くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「こいわすれ」畠中 恵

2012-07-09 05:30:37 | 時代小説
 噂には聞いていたのです。どうも出産に関わる悲劇があるようだと。でも、まさかこういうことになるとは。ため息が出ます。麻之助があまりにも不憫で。お寿ずの想いを考えると切なくてなりません。
 畠中恵「こいわすれ」(文藝春秋)。「まんまこと」かこいしり」の続編です。町名主の息子で知恵の回る麻之助は、初恋のお由有のことが忘れられないまま、友人吉五郎の親戚お寿ずと祝言をあげます。今回は二人の間に子供ができたことで、嬉しくてたまらない麻之助です。はしゃいで買い物に行ったり富くじを買ってみたり。
 その間もお寿ずは具合のよくない日が結構あって、麻之助は心配です。さらに、幼なじみから悪意のある噂を流され。
 お由有から、生まれてくる子供が女の子なら、息子のお嫁さんにぴったりだなんていわれて、ちょっと舞い上がってしまう場面もありました。
 でも、「こいわすれ」を読むと、これまでのことがいろいろと思い出されて、目頭が熱くなります。相手の名前を呼ぶということに着目する伏線がうまい!
 貞やおこ乃もちょくちょく登場します。大切なものを失ってしまった麻之助がこれからどうしていくのか、続きが気になりますね。
 忘れ草は好きな花なので、夏の喧騒の様子が伝わってくるようで、小道具だてのうまさもさすが。これは、庚申待ちや団子のエピソードにも言えます。しみじみとした短編は、細部がいいんですよね。
 



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