くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「甘いもんでもおひとつ」田牧大和

2014-05-26 20:45:01 | 時代小説
 あんこが大好きなので、こういう味わいのある物語に引かれます。
 田牧大和「甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺」(文藝春秋)。
 藍千堂は二人の兄弟が営む和菓子屋。もともとは父親の店百瀬屋の職人だった茂市が譲ってくれた店です。
 二人は叔父によって百瀬屋を追われ、その後も数々の嫌がらせを受けています。兄の晴太郎は菓子職人、弟の幸次郎は運営。上進物を中心に商っています。
 柏餅の季節。晴太郎はいつもの上等なものの他に、手軽に味わえる四文程度のものを売り出してみたいと言い出します。
 幸次郎に渋い顔をされながらも、なんとか完成しそうなある日、柏の葉が百瀬屋に買い占められていることが発覚し……。
 登場人物たちが非常に魅力的で、田牧さんの作品の中でも印象に残るものだと思います。まず、茂市。店を兄弟に明け渡し、自分は一介の職人に戻る。できることではありません。でも、彼のつくる羊羹は一味違うらしいです。あるご贔屓筋は、いっぺんに一竿いけるそうです!
 ことあるごとに笑いをかみ殺している姿が微笑ましい。
 百瀬屋の一人娘お糸もかわいい。父の企みをいち早く察して、兄弟に教えに来てくれます。田牧さんは、男二人女一人のパターン多いような気がしますね。
 で、わたしが心引かれるのは、雪姫様ですねー。「氷柱姫」ともあだ名されるクールビューティー。腕もたつし、性格もまっすぐです。
 この姫との縁談を持ちかけられたのが、松沢荘三郎。こちらも青竹のように爽やかな方です。
 お互いに引かれあう二人。人によってはおてんば娘を押し付けられると感じる人もいるんだそう。ものの見方はおもしろいですね。
 創作和菓子も非常においしそうで、わたしとしては「桃代桜」もくずきりもいいですが、焼きたての金鍔をご馳走になりたい! と思うのでした。

 さて、本日でブログ開設から二千日だそうです。早いものですね。あの頃担任していた生徒たちも、もう大学生です!
 これからも地道に読んでいくつもりです。よろしくお願いします。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