カンボジアの民間薬 2 サルの姿焼き

カンボジアから   金森正臣(2005.12.29.)

カンボジアの民間薬 2 サルの姿焼き

写真:開きで薫製になっているサル。頭骨や目の形からスローロリス(英名:Slow loris)の仲間。これは山の中の観光地、キリロムで撮った写真。しかし地方に行くと市場でも良く見かける。

 どこの国でも民間薬は、昔から使われて居る。民間薬と漢方薬の相違は、民間薬は、単独で使う物を呼び、漢方薬は調剤して使う物であると薬学の授業で聞いた覚えがある。いずれにしても、自然物(生物とは限らず鉱物も入ってくる)を使って、様々な病気の症状に対抗してきた。良く効くものもあるし、ゆっくりで効果のほどは明らかでないものもある。
 
 カンボジアでは、写真のスローロリスの仲間が薬としてよく売られている。カンボジアには2種類が生息しており、大きな方はスローロリス(英名:Slow loris 学名:Nycticebus coucang)、小さな方はピグミーロリス(英名:Pygmy loris 学名:Nycticebus pygmaeus)である。写真の大きさからすると、この個体は大きな方の種類である。
 樹上生活に適応した夜行性の動物で、大きな森林がないと生活が出来ない。そのためカンボジアでもかなり減っていると思われる。貴重種としてリストアップされており、保護動物になっている。昼間は樹洞などにいることもあり、動きが鈍いので、発見さえしてあれば捕獲は容易と思われる。一応保護動物のため、プノンペンや観光客の多いシャムリアップの市場では見かけない。シェムリアップでも外国人観光客の少ない、クレーマウンテンの遺跡に行った時には、このサルが売られていた。標本用に必要と思い、2個体買った。そうしたら生きているのはどうかと言って、違う場所からピグミーロリスを篭に入れて持ってきた。
 彼らも売ることはヤバイと知っている様だが、地方であるとポリスとは交渉次第なので、売っているのであろう。コンポンチャム、バッタンバン、クラチェなどの市場で売られているのを見たことがある。どれもほとんど同じ状態で、かなり良く乾燥され、燻煙されている。

 薬として売っているが、このサルをどの様に使うかは明らかではない。うちのメンバーに聞いてみても、あまりはっきりしない。カンボジアとしてはかなり高価なので(1個体5-10ドル)、あまり一般的に使われては居ないらしい。煎じて飲むという答えもあるが、アルコール(蒸留の焼酎様の酒がある)に漬けるという意見もある。何に使うかもはっきりしない。
 むかし日本でも、リスの丸焼きやムササビの丸焼きが有ったことを思い出す。子どもの熱冷まし、疳(小児の神経症の一種。夜間に発作的に泣き出したり、引きつけたりする。疳の虫などと言っていた)の薬、夜尿の薬とされていたと思う。
 何となく似た様な物の気がする。

 チンパンジーでも様々な薬様植物を使うことが知られている。実際にその植物から薬効のある成分が抽出されているものもある。京都大学霊長類研究所助教授のマイケルさんは、この分野が専門である。タンザニアの首都ダルエスサラームで聞いた話は、驚くことばかりだった。何と虫下しまで行っていた。普段食べない草の葉を多量に食べることがあり、腸内寄生虫が糞と一緒に出てくると言うのだ。但し彼は、虫下しは薬効なのか物理的効果なのかまだ不明の部分があると言っていた。その葉には細かい毛が沢山あり、それが巻き付いて出てくる可能性も否定できないと言う。

 遠い昔から、病気などで苦しい時に、人々は様々な工夫を重ねてきたのであろう。ある時には誤って、死に至ることもあったのであろう。多くの人々の様々な経験の蓄積が、今日の生活を支えている。我々の現在の知識は、その様な経験の上に成り立っているのであろう。

 
明日(30日)から正月4日まで、年末年始休みにすることにしました。
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ミミズ

カンボジアから   金森正臣(2005.12.28.)

ミミズ

写真:公園の芝生から這い出したミミズ。周囲一面にこの状態である。ムクドリの仲間は食べ過ぎて付近の木の上で、胸の粗嚢を一杯に膨らませてウトウト。少しずつ長く出てくれると良いのにと思ったかどうか? 

 カンボジアも12月になると、雨期も終わり雨の降る回数も量も著しく少なくなる。北の風に変化し、気温も下がって快適な季節になる。カンボジアの人達にとっては寒いらしく、長袖のジャンパーや中にはキルティングの上着を着ている人もある。昨日は涼しく最低気温が、20.4度になったが、今朝の最低気温は、21.4度である。私は朝の散歩にTシャツで出かけるが、散歩の人は結構長袖やジャンパーだ。そんなに寒いのだろうか。

 12月6日にまとまった雨があって以来降らなかった雨が、20日の夜に僅か3mm位であったが降った。次の朝の公園の芝生の周囲は、這い出したミミズの大群。まだ生きて動いているもの、乾燥が始まって死んでいるもの、アリに食べられているものなど様々。
 ミミズの種類も分からない、這い出した理由も分からない。でも日本でも時々見かける状況。移動のためか繁殖のためかであろう。
 
 他の生物でも、この様な状況は時々目にする。例えばザリガニは、卵を抱えたメスが秋に移動している。だいたい雨の降った後など、同じ日に多量に移動が見られる。これなどは1個体が移動に成功すれば、沢山の卵が同行するから分布の拡大に意味がある。カエルの仲間は、雨上がりの道路で多量に轢死しているのが見られる。何のための移動かはあまり分かっていない。ミミズはどうなのだろう。

 ミミズは、中国では薬として使われており、解熱剤として良く効く。消化管の中の泥をしごきだして(かわいそう)、そのままか開いて乾燥してある。煎じだして飲むと熱が下がる。「地竜」と言う。いかにも効きそう。
 また、子どもの肺炎などの折りに、生きたものを開いて胸部に張る。かなり沢山必要。張った上にサラシなどでカバーし、布団を掛ける。変色して黒くなったら張り替える。2回ぐらいで熱が下がる。

 世の中にはまだまだ不明なこと・面白いことがいっぱいあるね。
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カンボジアの食材 6 カメ

カンボジアから   金森正臣(2005.12.27.)

