音系の流れで、途中むき出しのトランペットなど一部あったりするが、静寂の音楽が一面に広がったままなのだ。レヴァインだと18分ぐらいかかる前奏曲が、メトの吊り上げられたシャンデリアが灯を落とし真っ暗闇の中、もがく音楽。その「パルジファル前奏曲」を編曲しながら演奏したのだろう。録音は残っていないのか。いてもいなくても個人的には音楽とはそのようなものを探す旅でもある。
ということで、話が完全にそれました。
この高校の栄光はどちらかというとコンクール黎明期の活躍が見事、そして今でもなにかストイックなまでの、音楽に捧げる雰囲気、音で表現しようというごまかしのない真摯なスタイルは部風というよりもむしろ校風によるものだと思う。
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校歌の吹奏からはじまりました。歌いたくなる人もいると思いますけれど、斉唱ではなく斉奏に耳を傾けましょう。アウフタクトから始まるダークブルーな校歌は君が代と同じぐらいユニークで妙に士気を鼓舞する。
部員は3年間、体育会系とかの壮行会いまではどうか知りませんが伴奏しなくてはいけないし、他のイベントでも同様。だから歌えない。OBになってはじめてまともに歌ったなんて言う人もいるかもしれません。
校歌をこうして公に演奏し、一般の人たちに聴いてもらえる幸せを感じて演奏していたことでしょう。音の響きが心と共鳴する。無駄な拍手をしないここの聴衆は昔からえらかったということです。聴く耳は心にある。
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露払いが終わり、第一曲目の祝典序曲。
この曲は昔から結構やっていて、演奏している方も聴いている方もスッキリする。ちょっと前にこのブログでとりあげましたけれど、そのときは華金の憂さ晴らしの前にどう?みたいな感じで書いてしまいました。
ここです→1247-
華金とアニバーサリーを一緒にして不謹慎極まりない。すみません。でもこの曲好きなんですよ。
オーケストラの演奏と吹奏楽では雰囲気がだいぶ異なります。弦パートをウィンドでこなさなければいけないので大変。でも一長一短で、ウィンド=弦のトリッキーな部分の音ののび具合は弦の勝ちですが、縮こまらないブラスの響きは吹奏楽の場馴れしているブラスセクションの方がのびやか。自由奔放にやっても崩れない。そんな感じ。
それでこの高校の演奏は、トリッキーさ、派手さ、といったものを表面(おもてづら)に求めない。音自体はベース4本そろえるなど低音充実ですが鈍重な感じがしないのは昔と異なるところです。グイッと全体に音場が持ち上げられたような響きになっていますけれど、音楽の内面を探るような響き、演奏スタイル、あえていうならばストイックな音のもっていきかたは好感が持てます。音楽と向き合っている。
超高速で押し通すスタイルもありますが、そうすると前述のブログに書いたような演奏になってしまう可能性が大。超高速でも悪いわけではありません、どのような指揮者が何をいかに表現するかです。心的余裕の感じられる演奏でした。
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二曲目の「天国の島」今年の全日本吹奏楽コンクールの課題曲の一つだそうです。クライマックスはどこなのか初めて聴くのでよくわかりません。どこかで盛り上げ部分を構築していってメリハリのあるストーリーを作っていかないと大会ではなかなか難しいと感じます。演奏自体はかなり練習を積んでいるとみましたが、流れで行くか山岳系でいくか、難しいところ。天国にある島はどういう島なのだろうか、興味が湧いてきます。
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演奏はたんたんと進みます。
学校の行事発表会です、これは確かに美入野祭のようなイベントとは一線を画すとはいえ、もう少しキャピキャピしててもいいと思うのですが、一切なし。心耳に聴かせる音楽で勝負する。昨今のテレビのようにうるさいだけの芸能学芸会ではありませんし、そのようなことを筆にするのもおこがましくなる、見事な進行にあらためて好感が持てます。練習の成果の披露です。
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三曲目はグラズノフのアルトサクソフォーン・コンチェルト。独奏はOBプロ成田氏。この曲もお初。そもそもこの楽器のコンチェルトなんてあまり聴くことがない。オケで独奏楽器としてたまに出てきますが、裸で聴くなんてことはめったにありません。
曲はよくわかりません。かおりがない、そのような曲なのか。尾をひく余韻に浸るような曲ではなく技を聴く曲なのか、調和を求めるのなら双方欲しい、表現の幅広さが今一つ感じられない曲ではあった。伴奏のほうはいつも一緒にやっている楽器の音だしメロウに包み込んでいる感じで、「聴きながら演奏する」、つまりアンサンブルの極意に達しているのは、吹奏楽コンクールだけではなくアンサンブル・コンテストなどのようなもので磨かれているからと思われる。第3楽章までこのテンションが続きづらいのは曲のせいもあるだろう。
ソリストの成田氏はOBなので同化するしかない(笑)。このあとStage3でも同化していました。そこにいて全く違和感がない。当然と言えば当然かな。ともかく、このようにコンチェルトで内面の場がさらに盛り上がる。
一曲目から徐々に音楽的感興が高まり、まわりの聴衆も中身をしっかり聴いておりました。絶対に自分の学校の大会出場の肥やしにしてやるという生徒から、人生の炎の核に音楽がまつわりついているだけになってしまった人たちまで、みんなくいいるように音楽の内面に近づいていこうとしてました。本当に素晴らしい聴衆だと思いました。
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Stage1の最後の曲「呪文と踊り」はOB合同演奏。棒は昭和45年(1970)から10年間同校で棒をとっていた石塚先生。同曲は全国大会のときの曲。
ちょっとゆるかったがツボを押さえているようで聴きごたえありました。めくるめく展開を求めずあくまでも曲を磨いていくそのように聴こえてきました。また幅広さがあり前方につんざく様な響きを要求しない。曲想に任せるスタイルだが一本調子にはならない。奥に並んだ見事なブラスがその数の比だけの音量増加として鳴ることはなく、あくまでも音楽を表現している。見事な演奏でした。自然にコントロールされていました。
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ここまで4曲。あっという間の出来事。
成果の発表、大拍手。
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Stage2はステージドリル。こちらちょっと苦手。
プログラムによると昨年、第38回マーチングバンド(小編成の部)で全国大会銀賞をとっているのでこちらも全国レベル。小編成といっても55人規模で、部員数を考えるとギリギリといったところか。個人的には吹奏楽コンクールで頑張ってほしい気もするが、弘法は筆を選ばず、か。
マーチングバンドは観に行ったりすることはないのでわからない。このすり足のステップが時流によるものなのか、マーチングスタイルなのか、それすら判然としない。まわりの生徒たちが目を皿にして観ていたのでお手本吸収がまじまじとありあり。いいね。文化はこのようにして育つ。
たしか、この高校のステージドリルは古くからあって、マーチ用の衣装がそろったのが石塚先生2年目の昭和46年(1971)と記憶する。定期演奏会の当日はお昼に市内をデモンストレーション行進演奏して盛り上げていたはずです。

