時機が到来すれば独立させる朝鮮の項は適切であったが、千島列島を日本が武力で占領したと述べていた項は正確ではない。台湾の戦後の問題に関しては次のように書かれていた。
「日本が中国から盗んだ領土のすべて即ち満州国、台湾および澎湖島は中華民国に返還すること」
この三人の元首〔ルーズベルト、チャーチル、蒋介石〕は自分たちの便宜のため、都合の悪い事実は全く無視した。このように条約というものは彼等にとってはここでも一片の紙片にすぎなかった。
一八七五年、日本はロシアと慎重な会談を重ねた後、異議なく平和的に千島列島を獲得した(ロシアはこの時、引き替えに樺太半島をもらった。一九〇五年の日露戦争の敗北でロシアは樺太半島の南半分を条約で日本に割譲した)。朝鮮王国は一九一〇年日本に併合され、その時大英帝国もアメリカ合衆国も中国も日本の支配権を法的に承認した。満州国は疑いなく侵略によって奪取されたものだが、遼東半島と山東租借地はそれぞれロシアとドイツとの戦争に勝って一九〇五年と一九一四年にロシアとドイツから取り上げたもので、これに関する日本の立場はその当時英国からも米国からも異議なく承認されたものであった。今更「盗まれた」という泥棒呼ばわりをするには時機を失していた筈だ。北京は一八九五年の日清戦争の敗北で、台湾と澎湖島を条約に基づいて日本に譲渡した。
英国の駐清公使トーマス・ウェード卿とアメリカのかつての国務長官ジョン・フォスターはこの条約の生みの親のようなものであったし、また一九〇五年ロシア領の南樺太や遼東半島を日本が譲り受けた時セオドア・ルーズベルト大統領はこの条約締結の後見人であった。したがってカイロ宣言は、この三人の名士を窃盗の共犯であると暗に指していることになる。 (「第一部 ワシントン側の見解(一九四一~一九四五) 第一章 カイロ宣言」 本書53-54頁)
→「Cairo Communiqué」 (部分)
"The Three Great Allies are fighting this war to restrain and punish the aggression of Japan. They covet no gain for themselves and have no thought of territorial expansion. It is their purpose that Japan shall be stripped of all the islands in the Pacific which she has seized or occupied since the beginning of the first World War in 1914, and that all the territories Japan has stolen from the Chinese, such as Manchuria, Formosa, and The Pescadores, shall be restored to the Republic of China. Japan will also be expelled from all other territories which she has taken by violence and greed. The aforesaid three great powers, mindful of the enslavement of the people of Korea, are determined that in due course Korea shall become free and independent.
「日本が中国から盗んだ領土のすべて即ち満州国、台湾および澎湖島は中華民国に返還すること」
この三人の元首〔ルーズベルト、チャーチル、蒋介石〕は自分たちの便宜のため、都合の悪い事実は全く無視した。このように条約というものは彼等にとってはここでも一片の紙片にすぎなかった。
一八七五年、日本はロシアと慎重な会談を重ねた後、異議なく平和的に千島列島を獲得した(ロシアはこの時、引き替えに樺太半島をもらった。一九〇五年の日露戦争の敗北でロシアは樺太半島の南半分を条約で日本に割譲した)。朝鮮王国は一九一〇年日本に併合され、その時大英帝国もアメリカ合衆国も中国も日本の支配権を法的に承認した。満州国は疑いなく侵略によって奪取されたものだが、遼東半島と山東租借地はそれぞれロシアとドイツとの戦争に勝って一九〇五年と一九一四年にロシアとドイツから取り上げたもので、これに関する日本の立場はその当時英国からも米国からも異議なく承認されたものであった。今更「盗まれた」という泥棒呼ばわりをするには時機を失していた筈だ。北京は一八九五年の日清戦争の敗北で、台湾と澎湖島を条約に基づいて日本に譲渡した。
英国の駐清公使トーマス・ウェード卿とアメリカのかつての国務長官ジョン・フォスターはこの条約の生みの親のようなものであったし、また一九〇五年ロシア領の南樺太や遼東半島を日本が譲り受けた時セオドア・ルーズベルト大統領はこの条約締結の後見人であった。したがってカイロ宣言は、この三人の名士を窃盗の共犯であると暗に指していることになる。 (「第一部 ワシントン側の見解(一九四一~一九四五) 第一章 カイロ宣言」 本書53-54頁)
→「Cairo Communiqué」 (部分)
"The Three Great Allies are fighting this war to restrain and punish the aggression of Japan. They covet no gain for themselves and have no thought of territorial expansion. It is their purpose that Japan shall be stripped of all the islands in the Pacific which she has seized or occupied since the beginning of the first World War in 1914, and that all the territories Japan has stolen from the Chinese, such as Manchuria, Formosa, and The Pescadores, shall be restored to the Republic of China. Japan will also be expelled from all other territories which she has taken by violence and greed. The aforesaid three great powers, mindful of the enslavement of the people of Korea, are determined that in due course Korea shall become free and independent.