カンボジアの食材 6 カメ

写真:カンボジアで食されているカメ。トンレサップ川の渡し場の食堂に座ると、カメを頭に乗せたおばさんが売りに来た。大きなものは1匹10ドルぐらいで結構高い。骨格標本が欲しかったので、2種類3匹を買った。

 カンボジアでは、カメも食材として売られている。しかし、レストランに置いてあるわけではなく、どこかからかカメ売りが頭に乗せて現れる。これはウドン(プノンペンから北、即ちトンレサップ川の上流40kmほどのところにあるお寺の観光地)の近くのトンレサップ川の渡し場である。国道1号線のメコン川の渡し場(プノンペンより下流、約50km)でも、道路脇に沢山並べている。カメは、渡し場と関係有るのであろうか。他のところではあまり見たことがない。何れも調理したものが売られており、生きたものはない。かなり良く蒸すか焼かれるかしてあり、その後に油が塗られていたりする。

 丁度昼頃で、トンレサップ川の水位を調べるために、渡し場に降りた。調査後、腹が減ったのと幾つかのレストランがあったので、昼食にすることにした。レストランに座ると(全てオープン・エアーで誰でも自由に出入りできる。入り口の扉もない)、直ぐにカメ売りのおばさんがやってきた。同行の教官達に聞くと、皆食べたいと言う。私も標本として骨が欲しかったので買うことにした。食いしん坊の私だから、カメに興味が有ったのは無論である。調理後何日経っているかは不明で、やや心配はしたが、結局買うことにした。

 甲羅の上下は離されており、腹側の甲羅を取り除いて中を食べる。辛みのあるタレが付いてきているので、肉や内臓を手で引きちぎって食べる。肉や内臓は引きちぎれる程度に、熱が通っている。卵のあるのが上等とされる。味は淡泊ながら、なかなか深みがある。この時は地学の教官の若い女性達が3人いたが、何れも好きだと言ってパクついていた。前肢の右、左、後肢の右、左と担当者を決めて、骨が混乱しない様に食べて貰った。

 写真の左端の個体は、手前が頭で、Cuora amboinesis であろうと思われる。英名は、Asian box turtle で、ハコガメの仲間。即ち陸亀である。周辺の各甲羅版の角に黒い斑点がある特徴から判断した。
 写真左から2番目の腹の白いカメ。手前が尾部で、Cyclemys dentate complex と思われる。英名は、Asian leaf turtle で陸亀の仲間。この種類は、色の変異があり、腹面全体が黒くなるもの、黒い斑文が出来るものなどが知られている。
 写真左から3番目で他個体に乗っているのは、手前が頭部で、 Malayemys subtrijuga と思われる。英名は、 Malayan snail-eating turtle で陸亀の仲間ではない。英名からすると、水中のタニシや巻き貝を好んで食べるのだろうか。
 写真右端の個体は、2番目の個体と同じ。陸亀は、前から3番目と4番目の甲羅版のつなぎ部分が、可動性になっており、襲われると頭を引っ込めて腹部の甲羅版を閉めてしまう。頭の部分の隙間が小さくなる。
 陸亀は、 Box turtle と言われる様に、水生のカメよりも甲高が高くなる。また、腹側の甲羅の前側から3番目と4番目の間が動く様になっている。

 この他にも、レストランでスッポンを出すところがある。カンボジアでは、スッポンの仲間も分化しており、4属が知られている。どれが利用されているかはまだ確認ができていない。
 料理としては、ぶつ切りにしたものが唐揚げにしてあったことが有る。その他にはどんな食べ方があるかは不明である。日本の様な鍋料理は聞いたことがない。


注:学名にイタリックを使っても、投稿した時にイタリックが消えてしまう。また下線も引けないので、普通の書体になっている。

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カンボジアの民間薬 1 ビンロウヤシ

カンボジアから   金森正臣(2005.12.26.)

