くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ちゃんと話すための敬語の本」橋本 治

2012-09-14 19:41:52 | 言語
 図書室にちくまプリマー新書を五冊入れました。しかし、これがほとんどNDC816のものばかりになってしまい、こういうジャンルが好きなんだなと実感。言い訳すれば、書棚にその傾向のものが少ないんですよ。
 で、授業で敬語をやったので、橋本さんの「ちゃんと話すための敬語の本」から読んでみました。
 敬語とは親疎をも表す性質がある、というのはわかっているのですが、その背景には根強い身分制度があるからだと橋本さんはおっしゃいます。これが、聖徳太子の時代までさかのぼって語られる。(冠位十二階ですね) 
 さらに、身分が下の人は高い人に敬語を使わなければなりませんが、その逆は必ずしもそうとは言えない、というのが新鮮でした。謙譲だの丁寧だの気にしなくていいんです。敬語を使う必要すらない。
 言われてみれば、確かにそうです。
 また、橋本さんは、敬語をどのように使っていくかを、人間関係の中で一人一人が考えていかなければならないとしています。
 後半、人間関係についての話題がありますが。
 道を尋ねられたとき、ちょっと危険な人に声をかけられたとき、丁寧な言葉で返すことができるか。黙ったままだと変な子どもだと思われるし、タメ口だと仲間だと思われてしまう。また、タメ口は「ひとりごと」の側面も持っているなど、考えさせられることがいっぱいです。二人称なのに、「自分」「おのれ」など本来なら一人称であるはずの言葉が多用されるという話もおもしろかった。
 あとがきでは、なぜこの本を丁寧な言葉で書いたのかが説明されてあります。
 ところで、授業で話すときに電話を例に出したのですが、わたしが「リリーン、リリーン」というのに対して、生徒は「プルルルル」と言っていました……。世代の開きを実感。

「真実への盗聴」朱野帰子

2012-09-09 21:33:14 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 この表紙カバーから、てっきり警察もの、もっとはっきりいえば防諜ものだと思っていたのですが。
 まあ、確かにスパイ活動はしていますが、テイストとしては医療SFっぽい。わたしが読んだ中では、乾くるみの「スリープ」が近いように感じました。朱野帰子「真実への盗聴」(講談社)。おもしろかった。ぐんぐん引き込まれます。どちらかというと、このところ本腰が入らずにいたので……。
 この作品には、二十八歳の女性が三人称登場します。「私」こと七川小春、超天才でありながら人の心の機微に疎い石川千沙、新薬の被験者宮沢聡子。
 遺伝子治療の新薬として注目を集める『メトセラ』。サプリメントのように手軽に、寿命を延ばすことができる。
 ブラック企業に嫌気がさして仕事を辞めた小春は、『メトセラ』を開発しているアスガルズという会社の重役黒崎から、ある提案を受けます。子会社に派遣社員として入社し、秘密を探ってほしい。
 どうもそこには「秘密結社」があるようだというんですね。半信半疑ながら、アスガルズの正社員になるべく頑張る小春。実は彼女も幼いころに遺伝子治療を受けたことがあり、その影響かものすごく耳がいいのです。隠しカメラも内緒話も筒抜け、ということですね。
 こういう本筋に加え、背後には日本という国が背負っている問題を浮きぼりにしています。少子高齢者社会、年金制度、パラサイトといわれがちな若い人の苦悩と、将来の不安がさらけ出されるのです。
 秘密結社の内幕を知るには、組織の中に入らなければならない。そう決意した小春は、「赤い○」「緑の○」「青い○」と駒を進めていきます。協力者でありながら今ひとつ信頼のもてない海野との関わりや、千沙の様子なども気にかけながら。
 エンディングはすっきり。小春の旦那さんもいいよね。

このごろ読んだ本

2012-09-08 20:38:37 | 〈企画〉
 10月に新しい文庫が出ると聞いたので、読み返してしまいました。「百鬼夜行抄」十二巻まで。後半から四冊ずつさかのぼるという妙な読み方でしたが、つい次へ次へと読んでしまう。なんと、思っていた以上に、ホラーが好きなのかわたし。意外な発見をした気分です。
 読み返す前は、開さんが登場する前の方が好みだと思っていたんですが、そうでもなかった。テンションとしては同じように感じました。
 それにしても、四巻で大学に入った律。十二巻でまだ学生だった。司ちゃんがまだ三年生なんて意外(笑)。毎月立ち読みをしているんですが、ついかなり濃い密度で読み返してしまうのですよね。
 このところ忙しい毎日で、この本を読む時間もなかなかとれず。結局一週間かかりました……。その間に読めたのは、ほかには「くるねこ⑩」くらいかなー。ちょこちょこ目を通したものはありますが。
 あ、髪を切ったので女性週刊誌を少し。その日の夕食はトマトと長いもとアボカドのサラダ(タマネギをポン酢につけたのをかける)、フライパンで作るグラタン、キムチとのり佃煮をトッピングした冷や奴と、全部その雑誌で調達したレシピです。作ればある程度記憶に残るのですが、あとはどういうのがおいしそうだったか忘れてしまいました。
 このところどうも、文章を読んでも上滑りなときがあって、寄る年波には勝てないのかと……。
 ところで、「ワルガキ、生き霊を追って走る!」のポプラ社版を借りてみました。しかし、比較読みする気力がないのです。ちなみに香月さんのプロフィールには、本名まで書いてある(杉野史乃ぶ)。聖ミカエル国際大学の英語科卒とのこと。
 シリーズの他の作品も紹介してありますが、「ユーレイ屋敷の家なき子」って、ちょっとすごいタイトルですよね。誰が家なき子? お父さんを置いて出てきちゃったからか?(そう思うと、この本出版登場は安達祐実ちゃんが子役で活躍していた頃なんだろうなー、と妙な気分です)
 9月なのにまだまだ暑い。東北でこうなので南の方は大変でしょうね。この夏、祭り巡行だの運動会だので日に焼けまくっています。おばちゃんにはきついよ。でも、明日もまた運動会なんです。(雨が恋しい……)