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前回のブログ、メータ指揮イスラエル・フィルの翌日はハインツ・レーグナーの棒でオール・ベートーヴェン・プロだ。堪えられませんなぁ。
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1991年11月24日(日)2:00pm
オーチャード・ホール
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ベートーヴェン・プログラム
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レオノーレ序曲第3番
ヴァイオリン協奏曲
交響曲第6番 田園
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ヴァイオリン、カール・ズスケ
ハインツ・レーグナー指揮
ベルリン放送交響楽団
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このプログラムは結構長い。
演奏だけで2時間に及ぶ本格的な公演だ。
昨今の短いコンサートとは趣を異にする。
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ところでこの日のプログラムであるが、今見てみると非常に奇妙だ。普通だと、来日公演が全部載っており、公演のどの地でも見れるような共通的なプログラムが普通なのだが、この日のプログラムは、今日の演奏のことしか書いていない。ほかの日のことは全く書いていない。完全な冠コンサートなのか、それとも関係者だけのコンサートだったのか。河童は関係者ではないし、見れば見るほど奇妙なプログラムだ。
それに楽団、団員の紹介などもあるのが普通だが、それも全く書かれていない。
指揮者、オケのこと、それに曲の紹介。最後に宇野さんがレーグナーのことを少し書いている。だけ。。
従って、ほかの日はどこで何を演奏したのか全く分からない。
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今の時代にあって、このような曲を3曲並べることのできる指揮者がいるだろうか。普通だと、たぶん、レオノーレは削るだろう。
素晴らしかったのは田園、そしてヴァイオリン協奏曲の伴奏部。
なんというか、いわゆるドイツ的に、正三角形に落ち着いた音型を形作るオーケストラではない。横広に、輝く音である。アメリカ的な感じはしないが、普通のドイツの森的なオーケストラの音でもない。いくらブラスが鳴らしても弦と平衡感覚があるあたり品位と節度がある。レーグナーのなせる技なのだろうが、田園の第5楽章における光り輝くホルン、そして慎ましやかにして大胆なブラス、安心して響きに身を任せられる。非常に心地よい祈りの音楽であった。
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レーグナーの棒は、非常にち密で速度がわりと速い。かと思うと大胆に鳴らしたり、誰も何もしないようなところでクレッシェンド、デクレッシェンドの波を作り音楽にうねりをもたらしたりする。一言で言うとかみごたえのある音楽を作る人だ。
田園の後半の音楽にレーグナーの棒は合っている。その存在、まるでレーグナー自身の嵐のような音楽がジャストフィット。見た目は日本のサラリーマン風情なのだが、作りだす意志の音楽はかたくなだ。
ヴァイオリン協奏曲の丁寧なオーケストラ伴奏は聴きものだった。伴奏をしているというよりも、みんなできれいな室内楽アンサンブルをやっている雰囲気であり、ズスケのわりと線の細い音楽作りとは別のところで楽しんでいたようだ。
レーグナーの棒というのはこのようにきっちりとしたものであり、またときには大胆になり、いずれにしても聴くほうにも技量が必要。その意味では、ドイツシャルプラッテンから多量に出たレーグナー指揮の演奏は忘れ難いばかりではなく、何度でも聴き返したくなるような要素をもっている。
鳴らすところは鳴らすが、全般には清らかに響いたベートーヴェン・プログラムであった。
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さて、レーグナーといえば、愛聴盤がある。
これ。。
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おわり