ヒトの家畜化   9 体調の自己管理能力

ヒトの家畜化   9 体調の自己管理能力

 

最近インフルエンザが流行りだした。今年はいつもより早いようだ。

皆さんは風邪にかかって熱が出た場合、どのように対処しているのだろうか。私は、50年ぐらいは解熱剤を飲んだことはない。また風に関する薬もほとんど飲まない。まず自分の体の状態を把握し、耐えられる状態であるかを慎重に検討する。

風邪で熱が出るのは、侵入者と戦うために体温を上げ、白血球の活動を活発にするためである。薬を使うことによって熱を下げると、体内の抵抗力は活性が落ち、状況は長引く。薬を飲んで熱が下がったからと言って、良くなっているわけでは無い。

多くの風邪薬や解熱剤は、消化器官にかなりの負担をかける。熱が下がっても回復は遅れ、かえって長引くことになる。また薬をすぐ使うことによって、本来の体の状況の変化を知ることが出来なくなる。

 

ヒトには本来の免疫機能があり、外部からの侵入者に対して抵抗し、抗体を作る。抗体が出来上がると、次からは同じ侵入者には対抗できるようになり、何ら問題は無くなる。

新しい国で生活すると、何等かのトラブルに会うことがある。カンボジアでは、淡水のカニの塩漬けがある。日本のサワガニ程度の大きさのものと、半分態度の大きさの種類がいる。いずれも水田に住んでおり、雨期になると顔を出す。この時期が収穫時期で、農家の皆さんは採集して塩漬けにする。2つの種類は別々に漬けられる。私がカンボジアに長期で生活を始めた2003年ごろ、カウンターパートの女性が、小さいほうのカニの塩漬けと、タマリンドの若葉(酸味がある)を石うすの中でついて混ぜ、熱いご飯にかけてくれた。危ないなと思いながらおいしいので食べてしまった。次の朝から激しい下痢で、34日苦労した。それから2度ほどこのカニの塩漬けを食べたが、用心して少しだけにしておいた。4回目ぐらいには、ほとんど問題は無くなり、普通に食べられるようになった。

サワガニ大のカニは、2007年7月に骨折をして歩けなくなり、近くのベトナム系のレストランに良く食べに行った。ここにはソムタムと言われる青パパイヤのサラダがあり(もとはラオス料理でタイが本場)、この味付けにカニの塩漬けが入っていた。ピリ辛で酸味もあり、パパイヤはビタミンが豊富でタンパク質の消化酵素もあるので食べていた。最初は小さいカニと同じように下痢をしたが、34回食べると抗体ができてきて以降は普通に食べられた。

アフリカでも同じような体験をしており、連れているトラーカー(動物を追跡したり土地のガイドをしたり)が100㎞ぐらい離れた場所に行くと、水の違いで体調を崩すことがある。しかし、1週間もすると正常に戻る。私は、水は基本的に沸かして飲んでいるので問題は起こらない。

 

免疫は使わないでいると能力が落ちるように思うことがあるが、実験的確証はない。しかし、現代人が、自分の体調の状態を察知する能力は、薬が発達したために明らかに落ちている。この現象は、薬によるヒトの家畜化と考えることが出来る。このために自己の体調の管理能力も落ちている。子どもたちが簡単に熱中症になったりするのは、自分の状態を感じ取る能力が退化していることを示しているように思われる。その子どもたちが成長すれば、当然大人も自己の体調の管理能力は落ちたままであろう。

 

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ヒトの家畜化  8 いじめや自殺の増加

ヒトの家畜化  8 いじめや自殺の増加

 

文部科学省が、1017日に2018年度の全国の小・中・高等学校のいじめのまとめを発表した。その数は、54万件を超え、不登校も16万人を超えていると言う。現在も増加傾向にあり、今までで一番多いようだ。増加するこの傾向は今後も続くと思われる。

少し以前に発表された統計では、2030代の死因の一番は自殺であると言う。全く無関係なことではない。

 

動物は生きて行くうえで必要な技術を、遺伝的に持っている場合と後天的に学習する場合がある。昆虫などでは、ほとんどの生きる方法が遺伝子上にあり、学習で得る所は少ない。大きな社会を持っているにも関われず、後天的学習が無くでき上っている。ところが社会が大きくなると、ほ乳類などでは後天的学習が大きくなり、遺伝子上に存在するのは学習するためのきっかけだけである。このことはローレンツやラックの研究によって明らかになった。彼らは、この業績によってノーベル賞を受賞した。

 

この様なことから考えると、ヒトの家畜化が進むと、社会に適応するために必要は能力を獲得する機会が無くなっていることに気が付く。ヒトの学習能力は高いので、多くの教育関係の人々は、教えることによってすべてが獲得できると思っている。文部科学省などもそこに所属している教育の専門家も、この範囲を出ない。