カンボジアの民間薬 1 ビンロウヤシ

写真:ビンロウヤシ・セット。ビンロウヤシは、女性の嗜好品として市場などで売られている。写真は、ある民家に置かれていたビンロウヤシを噛むためのセット。薄切りの椰子の実を乾燥したもの(暗褐色の円形の板状、英名:Betel nut palm 学名:Areca catechu)、と貝殻を焼いて粉にして水で練ったもの(白く見えている)、山芋の様なツルの生葉(英名:Betel leaf vine 学名:Piper betle)がセットになっている。生の葉に貝殻の粉末を塗り、ビンロウヤシの種子を包んで噛む。

 どこの国にも嗜好品は、発達している。カンボジアでは、年配の女性の嗜好品としてビンロウヤシが栽培されている。コンポンチャムのある地方では、これを専門に栽培している農家を見たことがある。一般的には、庭先に数本が植えられている程度で、沢山は栽培されていない。プノンペンでも僅かながら庭先で見ることがある。カンボジアでは、庭に植える木は、果物がなる木が多く、観賞用のものは少ない。ジャックフルーツやマンゴーはよく見かける。

 市場には必ずどこかにこのビンロウヤシのセットが売られている。この中の貝殻を焼いたものは、生物の実験で、光合成で炭酸ガスが使われることを確認するための試薬として使う。この白い粉を水に溶いて上澄み液を、炭酸ガスのある中に入れると、水酸化カルシュウムが炭酸カルシュウムになり、水に溶けなくなるので白濁する。カンボジアではかなり田舎でも手に入るので便利である。後は透明なペットボトルがあると、簡単に実験ができる。
 
 ビンロウヤシについて、男性がタバコを吸うが、女性はタバコを吸わないのでその代わりであると説明を受けたことがある。しかし年配の女性だけで、若い人は吸わないと言われた。何か性的興奮作用でもあるのかと思ったが、言葉が良く通じなかった。

 この写真の家で、少し分けて貰って噛んでみた。やや疲れていたこともあったが、噛み始めると軽い目まいを感じて、気分が沈む様だった。脈拍はややゆっくりになった。数分で、その目まいはなくなり、気分は落ち着いた。30分ぐらいしてまた噛んでみたが、今度は前よりも軽い症状だった。きっとタバコと同じで、続けると作用が弱まるのだろう。その後特に好んで噛んでみようと思わないから、習慣性はないのかも知れない。

 葉に貝殻の粉の練ったものを薄く塗りつけ、ビンロウヤシを包んで口の中に放り込む。ビンロウヤシは、乾いているのでかなり硬い。噛んでいると唾液で柔らかくなり噛みやすくなる。唾液が真っ赤な汁になるので、これは吐き出しながら噛む。飲み込むことはしない様だ。おばあちゃん達は、市場の片隅でナイロン袋を片手に、ビンロウヤシを噛んでいる。なんだかシンナーをやっている姿を連想させる。
 ビンロウヤシは、ゴルフボールよりやや大きめの果実を付ける。外皮は緑色であるが、中は白色。これを薄切りにして乾燥すると暗褐色の、写真用になる。種子は房状に数十個が付く。木は椰子の仲間であるが、かなり特徴があり直ぐに見分けられる。葉が付いているところから下部は、竹を連想させる。

 コロンビアでは、高地の人達の間では普通にコカが使われていると聞いた。寒さ、空腹、疲労感を消失するという。コカの葉は野生でもあり、これがコカですよと教えて貰った。葉を噛む程度では、強くはない様で習慣性も薄いという。
 コカの栽培は、密林を切り開いた中で小面積ずつ行われていた。日陰を好むため、木を全部切ってしまうのは良くないとのことだった。マフィヤが管理しており、国で造った地図には書いて無い、15m幅ぐらいの立派な道路が走っていた。調査の時にはこの道路を使って、軽飛行機やヘリコプターの発着を行った。国の役人が付いてきていながら、俺たちは知らない道路だと言うのも、コロンビアらしくて妙に気に入っていた。

 どこの国でも、遠い昔から様々な嗜好品が開発されてきている。これらが薬とも関係している。生活の必需品なのであろう。

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カンボジアの食材 5 アリ

カンボジアから   金森正臣(2005.12.25.)

カンボジアの食材 5 アリ

写真:これが食用のアリ。しかし種類は色々あるらしく、飴色のもの、黒色のものなどがある。これはアリの酢を造るために、農家の方に実演して貰った時のもの。大きな女王、小さな働き蟻、白い卵が見える。

 アリを食する国は多いが、日本ではアリは食料とは見なされていない。だから多くの日本人がアリを食べることに対して、違和感を持っている。
 食べられているアリは、国によって大きく違っている様で、カンボジアでは樹上に巣を造る「ツムギアリ」の仲間が食用になっている。樹上で葉を集めて糸を吐き出して紡ぐのでこの名がある。

 採集方法は、巣のあるところを枝ごと切り落とし、水を張ったタライの様なものの上で叩くと、アリがバラバラ落ちるので簡単に集められる。その後巣を開いて中の卵などを取る。
 これを簡単に洗い(生きているから簡単ではない。水を掛ける程度)、鍋に水と共に入れて火にかける。しばらく煮るとアリは死に、蟻酸が出るので酢の出来上がりである。酸は弱く、酢と言うよりも飲める程度のものであるが、確かに味のある酢が出来上がる。しかし食酢としては、酢の物にならないくらい弱い様に思う。もっと沢山アリを入れればよいのかも知れないが。

 カンボジアでは夜のビヤホールなどに、アリの摘みを売りに来る。こちらは水分が無くパラパラしている。薄い塩味が付いており、蟻酸の香りもある。アリ同士に細い糸が絡んでいたりするから、ツムギアリの仲間であることが確認できる。小皿に一盛り1000リエルぐらいである。
 地方の観光地の食堂などでは、アリがスープ状になってナイロン袋に入って売っている。これを買って、ご飯と共に食べる。こちらも薄い塩味が付いており、成虫と白い卵が入っている。卵が沢山入っている方が、美味しい様だ。外国人向けのシェムリアップ(アンコールワットがある町)などでは見かけたことがない。
 他にも鍋に入れる料理があると聞いているが、食べたことはない。プノンペンのレストランに有ったと言うが、既にその店はなくなっている様だ。結構レストランも栄枯盛衰が激しい。

