レストラン事情 1

カンボジアから   金森正臣(2005.12.9.)

カンボジアも乾期が始まり、夜など涼しいくらいになった。昨夜窓、扉を開けたまま寝たら、やや風邪気味。熱も出ないし咳も出ないので問題なく直ぐに治るが、頭の回転はイマイチ良くない。24度ぐらいで風邪を引くなんて、クメール化したかな?週末はゆっくり休みたいが、ちょっといろいろ用事がある。でも月曜日には元気に出勤できそう。
日本は寒いようなので、師走の忙しい時期、皆様健康にご注意有れ。

レストラン事情 1

写真:毎朝歩道上に仮設される食堂。テント、イス、テーブルなど毎朝準備されて食堂が始まるのは、5時頃。上水道が設備されていないので、食器などの洗浄など衛生上はやや問題有り。でも食べても何時も問題が起こるわけでもない。

 プノンペンには様々なレストランがある。国際色豊である。私の住んでいる付近だけでも、インド料理が4店(スリランカやネパール料理を含む。一緒にしたらインド人には怒られるだろうか)、フランス料理、イタリア料理、ギリシャ料理、タイ料理、メキシコ料理、アメリカのファーストフード、中華料理など切りがない。勿論現地カンボジアのクメール料理(カンボジアの言語はクメール語、アンコールワット時代の文化をクメール文化と呼び、カンボジアの料理をカンボジア人は誇りを持ってクメールスタイルと言う)も沢山ある。しかしクメール料理が何かとなると、その特徴はにわかに特定し難い。古くから海沿いに南下した中国文化の影響を受け、現在も行き来する中国人の影響を受け続けている。料理の基本には、中国料理の影響があるように思われる。隣国ベトナムの影響もあり、タイの影響もある。タイやベトナムと異なるところは、辛くないところぐらいであろうか。両隣国の料理が辛いのに、クメール料理は基本的には辛みは少なく、辛みは添えて出される。従って好みによって調節される。熱帯特有の香辛料・香草などは沢山入っている。また、クローイチマと呼ばれるスダチくらいの柑橘類(ライム)が酸味料として付く。ココナッツミルクがよく使われ、汁物のベースとなる。調味料としてトック・トレイ(魚の醤油、日本ではタイから輸入されているナンプラーと同じ物)が良く使われる。この辺りがクメール料理の特徴であろうか。魚の発酵食品(プラホック)を使うのも特徴かも知れない。タイ・ベトナムと同じ、米のデンプンを原料にした幾種類かの麺が存在する。多少麺の形態が異なる部分があり、名古屋のきしめんのような平麺は、ベトナム料理(ホウと呼ばれている)。カンボジアの麺は細い。生の麺と乾燥のものがあり、クイティーウと呼ばれている庶民の朝食の麺は、この乾麺を湯に1分ぐらい入れて丼に移し、スープや具を添えたものである。これにはいろいろの香草が付いてくるので、好みで入れる。