2


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その当時とは比べるようなものではなく、あまりの洗練度、次元が違いすぎる。別物と理解。
ステージ後方のブラスはスペースの関係で音だけで迫ったのかしら。いずれにしてもマーチングバンドの面白さを認識しました。
第1回マーチングバンド全国大会は昭和48年(1973)ですので、結構昔からあったし、その2年前に制服(衣装?)をそろえたりしてますので、力の入れ具合によりますが歴史としてはそれぞれ長いものがありますね。
ショートプログラムでしたが内容が充実していて濃い分、観客も十分楽しめたと思います。
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だらだらと長く書いちまいました。
Stage3
リラックスできるのは聴いて観ているほうなんですが、演奏しているほうの喜びも別にあったと思います。3年生個人別ソリスト状態などあったりしましたけれど、ここの高校の力はトリッキーな名人芸を追及するのではなく、それらの力があってはじめて底上げされたアンサンブルになるには違いないのだけれど、そのアンサンブルの積み上げ、ストイックなまで音楽に向き合う姿勢、それが持ち味。
学校行事の発表会です。タイムスタンプ的なソロのライトアップはあってしかるべきだと思います。それはそれとして、
これはとりあえずすぐに忘れて本年の普門館目指して頑張ってほしいと思います。この日の音楽の喜びを忘れることなく大会に臨み、定期とは別の圧力を背に感じやらなければならない。でもそれは決して押されているのではなく、自らがこの日音楽する喜びを作り上げたように、普門館でもそのように自らが音楽をする喜びを表現してほしいと思います。心から心へ。
おわり
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≪お礼≫
当日券60枚のうち最後の2枚情報を段取りしてくださったスタッフの生徒諸君に感謝します。ありがとうございました。

≪付録(できればパソコンでみてください)≫
2008年全日本吹奏楽コンクールの感想。
ここに全部まとめてます。→ 704-

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