 アフリカなどでは、樹上生ではなく地下に巣を造るタイプを食べている。これは年に僅かに1-2日の期間だけで、雨期の始まりにやってくる。結婚飛行のために、脂肪分を貯めたのが羽アリになって出てくる。待ちきれずにそのまま食べることもあるし、簡単に炒って食べることもある。
 チンパンジーは、アリ釣りでアリ塚からアリを釣り出して食べる。また地上をぞろぞろと歩いているものに、竿を指し登ってくるのを口でしごいて食べる。うっかり体中を噛まれるのは好みではないようだ。結構長い時間楽しんでいるから、美味いのだろう。でもアリ食いをするのは、全体ではないから、アリ食いの文化はチンパンジーとヒトが分化する前の時代から起こったものではないだろう
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カンボジアの食材 4 カボチャの花

カンボジアから   金森正臣(2005.12.24.)

カンボジアの食材 4 カボチャの花

写真:市場で売られているカボチャの花。あまり開いていないものが良い様だ。若いツルも葉と共に束ねられている。こちらはスープの具になる。

 カンボジアの市場では、カボチャの花や若い茎、若い葉が売られている。花は蕾よりもやや開き始めた状態である。花はサラダに入っていることもあり、スープに一つの具として入っていることもある。
 写真をよく見て頂くと、カボチャのツルらしきものも束ねてある。若い葉と共にツルもスープなどの具になる。ここでは見られなかったが、同じウリ科の日本のゴキヅルに近い野生種のツルや葉も若芽を摘んで食べている。
 いずれも特に癖の強いものではなく、素直な野菜と言った感じである。但し日本の野菜の様には、柔らかくはない。だいたい日本人は、柔らかいものが好きなのか、野菜に歯応えがない。野菜は、本来セルロースに意味があるのであるから、ある程度は硬くて当然であろう。どこの国に行っても、野菜はかなり硬いものである。オーストラリアのセロリなどは、なるほど筋を抜かなくては、なかなか噛み切れない。噛んで引っ張ると、繊維が切れずにズルズルと噛みついている方から抜けて行った。

 日本の環境で育つから、子ども達の歯や顎の発達が悪い。永久歯になったところで、歯列矯正を行っている人を沢山見かける。勿論歯列矯正の技術が発達して、治療が多くなった側面はあるが、顎の発達の悪いのは、硬い食べ物を良く噛まないからであろう。
 そもそも骨の成長は、運動の時に起こる筋肉の両側の電位差と関係がある。この弱電流とカルシュウムイオンが関係して、骨に沈着して行く。大阪市大の医学部時代に、整形外科の大学院生と一緒に、骨折箇所の両側に弱電流を流すことによって、回復が2割以上早くなることを実験によって確認した。勿論、成長過程における筋肉の使い方が、骨の発達に影響するのは当然であろう。
 他方遺跡から出てくる、イノシシの骨を調べたことがあって、弥生時代以降急速に歯列が短くなった骨が出る様になる。きっと人の残飯か何か、柔らかい食物を貰って育ったものであろう。顎の骨が短くなり、歯列は奧が上側に曲がることで対応していた。骨よりも歯の変化はゆっくりのために、骨の変化に歯が間に合わなかった結果、歯列の長さが短くならなかったのであろう。この様な現象が、ブタへの変化の過程である。

 とは言うものの、年を経し我が身になると、やはり柔らかい野菜は有り難い。カンボジアでは、スープなどに硬いショウガが入っていたり、レモングラスが入っていたりするのは普通である。またスープの野菜をあまり煮込む習慣がない。肉や内臓はあんなに煮込むのに、どうしてだろうと何時も不思議に思っている。多分気候と体調の関係で編み出されてきた、食の文化であろうとは思うのだが。

 今から30年ほども前に、メキシコからの留学生であったと思うが、カボチャの花をサラダにすると教えてくれた。彼女の作ってくれた物は、開いた花を輪切りにしてタマネギやレタスと混ぜたもので、味は良く覚えていないが綺麗だったことが印象深い。
 韓国に良く行っていた1980年代に、カボチャの葉をしばしば食べた。日本の葉より一回り小さい種類であったが、若い葉を湯通しして臭みを取り、焼き海苔の様にご飯を巻いて食べた。コチジャン(トウガラシ味噌)やゴマを付けて食べると、なかなか美味しかったことを思い出す。

 どこの国でも、利用できるものは利用するのが、本来の姿であろう。日本ではあまりにも思考が狭くなりすぎている様に思われる。
 僅か50年前には、日本には300品種以上のダイコンが栽培されていた。でも現在市場で見られるのは、僅かに2-3品種。食材に関してまでこんなに価値観が統一されると、先行きが暗い様な気がする。グルメブームと言いながら、味を理解できない人々が、哲人とかグルメと言われる人に振り回されて、あれこれ追いかけるのは滑稽でしかない。人気があるから良いわけではない。自分の好みに合った味が良い。個性が無くなると、自分の好みさえも分からなくなる。
 同じことが教育の中でも行われていないであろうか。本当の自己を持たない先生達が、専門家と言われる人の意見に振り回されて、周囲の批判を気にして、同じことをする。これでは、個性は育たない。また、人生が何であるは、分からない。このことが子ども達の成長を、阻害していないだろうか。教育はしっかりと自分の意見を持ってするもの。それは周囲の意見を聞かないことではない。自己の意見がないと、周囲の本当の意見も知ることが難しいために、不要な意見に振る舞わされる。
 今日はチョット辛口だったかな。
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お寺の縁日 1 門前のバナナ売り

カンボジアから   金森正臣(2005.12.23.)