 クメールレストラン
 クメールレストランは当然のことながら、高級料理から庶民のものまで全てが揃っている。日本で、日本食のレストランと言った時に、高級料亭から一膳飯屋やうどん屋があるようなものだ。安い方では、500リエル(1ドルが4000リエル)ぐらいから、1食数ドルぐらいまでで、外国の料理ほど高くはない。私は、クメールレストランをだいたい5段階に分けている。
 1)カンボジアにも安い食事は有って、一番安いのは主に天秤棒の両側に食材や丼を担いで売り歩く、おばさん達であろう。500リエルぐらいで、麺などを売っているようだ。守衛をしている人やビルの建設現場などでよく売れている。その他にもリヤカーの上にコンロを備えて焼きそば様の物を売っている人もいる。
 町工場の前に展開する、歩道上のレストランもだいたいこの部類に属している。住宅街の歩道上に作られる、仮説テント・レストランより安いようだ。
 調理や食材にはあまり問題がなかったとしても(しばしば問題がある)、水が十分ではないところで食器などが洗われているので、あまり利用しないようにしている。
 昔学生時代に(もう40年以上も前になるが)東京に暮らしていた。その頃金が無くなると大久保の職安近くに集まる、「タチンボ」達の食事をするところに出かけた。タチンボとは、職安を通さずにその日の職を探す人達で、暗闇の4時頃から何となく集まり、トラックが来て仕事場に乗せていってくれるのを待って居る人たちである。別名ニコヨンとも呼ばれていた。国の失業対策の一日の賃金が254円であったから。タチンボは、ニコヨンよりも賃金は安かったと思う。出かける前に食事をするので、リヤカーに、ご飯、お総菜、みそ汁などを載せて引いてくるおばさん達がいた。ご飯も惣菜も全てが、お金の単位に応じて盛ってくれる。例えば、ご飯3円、みそ汁2円、タクワン2円と言った具合である。当時、ラーメンが安いところでは30円ぐらいであったから、10円ぐらいで腹一杯食べられるこの場所は、有り難かった。その付近には、安物を売る古着屋もあった。何となくそんなことを思い出させる食事風景である。
 2)これよりやや高くなると、歩道上にテントをかけた店を作って(毎朝テーブル、イスなどを運んでくる)、焼き豚乗っけご飯(バイサッチュル:バイはご飯、サッチュルはブタ)やクイティーウ、お粥などを売っている。単位は、一食が500リエルから1000リエルくらいになる。この様な店はあちこちにあり、中には夕方まで営業を続けるところもある。
 市場の中の食堂も、値段的には同じ程度である。場所が狭いことが多いので一つの店のメニューは単純であるが、沢山の店が集まっているからいろいろ選択の余地はある。また市場では2000リエルを超すメニューもある。地方の街に行っても、どこの市場にも食堂の一角がある。
 3)私がクメール飯屋と呼んでいるところは、街にオープンエアで店を構えているところが多い。関西の飯屋と同じ感覚で、入り口に惣菜が並べられていて、客は好みの物を注文して店に入る。メニューなどはない。だいたい一食1ドル以下(2000リエルー4000リエル)で十分に食べられる。
 4)メニューがあって、料理を注文してから作る店になると、およそ倍ぐらいの値段になる。この様な店は、ビールなどを飲みながらゆっくりとするのが普通で、飯屋と言うよりも、レストランと言った方が感覚に合う。肉・魚・海鮮・野菜など様々な食材をクメール流に調理して出す店が多い。
 クメール料理には、クレイポット(素焼きの土器)で煮る鍋料理がある。主体は肉だったり海鮮だったりする。テーブルの上で、様々な物を入れながら食べる。
 中華料理系のレストランも、注文を取ってから料理する店が多い。餃子や庶民の中華料理(宮廷料理ではない)が主体になる。ラーメンの専門店も多く、トッピングが幾種類か有る。プノンペンは、美味しくて安い中華料理の街である。中華料理ではあるが、すっかりカンボジアに溶け込んでおり、クメール料理の内であろうと思っている。
 5)クメール料理にも高級店はあって、外国人向けのレストランも多い。しかし味がよいとは限らないので、あまり利用しない。勿論味の良い店もあるが、結構安い店でも味は良かったりするので、お客さんでも案内する時以外はあまり利用しない。例えば、アモックと呼ばれる雷魚をココナッツミルク蒸しした料理やクメール式のカリーが、外人向けにはこれをココナッツ(椰子)の実の中に盛りつけられていたりする。私は結構ケチだから、同じ味の物を高い料金を払って食べたりはしない。
 
 こうして見てくるとやはり私は、安いところを食べ歩くことが多いのかな。人々のいろいろな生活が直接見えて、結構気に入っているのだがなかなか上品とは行かない。やはり氏より育ちか。いかんせん氏・素性は正しいのだが、育ちが百姓・土方で育ったから。でもこれの方が人生は楽しいように思うが。
 
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