くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「僕の父は母を殺した」大山寛人

2013-12-01 09:14:15 | エッセイ・ルポルタージュ
 なんというか、世間はこれを非常に重く受け取るのではないかと感じました。本人の言葉以上に。
 著者の大山寛人さんは、自分の思いを整理してここまでまとめたのであって、もっとずっとかなり大きく、胸の中にしこり続けているものがあるのだと思います。
 「僕の父は母を殺した」(朝日新聞出版)。一度本屋で見かけたのですが、今日は図書館から借り出し。一気に読みました。
 小学六年生の深夜、寛人さんは夜釣りにいこうと誘われます。父の車の助手席にはうたた寝しているらしき母。
 しかし、母はそれ以前に殺害されていたのです。
 父は母の死後自暴自棄のようになり、ふらりと出ていって帰ってこない。家は売り、一人残されてお金も底をつく。借金取りのような人もくる。そして、父が詐欺で捕まり、母をも殺していたのだと知るのです。
 寛人さんは非常に荒れ、学校にも行けなくなります。
 しかし、父の死刑が決まりそうだということを知り、面会に行ったことから、家族としての絆を取り戻していく。
 証人として法廷にも行きますが、判決は覆りません。
 読んでいていちばん感じるのは、このお父さんの「幼さ」ですね……。寛人さんは二十五歳とのことですから、お父さんはわたしより少し上の年齢だろうと思うのですが、義父に対する考え方や、保険金が他の人の手に渡ったことで怒った妻と離婚したくないからと殺してしまい、海に落として偽装するなど、なんというか。会社経営していて羽振りが良かったころは年三回も車を買い替えていたとか。
 寛人さんの年齢を考えると、自分の教え子のどの年代かがイメージされます。まだ、ついこの間中学生だったのに。
 地元では誰もが事件のことを知っており、殺人犯の息子と噂される苦しさを、誰も知らない名古屋で暮らすことで払拭できたのに、あえて、自分の境遇を語るのは、勇気のいることです。
 講演やパネルディスカッションもされているそうですが、中に「弟を殺した彼と、僕」の原田正治さんのお名前があり、心揺さぶられました。活動を続けてらっしゃるのですね。
 死刑とは。犯罪被害者家族とは。そういうことを考えさせられます。
 寛人さんは、加害者家族であり被害者家族でもある。争いの悲劇は、家族間で起こることが多いもの。第二の自分のような人を作ってほしくないというのです。
 刺激的なタイトルではありますが、これしかないようでもある。人と人との関わりをも、考えさせられます。