お寺の縁日 1 門前のバナナ売り

写真:お寺の門前に暗い早朝から並ぶバナナ売り。モトの座席にバナナ吊るし用の枠を作り、房が茎に付いたまま運んでくる。茎ごと買う人もいるし、房を切り離して貰って買う人もいる。この他にも房を並べて売っている人もいて、とにかくバナナの山。花売りも多い。

 カンボジアでは、仏教行事が多い。仏様の縁日には、多くの人がお寺にお参りする。このときには門前に、お供えする花やバナナの市が立つ。

 毎月、8日と23日が小さな縁日で、15日と30日が大きな縁日である。15日は満月、30日は新しい月を意味する。お寺に行く日には朝早くに、白い上着で出かける。白い上着でない場合には、幅広の白い布をたたんで肩から掛けている人もいる。様々なお供えを持った上に、門前でお花やバナナを買って仏前に供え、僧の読経を聞いて帰宅する。お参りに行った午後は食事を取らないとか、食事に肉は取らないとか、水と塩或いは砂糖だけしか取らないとかいろいろの流儀がある様だ。小さい縁日と大きな縁日でも、午後の食事の取り方は違っている様だ。何を意味しているかは、私にはまだ分からないが、安易な日常生活を正す意味はあるのだろう。
 若い人達は、あまり熱心ではないが、年配の婦人達が特に熱心だ。勿論若い人もチラホラは見かける。

 この様にして仏教を信じることにより、精神的安定を得ていることは確かだろう。年配の方を見ていると、その笑顔に精神的安定を読み取れる。多くの年配者達は、現在の日本では考えられないほど過酷な世界を生き抜いてきている。何時誰に殺されるか分からない、不安定の時代を20年以上もくぐり抜けてきている。初めての人に出会った時に感じる鋭い視線は、生死の境を歩いてきた人の透徹したものである。しかしそれは一瞬のことで、一旦相手の認可を得ると、後は全く鋭い視線を感じさせない。その切り替えは見事なものだ。1999年に最初に来た時よりも、はるかに皆穏やかになっている。人を信じる様になり、人と楽しむことを喜びとする様になっている。

 この様な精神的安定は、仏教を深く信じているからであろう。仏教の教えによって、死後の世界を信じ、現世での行いを律することによって、無意識の中の不安が消えて行くのであろう。日本の様に、目の前の現象だけに頼り、価値判断の物差しが一つしかない考え方とは異なる世界である。価値判断の基準が一つしかないと、良いか悪いかしか存在しない。常に良いものだけを追い求めて、一喜一憂してストレスが溜まっているが、実際には良いことにも悪いことが含まれているし、悪いことにも良いものが含まれている。価値判断の物差しが幾つもあるとその事は明らかである。人生の目の前に起こっている現象は、いろいろな側面を含んでおり、一つの物差しで計れる様なものではない。

 かなり以前にある小学で教生の、4年生体育の授業を見学した時に、授業で子ども達に喧嘩が起こってしまった。チーム対向のゲームで、勝つために夢中になってしまったのだ。同じチームメイトが、戦略で衝突した。
 校長室で話している時に、校長先生は、「普段の学級経営が悪いからとか、教員が左翼思想にかぶれているからとか、子ども達を良く掌握していないとか」話していた。この校長先生には喧嘩は悪いと言った価値判断しかなかった様に感じられた。また普段からこの教員を良く思っていないために、左翼思想にかぶれていると、この教員を単純批判するための結果でもあったろう。そこには価値の基準が、良い悪しの一つしかない。
 私はこの授業では全く異なったことを感じていて、返答に困って黙っていた。授業を観察していて、担任の指導教官は、喧嘩が始まる前にその事を察知していて、止めようと思えば止められた。子ども達は、喧嘩をしている2人を引き分けて、落ち着かせ、一方を他のチームを変えて、次のゲームに進んだ。教生はやや動揺していたが、それでも授業は遅れながらも全てを終了した。
 私がこの時に考えていたことは、児童が喧嘩をして何を得たかである。きっと4年生であっても、1週間ぐらいの間には仲直りをするであろう(実際に教生が帰ってきた時の話では、運動に優れた2人は、喧嘩以前よりも仲良くなっていた)。即ち、喧嘩した2人は仲直りの方法を練習することになる。またこの過程で、自分の悔しさを見ると共に、それをどうコントロールするかに、考えを巡らせるであろう。他方、子どもが夢中になって喧嘩するほどに熱中出来ることも、素晴らしいことである。そもそも現代っ子達は、熱中することが少ない。真剣になることがどの様なことであるかは、なかなか体験できていない。この授業はその意味において、大成功であったと思われた。授業で第一に重要なことは、子ども達が何を得るかである。一生使えるものを伝えることこそが、授業の使命である。
 むろんその他にも多くのことを考えたが、校長先生と大分違うことは、この説明で明らかであろう。価値基準が単純だと、見ているものが正しく認識できない。
 仏教では、様々な価値基準を持っている。私は仏教で修行する様になってから、様々な価値基準が増えていることを感じている。この辺が多神教の教えの良いところであろう。仏教は当然、協調性に優れている。ポルポトの引き起こした根本問題は、この宗教を破壊しようとしたことにある。

 門前に早朝から立つ市は、花とバナナが主体である。売り手は貧しい人達の様に感じられる。値切っているところは見たことがない。多分お布施の意味もあるのだろう。

 こんなにバナナを貰ったらどうするのだろう。食べる前に傷んでしまわないであろうかなどと考えるのは、ケチな下司の勘ぐりであろうか。
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カンボジアの食材 3 昆虫食とクモなど

カンボジアから   金森正臣(2005.12.22.)

