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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

須磨弥吉郎 『中共見聞記』

2009年01月19日 | 東洋史
 昭和29(1954)年の中国訪問記。撫順戦犯管理所がまだ稼働していた時期で、筆者を一員とする一行(日本諸政党の代表団)もここを訪れており、そのおりの記録も収められている。
 この時点で、中ソの同盟関係を、相互に利益があるから結ばれたのであり、相手をその自らの利益のために利用する目的で結ばれた便宜的な関係であり、つまりは同床異夢である以上、長くは続かないのではないかと見た眼力には敬服のほかない。中国革命は共産主義よりはナショナリズムによるものであり、また生活の安寧と善政とを求める一般大衆の願望がもたらしたものだと断ずる筆者の目は、なによりまず平明で曇りがないのであろう。願望や恐怖に引き摺られず、現実をありのままに判断する精神の強さということもある。

(産業経済新聞社 1955年2月)