くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「図書分類からながめる本の世界」近江哲史

2011-05-18 20:49:03 | 総記・図書館学
著者は、本を「読む本・おもしろい本・9類」と「調べる本・役に立つ本・その他の類」に分けて考えるそうです。
さらには、前者を「読書・アナログ」「ゆっくり味わって最後までこだわって読むべき」、後者を「図書・ディジタル」「速読も可、飛ばし読みも差し支えない」と語ります。
この方は分類学から発展して図書のNDCに目を向けるようになったそうですから、そういう考え方もむべなるかなとは思いますが、分類で読み方を変えるわけではないわたしには、その部分がちょっと疑問。
でも、不満があるわけではないのです。楽しかったし、役に立つ。自分で一冊欲しいほどです。巻末にNDCの一覧がついているのも便利。
「図書分類からながめる本の世界」(日本図書館協会)。図書館実践シリーズの一冊です。著者は近江哲史さん。
NDCの分類に従って、図書館の本を実際に読みましょうという講座を書籍化したもののようです。
ですから、当然0類から始めて9類まで、近江さんが読んだ本を紹介しながら代表的な分類を学んでいくのです。
三色ボールペンあり漬け物あり文法あり家系図あり聖書あり囲碁ありオカリナあり薬あり……。
わたしとしては、9類(文学)にこだわらず様々なジャンルを読もうと思っているので、このような試みは興味深いものを感じます。
図書の仕事をしていると、9類を借りる人が圧倒的に多いのもよくわかります。ただ整理してみると、他の分野にも意外と読みものに近い書籍も少なくない。
例えば斎藤美奈子の仕事などは、文学批評(0類及び9類)、社会科学(3類)、歴史調査(2類)というようになるのですが、どれも文章としておもしろい。
でも、こういう類別の読み方をするのは、「読書家」の方でも珍しいようです。というよりも、あんまりNDCを意識して読む人はいないですよね。普通の本屋さんではそういう分類はもっとおおまかだし、読む方も作家読みが多い気がします。
最もうなずかされたのは、「ヤングアダルト」の取り扱いです。中学生に向けた本は、書架でも出版分野でも少ない。本を読むことで将来の夢を育んでほしい世代に、このような本をと奨める幅が狭いということですよね。
近江さんは星新一をはじめとして、何点か紹介してくれます。とくに自分についての劣等感や、未来への漠然とした不安を取り上げているのが特徴ではないかと思われたようです。
中学生に向けての書架づくり。わたしの課題でもあるので、日々模索しています。
いろいろと刺激になりました。図書館実践について、こういう視点もおもしろいですね。

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