 

特に問題になるのは、人間関係、すなわち社会性の獲得である。

 

ところが750万年ぐらいのヒトの歴史で、この様なヒトの家畜化による様々な能力の消失は、この50年がらいが激しく、だれもこの問題に気付いていない。原始的生活をしている人々と暮らしてみると、近代文明に囲まれて便利な生活をしている人々が、如何にヒトとしての能力を失っているかが良く理解できる。

 

ヒトは自分で意識することが出来ない無意識の世界を内包している。これはフロイトやユングの精神分析を勉強すれば理解できる。

この無意識の世界は、自分が消失してしまった人としての生きる力の不足を感じ取っている。そこに自分では修正できない不安が存在し、様々な精神的不安定を起こす。これが最初に書いた不登校やいじめ、自殺、他者への攻撃などと深く関係している。この根源になるところに注目し、改善の方法を計らないと将来の社会の改善には向かわないと考えられる。

他方動物生態学的に考えると、様々なストレスで人口が減少し、便利な社会がエネルギー的に成立しなくなると、自然に回復する段階が来るのかもしれない。

先進社会で様々な問題が起こっても、原始的生活の人々は何の問題もなく生き残って行くように思われる。

そろそろ便利さや効率よいことを見直す時期に来ていると思われる。

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ヒトの家畜化  7 ヒトの家畜化と親子の関係

ヒトの家畜化  7 ヒトの家畜化と親子の関係

 

現在のような核家族が一般的になり、いろいろな電子機器が氾濫し、情報が過剰に押し寄せてくる様になったのは30年ぐらいのことであろう。しかしながら、この変化が親子の関係に大きく影響している。

 

親がスマホをいじりながら授乳していると、子どもへの注意が散漫になり、授乳に際して乳児が発するサインを見落とすことになる。この乳児が発するサインと母親との関係が、子どもがこの世に生まれて初めてのやり取りになる。この関係こそが、人間関係の始まりで、この出発点が、成長後の人間関係に大きく影響する。

この段階で子どもが発したサインを無視されると、子どもは人間関係の最初の段階の発達が遅れ、以降の成長に大きく影響する。

 

さらに成長が進んだ段階でも、子どもの育児をテレビやスマホに任せている場合も見受けられる。忙しい場合には仕方が無いにしても、安易に機械で子守を行うと、当然のこととして人間関係が発達しない。また愛されている感覚が薄く、ヒトに対する愛情が薄くなる。最近の離婚の多さは、この様な人間関係の希薄さの結果でもあろう。離婚も確かに自由ではあるが、多くの場合は自分自身にも愛情が持てない場合が多いように思われる。

 

小学生や中学生でも、スマホなどに依存傾向はあり、高校生になるとさらに進む。この結果、ヒトとの関係を作る機会はますます少なくなる。少しトラブルになると、すぐに離れてスマホなどに依存する傾向がある。

 

現在はこのような状態で育った親が多くなり、その結果として育てられた子どもは、人間関係が上手では無い割合が増えている。この状態は今後ますます進むであろうから、人間関係の苦手な子どもは増加し、結婚などをしない傾向も増加するであろう。

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ヒトの家畜化  6 子どもの近視と生活習慣病

ヒトの家畜化  6 子どもの近視と生活習慣病

 

113日のNHKの番組で、子どもの強度近視の問題が取り上げられていた。

以前から子どもの近視の増加は問題になっていたが、強度近視は将来的に失明の危険もあると言う。外に出ることが少なく、室内で生活する時間が長くなると、強度の近視になる率が高くなるようだ。台湾でも同じような現象があり、子どもを外で遊ばせることによって、強度近視の割合が少なくなると言う。

 

以前から近視は、外で遠くのものをしばらく見る練習をすると改善されることが分かっていた。これは室内で近くだけを見ている状態から解放され、筋肉の働きが変化することによって、正常な働きの回復が促されるためと思われる。これらの現象は、ヒトの生活が、社会の変化によって起きた家畜化と捉えることが出来る。

 

日本では、生活習慣病として肥満が取り上げられて久しい。アフリカなどの奥地に入ると、肥満はほとんど見かけず、精悍な体系が多い。また栄養不足も散見される。少し都市部に出ると、肥満がまれにみられるが、多くは収入の多い警官などで、金が入ると食べ過ぎることを示している。

カンボジアでも同じで、1999年ごろにはほとんど肥満な子どもは見られなかった。しかし最近都市部の子どもたちには、時々肥満がみられるようになっている。大人社会でも、都市部では肥満が多く、健康を気にして朝の公園では、いろいろなグループが運動などをしている。

 

この様に人間が作り出した環境によって様々な変化が起きてしまうのは、ヒトの家畜化の現象として理解することが出来る。

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