河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

388- ベートーヴェンさん

2007-08-23 20:25:00 | 音楽

静かな悪友S君が質問した。

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S君「ベートーヴェンの交響曲で一番すごいのはどれだと思う?」

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河童「それはなんといってもエロイカだと思うよ。」

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S君「どうしてそう思う?

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河童「それは、全歴史を塗り替えるような最初の2発の打撃音から、極度に展開されたソナタ形式、変拍子、シンコペーション気味のアクセント、充実の和声、どこまでも素晴らしいの一言に尽きるのではないか。」

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S君「。。。。」

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S君は、反論もしないかわり、無言で何か言いたそう。

ベートーヴェンの1番の魅力に浸ると、次にくるのはやはり2番しかない、と思ってしまう。

2番は二長調的やにっぽさが、切れ味鋭い当たりの演奏により、みごとに光輝いたりするときは、何とも素晴らしい曲だと恐れ入ってしまうことがある。

たとえば、カール・ベーム指揮シュトゥットガルト放送交響楽団の演奏。第1楽章再現部のいりなどほれぼれする。同時に曲の価値を認識する。

2番にはまってしまうと次は3番しかない、と思ってしまう。これ以外の曲などあり得ない。

1番も2番も3番もベートーヴェンのベクトルは正方向しか向いていない。

そろそろ耳が聞こえなくなるころなのだろうが、音楽家としての致命傷を感じさせないものすごさだ。

昔、9回裏代打で出たバッターは足をけがしており歩くことしかできない。

代打に指名した監督も、当の本人も、いやゲームを見ている全員が、ホームラン以外意味のない打席だと分かっている。

それで、彼はバイバイホームランを打って歩いてダイヤモンドをまわった。

MLBでの話だが、それをテレビで見た。

なんというか言い表しようがない感動のようなものが底から湧きあがってきた。

致命傷の足のけががあってもベースボールは出来る。両腕がきかないというわけではないのだ。

ベートーヴェンの耳はそんなことを感じさせる。

不屈というより正方向へのベクトルエネルギーを感じさせる。

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エロイカにはまってしまうと、次に来るのはこの4番しかない、と思ってしまう。

豊穣で何もかも豊かであったエロイカ。そのあとには田畑のような四角四面で、それでいて大地を皮膚に感じさせてくれる4番がふさわしいのだ。

フルヴェンの棒による第2次世界大戦中に行われた演奏は限りなく妖しく深すぎるが、正のベクトルもたまには暗闇のクレバスを覗きこみたくなることがあるのだろう。こちらとしても怖いもの見たさ。

4番にはまってしまうと、次はやはりこれしかないと思ってしまう。

この5番こそ正のベクトルの集大成。

早い話、

構造しかない。

音楽の切れっぱしをすこしだけ使わせてもらって、それを徹底的に使い、構造だけの曲を作ってしまった。

だから筋肉質になるのはあたりまえ。

とにかく最初から最後までオタマジャクシにどつかれっぱなし。

いずれにしてもベートーヴェンはいつも前向きだ。うしろ向きな曲など作っても意味がないと思っているに違いない。

そこらへんの道端に転がっている感傷など眼中にない。

あたりまえだ。彼の背中には正のベクトルの矢印しかないのだ。

でも、この曲も続けて3回ぐらい聴くと、最前列のオケピットかぶりつきでワルキューレを聴いているようなドツキのうるささが少し気になってくるのも事実。

運命のあとはやっぱりこれしかない。これ以外考えられない。

6番田園はのどかではない。何か厳かな雰囲気がある。

フルヴェンのスローな田園は限りない正解だと思う。この曲はこの解釈以外考えられないなぁ。

5楽章の祈りの音楽を緩急自由自在なフルヴェンの超棒で聴き終えた後、6番のような曲のあとにくるのはやっぱり7番しか考えられないよね。ベートーヴェンさん。

これはインテンポで貫く意思をもった指揮者による解釈が聴きものです。

トスカニーニやらなんやらと、生聴きしたこともないCD耳ダンボで借りてきたセリフをたれるよりも、現存する指揮者の生をまず聴け。

バレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリンの7番はすごかった。

猪突猛進。

4楽章全部アタッカでつなぎ、全部インテンポ。

あの徹底性で7番は生きる。そしてベートーヴェンも息を吹き返し、正しい方向へ意思を向かわせてくれる。

この7番、巨大フル編成のオケで突進させると限りなく面白い曲だ。

それで7番の正しいありかたに浸ると、この曲の後にベートーヴェンが作る曲はやはりこれしかなかったのではないかと思ってしまう。

8番の、なにか直方体の高さを意識させるような曲。

深さというよりも高さを感じさせてくれる。

味わえば味わうほどにその良さが耳に沁みる。

ここでもベートーヴェンは前を向いている。

そして8番のあとに作る曲は9番しかない。

この曲はベートーヴェンの前しか見ない意思が爆発している。

ベクトルも折れんばかりの前向きな音楽。

耳はとっくに何も聴こえていないのにこんな曲をつくるのかぁ、と今さらながら唖然。

合唱付きの第4楽章もすごいが、これだけの巨大曲でそれまでの第2楽章と第3楽章をひっくり返したんだから、この力、意志の力、すごいです。

ということで、ベートーヴェンのイメージは聴き手もそれぞれ自分なりのものをみんなもっているものですね。

河童「ところで君はベートーヴェンの交響曲ではどれが一番だと思っているのかね?」

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S君「。。。。」

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おわり

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