カンボジアの食材 3 昆虫食とクモなど

写真:手前のトレイの上の茶色がタガメ、黒いのがゲンゴロウ。次のトレイの黒いのがクモ、次いで茶色いのがコウロギ。次のトレイは、茶色がカイコの蛹、黒いのがクモ。一番奥のトレイは、コオロギ。プノンペンのセントラルマーケットにて。

 カンボジアでは、様々な昆虫が食卓に上る。タガメ、コオロギ、ゲンゴロウ、カイコの蛹、アリなど。昆虫ではないがクモも見られる。
 私は、信州の山の中育ちで、いろいろな昆虫などを食する文化の地域であった。加えて、戦後の何も無い時期で、様々な物を食べることには慣れている。しかしながら上に挙げたたうち、クモだけは対象になっていなかった。カンボジアの食文化の、「食材の広さ」は際立っている様に思われる。

タガメ(Lethocerus sp.)
 日本のタガメと同属であるが、大きさはやや大きい様に感じる。日本では数が少なくなって、計測して平均値を得るほどは捕獲できない貴重種になっている。農薬の影響が徐々に低下して、一部の地域ではかなり復活してきている。
 タガメ類は水生であるが、カメムシの仲間である。このためかなり強い臭気があり、人によっては好まれない。タイなどではこの臭いを好む人は、乾燥したタガメを、粉にして各種食事に振りかけるという。カンボジアにはその様な食べ方はなく、専ら本体そのものが、姿作りでそのまま出る。

 唐揚げ状態あるいは乾煎り状態でだされる。タガメは、肉食動物で、他の動物に口吻を差し込んで、吸い取る。このために口器は硬いので、まずこれを取り除き、そのあとはバリバリと頭から食べる方法がある。また人によっては、口器を取り除いて後、胸部と腹部を離し、両側の内部を吸い出す。この場合には、頭部胸部の硬い部分や羽は残ることになる。カンボジアでは、ビールなどの摘みの一品として食べる。市場や夜のビヤーレストランに売りに来る。だいたい1匹が、500-1000リエル(15円から30円弱)ぐらいである。
 個体に寄るのか調理状態に寄るのか、あまり強烈ではないが、あるものにはカメムシ特有の臭気が残っている。ほとんど臭気の無いものもある。

 皆さんはカメムシを食べたことがおありだろうか。日本ではわざわざ食べたりしないが、時によると口の中に飛び込んできてしまい、口を閉じると強烈な刺激に襲われることがある。
 学生時代に谷川岳の谷川温泉に、山岳部の所有する「白樺小屋」があり、春夏秋冬よく訪れた。どこかの鉱山の作業小屋を譲り受けたもので、全ての炊事や暖房は薪で賄われていた。そのため小屋の周囲には、冬季用の薪が積み上げられていた。秋になると周囲が寒くなるので、カメムシたちはこの薪の中に潜り込む。秋の終わりから初冬に訪れて、中でストーブを燃すと、温度が上がりカメムシが活躍するところとなる。外から持ち込んだ薪の中にも潜り込んでいるし、窓の隙間からも潜り込んでくる。
 薄暗がりで食事をしていたり、大口を開けて寝ていたりするとカメムシが口の中に入り、噛み潰した途端に、目も開けられないほど強烈な刺激に見舞われる。タガメの臭いはカメムシの臭いほど刺激は強くないが、カメムシの臭いを思い起こさせる。誰がこの食材を食べる様にしたかは定かではないが、なかなか勇気のある行動である。ナマコや納豆なども、勇気のある人がいたものだと感心するが、タガメもそんな部類である。

コオロギ
 コオロギは、いろいろな種類が食されていてにわかに判別しがたい。大きなものは日本のエンマコオロギの2倍程度はある。食べているので小さな方は、日本のエンマコウロギくらいの大きさである。日本ではコウロギは、あまり食べられていない様に思われる。しかし同じ直翅目のイナゴは、各地で食べられているから同じ様なものだ。イナゴよりも柔らかく、腹部にボリュームもあって食べ応えがある。
 揚げる或いは蒸したあと味付けをしてあり、佃煮の様なものだ。イナゴの味付けよりは薄くて、ビールの摘みには結構である。一掴みくらい入る缶で一杯1000リエル(30円弱)くらいである

 農家などでは、採集するのを楽しみにしており、新月の時が良いという。捕獲の仕方が、夜間に外に出て白い布を張って光を当て、集まってくるところを捕らえるという。夜間採集と同じ理由で、多分月の無い暗い夜がよいのであろう。多い時には一晩で10kg以上も捕獲するという。現金収入のために、出荷する家も多い。自分の家で食べる時には、脚と羽はむしってあり、食べ易くなっている。売っている物より手がかかっており、上等かも知れない。
 シーズン的には乾期ではなく、雨期が始まって間もなく始まり、半年ぐらいは続く様である。12月はシーズンの最後の頃と思われる。

 日本では、比較的昆虫食は少ない。しかし動物学的に見ると、エビ、カニなどの甲殻類の発展したものであり、同一の系統にある。従って味の基本は、同じ様な物質で構成されていると思われる。やや外骨格が発達して、筋肉の部分が少ないが。

ゲンゴロウ
 ゲンゴロウは、コオロギと同じく市場や夜のビヤホールで売りに来るものである。しかしコオロギよりは一般的ではないのは、量が少ないのであろうか。ある時期には、市場にも売られている。ビヤホールなどに売りに来るのは、一掴み1000リエルくらいである。
これも頭部と腹部の外骨格、前翅は硬いので外して食べている。味付けはタガメと同じ様なものである。

 信州の天竜川流域や各所では、ゲンゴロウの幼虫を食用にしている。トビケラなどの水生昆虫の幼虫と一緒に、佃煮様にして保存されていることもある。やはり酒の肴に適している。幼虫と成虫ではまるで味が異なり、幼虫の方が美味い。カワゲラなどは不完全変態のため、羽化直前の幼虫は、羽化後の繁殖のために脂肪などを蓄えてあり、一段と味がよい。ゲンゴロウの仲間は、完全変態なので羽化してからも栄養を補給しているから、幼虫が特に美味いわけでもない。なかなか大きくて食べ応えはある。

 甲虫の幼虫では、カミキリムシの幼虫が美味い。信州ではブドウムシと呼ぶ地方もあり、ブドウの蔓の芯を食べている。他の木であっても、薪を割っているときに、転がり出てくることがある。或いはカミキリムシの食った穴があると、一生懸命で探す。特に冬には脂肪分を蓄えており、焼くと香ばしくて美味しい。アフリカでも、現地の人達はこの虫が好きで、見つけると同じ様な食べ方をしていた。

カイコの蛹
 カイコの蛹は、戦後の食糧難に時代には、重要な栄養源であった。家庭で捕れる蛹は、真綿などを捕った後や、糸引きをした時に捕れる程度で量は多くなかった。しかし佃煮様にすると結構な味だった。蛹は、繁殖のための栄養を貯めているから、栄養学的にも優れた食材である。家庭では少ないので油までは取らなかったが、蛹の油も売られていた。しかし工場で捕れた蛹は、時間が経って油が酸化しており、特有な臭いがあって美味いとは思えなかった。

 カンボジアでは、やや薄味の佃煮様にして売っている。味は悪くない。多分カンボジアの場合には、糸取りが家内工業的に行われており、蛹を捕ってから調理するまでの時間が短く、劣化が少ないためであろう。蛹の様なものは、死んでからの変質は早い。市場でも売っているし、夜のビヤがーホールに売りに来る。だいたい片手で掴めるぐらいで1000リエルくらいである。
 カンボジアのカイコの糸は、金色である。繭も綺麗な黄色をしている。特に取り立ての濡れた糸は、見事な金色である。しかし退色が激しいのか、自然色の加工は少ない。自然色の暖簾を1枚持っているが、直ぐに退色が進みそうでなかなか掛けられない。やはりケチなのだろうか。繭は日本のものよりもかなり小さく、蛹も小さい。だいたい1サイクルは、35日前後である。私も沢山の場所を見ているわけではない。数カ所で見たところでは、1件の農家が飼育している量は少なく、繭にして数キログラムと言ったところであろうか。

 韓国でも寒い冬に湯気を立てながら良く路上で売られており、しばしば懐かしくて買った。寒い冬でも、ビールを片手に暑い蛹を頬張りながら歩くのは、何となく楽しみであった。

クモ
 クモは昆虫ではないが、節足動物と言うことで、近縁なので一緒にしておこう。種類としては最も大型の、タランチュラに近いと思っていたが、全く違うグループの様な気がする。シンガポールの蜘蛛の図鑑があるので、何とか属ぐらいまでは分かるかと思ったが、まるでお手上げ。インターネットでも調べることは出来なかった。参りました!!
 この蜘蛛は大型で、地下に穴を掘ってか、他の動物の穴を借りてか、巣を造る。よく見られるのは、石の下などである。かなり色々食べているらしい。聞くところに依ると小さなトカゲぐらいまでは食べるという。
 この蜘蛛は、プノンペンからシェムリアップに向かう国道6号線の分岐点付近では、生きたものが売られている。勿論調理したものも売られている。色は黒色で荒い毛があり、オドロオドロしいが、咬まれても死ぬことはない様だ。

 蜘蛛は、油で揚げて味が付けてある様に思われるが、調理法は確かではない。普通私は、食べると多くの調理法は理解できるのだが、蜘蛛の場合には不明な点が多い。腹部もあまり柔らかくはないので、ドロドロ感はない。わりあいにカラリとしており、適度の味付けになっている。
 ビヤホールなどに売りに来るものは、だいたい1匹が、500から1000リエルくらいである。市場で売っているものも大差はない。最初に食べた時には、国道6号線の分岐付近であったが、教員養成校の若い女性教官が買ってくれた。彼女も一緒に食べていた。カンボジア人でも食べない人もおり、様々である。
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カンボジアの交通事情 4 交通事故

カンボジアから   金森正臣(2005.12.21.)

カンボジアの交通事情 4 交通事故

写真:交通事故で転がっているモト。まだ事故を起こして数分であろうか。道路の向こう側にいる車とぶつかったらしい。車の前方のドアの部分がへこんでいる。右手前の道から出てきたモトが、直進してきた車の左側面に衝突。モトもあまり壊れていなかったので、大けがではなかった様だ(カンボジアは、車は右側通行)。

 家の周囲でも、交通事故は頻繁に起きている。この写真は、勤務先から帰る時に見かけたものである。交差点の出会い頭の衝突であろう。カンボジアでは、モトも車もしっかりした運転技術は、学んでいない。交通ルールもほとんど学んでいない。このため左右の安全確認をしないまま、脇道から出る運転手は多い。また、自動車の運転者の技術は極めて未熟で、多くが内輪差を理解していない。

 カンボジアの普通のルールでは、事故はその場で示談にする。双方が話し合って、合意できたところで示談になる。警察や弁護士、保険会社を間に入れることは少ない様だ。時間がかかる上にお金もかかるのが、嫌われる理由らしい。多くはお金のある方が払うのだと言う。

 数ヶ月前の夜間に、住んでいる家の脇の交差点で交通事故があった。車にモトがぶつかったらしいのだが、車がそのまま逃げてしまった。通りかかった運転手が、逃げる車に向かってピストルで発砲する事件があった。
 ピストルや銃は、一応規制されているが、所持している人は多い。路上で一斉に銃の所持検査をすることがあり、モトの座席の下からピストルが見つかることもしばしばである。勤務先から200m位離れた中華レストランの調理人が、調理場の脇でピストルを2丁磨いているのを見たこともある。昨年は、家を探して貰った不動産屋の兄ちゃんが、女のことでもめて喫茶店で撃ち殺された。また、一緒に生活しているカンボジア人の青年のおじさんも、昨年ピストルで撃たれて死んでいる。

 しかし、カンボジアは極めて危険かというとそうでもない。最近は理由無く銃を使うことはない様だ。それなりの理由があって使う様だ。しかし、ピストルも地雷も安く、市民が簡単に手にすることが出来るのが現状である。
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カンボジアの交通事情 3 我先にと割り込む文化

カンボジアから   金森正臣(2005.12.21.)

カンボジアの交通事情 3 我先にと割り込む文化

写真;これは市場の中の風景である。狭い通路に沢山の荷物を積んだモトが入り込む。更に相手がいることも無視して入り込むから糞詰まる。向こう側に見える篭は、対向側から入ってきたモト。詰まってから物事を考えるのが、カンボジア流。なかなか先の見通しが立たない。カンボジア人はせっかちの様に見えるし、自分勝手の様に見えるが、必ずしもそうでもない。理解するのには、なかなか時間がかかる。

 カンボジアの庶民の足は、モトと呼ばれるバイクだ。一番人気は、ホンダのスーパーカブ。でもかなり高いので、勢い韓国製などの安いものになる。しかし、シートや方々に、HONDAと書いてある。だからといって性能が上がるわけでもないのだが。
 このモトは、輸送手段でもある。市場のおばさん達は仕入れたものを、全てモトに積み込んでくる。ドライバーの前後にも、シートにも山ほどの荷物となる。乗らない部分は、振り分け荷物にして左右にぶら下げる。写真でご覧の様に、モトの車幅は倍以上に拡大する。おばさんはこの荷物の上に乗っていたりするから、ドライバーの頭の上に乗っている様に見えることもある。ヒト以外の重さも、100kgは優に超えて乗せている。良くバイクが持つと感心する。最も、積み過ぎるとさすがに馬力が足りなくなり、ゴトゴトとゆっくりしか走れなくなったりしている。

 そのモトによって、市場の中の狭い通路の奧まで荷物を運ぼうとするから、くだんのごとく成る。これでは絶対に通れないのだが、糞詰まるまで前進する。詰まったところでお互いに、あれこれ工夫して通過する。ここで喧嘩にならないところは、カンボジアの特徴で、権利を主張して言い争うことも少ない。一生懸命に工夫して、そのまま通ろうとする。この場合も争いもなく、一部の荷物を下ろしてお互いに通過した。
 日本の場合にこの様なことになったら如何であろうか。多分どちらが早く入ったとか、どちらが正しいから下がらないとか言い争いになるのが関の山であろう。最も見通せる幅の広い場所で、あとから来たモトが、待つのかも知れない。
 この様な社会的行動の差を見ていると、文化の差がまざまざと感じられる。いったいどの様な条件が、この文化の差を生み出しているのだろうか。多分、自然環境も寿命も、仏教もいろいろ関係しているのであろう。

 以前にクメール正月に、地方に出かけたことがある。カンボジア人の多くは、クメール正月は自分の田舎に帰る。そのためプノンペンは2-3日ガラガラになる。従って地方への幹線は混み合う。国道6号線のプノンペンから1時間ぐらいのところで渋滞が起こって、なかなか動かなくなった。ここでも我先に割り込もうとするから、対向車線までいっぱいになり、当然渋滞は更に激しくなる。1時間位をかけて200m位を動いたら、渋滞の原因が判明した。モトと自動車が衝突し、4人ぐらいで乗っていたモトの1人が死亡していた。それを道路上に放り出したまま、両側を通ろうとするから、当然渋滞になる。さすがに死亡事故であると、その場で示談と言うわけにも行かず、お巡りさんが来るまで事故者を動かすことが出来なかった様だ。この時には帰りにも、私たちの車の2台ほど前が、モトにぶつかって乗っていた1人は、死亡した様だった。しかし他の車は、事故者を放り出したままどんどん通り過ぎて行った。結構交通事故が多いので、関わっていられないのであろう。
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