地方見学 1 イヌと学校      

地方見学 1 イヌと学校      20105.14. 金森正臣

 先週の末(5月6-9日)、カンボジアの北東の地方に小旅行をした。ラタナキリ州は、東をベトナム、北はラオスに、西はメコン川に接する州である。カンボジアで最も面積が大きい州であるが、山間部が多く、人口密度は低い。山岳少数部族が多く、それぞれ独自の文化を持って共存している。

 この地に、日本のNGOが支援している学校がいくつかあり、その学校の支援に訪れた方々とご一緒させていただいた。州都バン・ルンから車で約1時間半、山を登り下りしてようやく到着した村の学校は、意外に立派でびっくり。実は日本の方々の援助で立てられた校舎であった。敷地は広くゆったりとして、周囲はカシューナッツの畑がほとんど。丘の上にあるから、遠くまでカシューナッツの畑が続いているのが一望できる。

 ある教室を覗くと、子どもたちの後ろに、イヌが一匹座っている。先生も生徒も気にしている様子はない。突然小学校4年ごろのことを思い出した。その頃イヌを飼っていて、その春に生まれたモズも飼っていた。イヌは、群れをなす動物で、群れ内の順序が重要である。いつも家族と言う群れの中で、自分がどの順位にいるかを気にしている。常になるべくボスの直ぐ下に付こうとする。また誰がボスであるかも、常に見ている。イヌを飼っている家に行くと、誰がボスであるかは、直ぐに理解できる。意外に家長はお父さんでは無く、お母さんであったり、子どもであったりする。イヌはなるべくボスの意向に従う。私の飼っていたイヌもそうで、新参者のモズよりも、自分が上だと思っていた。その日はたまたま、家が留守になるので、モズのかごを持って学校に行った。朝のクラス会のために、皆が起立して礼をし、おはようございますと挨拶して静かになった途端に、「ワン」と後ろから大声が張り響いた。皆がドッと笑って振り向いてみると、我が家のイヌが座っていた。いつもは学校に付いてくることを禁じられていたから、来ることはなかったが、その日はモズが、付いて行ったから自分も当然行くものと思ったらしい。その頃は、イヌをつないで買う習慣は無く、自由にしていたから、勝手気ままに付いて歩いていた。私と一緒に野山を駆け巡る時も、ほとんど姿は見せず、どこかで私の進む方向を確認しながら、ウサギを追い、タヌキを追っかけまわし、時にはクマを追っかけていた。その日もほとんど姿を見せることなく学校まで付いてきて、皆が着席したころに、後ろに座り込んだのであろう。後ろの方の同級生は知っていたが、我が家のイヌは村一番喧嘩が強く、人気者であったから誰も注意しなかった様だ。私は急いでイヌを追い出したが、不満そうに帰って行った。

 カンボジアの地方に行くと、日本の終戦直後の様に貧しいがのんびりした生活時間が流れている。その点ではこの地方も同じであるが、ベトナム戦争の後遺症を引きずっている。ベトナム戦争の時代に、いわゆるベトコンのホーチミンルート(北ベトナムから南ベトナムに物資や兵員を輸送する解放民族戦線(ベトコン)のルート)があり、米軍による爆撃が多量に行われた。現在でも多くの不発弾や地雷が存在する。
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