カンボジアの民間薬 2 サルの姿焼き

カンボジアから   金森正臣(2005.12.29.)

カンボジアの民間薬 2 サルの姿焼き

写真:開きで薫製になっているサル。頭骨や目の形からスローロリス(英名:Slow loris)の仲間。これは山の中の観光地、キリロムで撮った写真。しかし地方に行くと市場でも良く見かける。

 どこの国でも民間薬は、昔から使われて居る。民間薬と漢方薬の相違は、民間薬は、単独で使う物を呼び、漢方薬は調剤して使う物であると薬学の授業で聞いた覚えがある。いずれにしても、自然物(生物とは限らず鉱物も入ってくる)を使って、様々な病気の症状に対抗してきた。良く効くものもあるし、ゆっくりで効果のほどは明らかでないものもある。
 
 カンボジアでは、写真のスローロリスの仲間が薬としてよく売られている。カンボジアには2種類が生息しており、大きな方はスローロリス(英名:Slow loris 学名:Nycticebus coucang)、小さな方はピグミーロリス(英名:Pygmy loris 学名:Nycticebus pygmaeus)である。写真の大きさからすると、この個体は大きな方の種類である。
 樹上生活に適応した夜行性の動物で、大きな森林がないと生活が出来ない。そのためカンボジアでもかなり減っていると思われる。貴重種としてリストアップされており、保護動物になっている。昼間は樹洞などにいることもあり、動きが鈍いので、発見さえしてあれば捕獲は容易と思われる。一応保護動物のため、プノンペンや観光客の多いシャムリアップの市場では見かけない。シェムリアップでも外国人観光客の少ない、クレーマウンテンの遺跡に行った時には、このサルが売られていた。標本用に必要と思い、2個体買った。そうしたら生きているのはどうかと言って、違う場所からピグミーロリスを篭に入れて持ってきた。
 彼らも売ることはヤバイと知っている様だが、地方であるとポリスとは交渉次第なので、売っているのであろう。コンポンチャム、バッタンバン、クラチェなどの市場で売られているのを見たことがある。どれもほとんど同じ状態で、かなり良く乾燥され、燻煙されている。

 薬として売っているが、このサルをどの様に使うかは明らかではない。うちのメンバーに聞いてみても、あまりはっきりしない。カンボジアとしてはかなり高価なので(1個体5-10ドル)、あまり一般的に使われては居ないらしい。煎じて飲むという答えもあるが、アルコール(蒸留の焼酎様の酒がある)に漬けるという意見もある。何に使うかもはっきりしない。
 むかし日本でも、リスの丸焼きやムササビの丸焼きが有ったことを思い出す。子どもの熱冷まし、疳(小児の神経症の一種。夜間に発作的に泣き出したり、引きつけたりする。疳の虫などと言っていた)の薬、夜尿の薬とされていたと思う。
 何となく似た様な物の気がする。

 チンパンジーでも様々な薬様植物を使うことが知られている。実際にその植物から薬効のある成分が抽出されているものもある。京都大学霊長類研究所助教授のマイケルさんは、この分野が専門である。タンザニアの首都ダルエスサラームで聞いた話は、驚くことばかりだった。何と虫下しまで行っていた。普段食べない草の葉を多量に食べることがあり、腸内寄生虫が糞と一緒に出てくると言うのだ。但し彼は、虫下しは薬効なのか物理的効果なのかまだ不明の部分があると言っていた。その葉には細かい毛が沢山あり、それが巻き付いて出てくる可能性も否定できないと言う。

 遠い昔から、病気などで苦しい時に、人々は様々な工夫を重ねてきたのであろう。ある時には誤って、死に至ることもあったのであろう。多くの人々の様々な経験の蓄積が、今日の生活を支えている。我々の現在の知識は、その様な経験の上に成り立っているのであろう。

 
明日(30日)から正月4日まで、年末年始休みにすることにしました。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )