カンボジアの食材 5 アリ

カンボジアから   金森正臣(2005.12.25.)

カンボジアの食材 5 アリ

写真:これが食用のアリ。しかし種類は色々あるらしく、飴色のもの、黒色のものなどがある。これはアリの酢を造るために、農家の方に実演して貰った時のもの。大きな女王、小さな働き蟻、白い卵が見える。

 アリを食する国は多いが、日本ではアリは食料とは見なされていない。だから多くの日本人がアリを食べることに対して、違和感を持っている。
 食べられているアリは、国によって大きく違っている様で、カンボジアでは樹上に巣を造る「ツムギアリ」の仲間が食用になっている。樹上で葉を集めて糸を吐き出して紡ぐのでこの名がある。

 採集方法は、巣のあるところを枝ごと切り落とし、水を張ったタライの様なものの上で叩くと、アリがバラバラ落ちるので簡単に集められる。その後巣を開いて中の卵などを取る。
 これを簡単に洗い(生きているから簡単ではない。水を掛ける程度)、鍋に水と共に入れて火にかける。しばらく煮るとアリは死に、蟻酸が出るので酢の出来上がりである。酸は弱く、酢と言うよりも飲める程度のものであるが、確かに味のある酢が出来上がる。しかし食酢としては、酢の物にならないくらい弱い様に思う。もっと沢山アリを入れればよいのかも知れないが。

 カンボジアでは夜のビヤホールなどに、アリの摘みを売りに来る。こちらは水分が無くパラパラしている。薄い塩味が付いており、蟻酸の香りもある。アリ同士に細い糸が絡んでいたりするから、ツムギアリの仲間であることが確認できる。小皿に一盛り1000リエルぐらいである。
 地方の観光地の食堂などでは、アリがスープ状になってナイロン袋に入って売っている。これを買って、ご飯と共に食べる。こちらも薄い塩味が付いており、成虫と白い卵が入っている。卵が沢山入っている方が、美味しい様だ。外国人向けのシェムリアップ(アンコールワットがある町)などでは見かけたことがない。
 他にも鍋に入れる料理があると聞いているが、食べたことはない。プノンペンのレストランに有ったと言うが、既にその店はなくなっている様だ。結構レストランも栄枯盛衰が激しい。

 アフリカなどでは、樹上生ではなく地下に巣を造るタイプを食べている。これは年に僅かに1-2日の期間だけで、雨期の始まりにやってくる。結婚飛行のために、脂肪分を貯めたのが羽アリになって出てくる。待ちきれずにそのまま食べることもあるし、簡単に炒って食べることもある。
 チンパンジーは、アリ釣りでアリ塚からアリを釣り出して食べる。また地上をぞろぞろと歩いているものに、竿を指し登ってくるのを口でしごいて食べる。うっかり体中を噛まれるのは好みではないようだ。結構長い時間楽しんでいるから、美味いのだろう。でもアリ食いをするのは、全体ではないから、アリ食いの文化はチンパンジーとヒトが分化する前の時代から起こったものではないだろう
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