くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「消しゴムは嘘を消せない」白河三兎

2015-02-17 04:20:01 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 読み終わって、どうして「タマ」が「俺」のマンションにやってきたのかが浮き上がります。
 彼女は、「俺」が離婚したことを知らなかった。
 組合からの逃走で、最も頼りになる人として、近藤加奈子を選んだのでしょう。
 なぜ彼女は、組合から逃げなければならなかったのか。
 その事実がわかったとき、孤独と絶望がくっきりと立ち上がる。でも、そのときにはもう、彼女は妊娠しているので、苦しみのあとにくる希望に救われる。
 彼女が誰なのかは、比較的早く見当がつきますが、だからといっておもしろさが失われるわけではありません。
 
 「俺」こと有田信彦は、この日離婚したばかり。でも、なぜか部屋に人の気配が。
 どうも透明人間がいるらしい。
 超能力で人やものを消すことができる彼女は、組合から逃げてきたのでかくまってほしいと言います。彼女を「タマ」と呼ぶようになった「俺」は、共同生活を始める。
 離婚した妻の加奈子は同僚で、二人の違いを感じながら暮らすことになります。
 「お帰り」を言ってくれるタマ。「お金」と言わず「金」という加奈子。
 息子の悟との関わりや、カウパレード、手づくりのベーコン、組合の追手などのエピソードが積み重ねられていて、おもしろい。
 タマが選んだ道に、思いをはせる「俺」にしみじみとした気持ちになりました。
 一家と彼女が再会する日が来ますように。

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