くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「社会の真実の見つけかた」堤未果

2013-12-04 22:10:33 | 社会科学・教育
 アメリカで。
 戦争に駆り出されていく青年たちの背景を、社会情勢、メディア、教育、選挙といったキーワードから探っていきます。
 9・11のあと、テロリズムという「敵」に向かって突き進んだ青年は、戦争を終えて大きく傷つきました。ディズニーやハリウッド映画を通じて、「わかりやすい善と悪」に慣れてきたアメリカの若者は、メデまィアによって「敵」を与えられたのです。そのときは疑問を差し挟む余地もなかった。情報を鵜呑みにしている間に法律は変えられ、戦争にお金がかかるから社会保障は削られて税金がとられる。大学に行きたいけれどお金はない。(アメリカでは学費は自身が払うシステムなので、学費のために借金が増える形になるようです)
 そんなときに軍のリクルーターがやってきて、言葉巧みに説得します。「きみには、夢をかなえる価値がある」。入隊すれば学費は免除、ボーナスももらえる。それに乗せられてしまう彼らは、次々と戦地に送られることになります。
 教育現場では、学習標準をクリアしないクラスがあれば、学校全体が不可とみなされ、教師は厳しいノルマに追われています。このテスト、四年間不可であれば廃校か民営化になるのだそうです。
 でも、教育ってそんな即物的なものではないのです。「落ちこぼれゼロ法」とのことですが、テストで点数を取ることのみを目標にした子どもたちが、社会で独り立ちしていけるでしょうか。
 テストがメインになるため、試験項目でない教科はなおざりにされます。体育がなくなり、肥満が増えたそうです。く
 このような話を聞くと、ため息が出てきませんか。わたしは「今に実技教科に復讐される日がくるぞ」と思ってしまいます。(斎藤美奈子さんの受け売りですけどね)
 手先を使うことに慣れていない子どもが増えたと思います。包丁で野菜の皮をむけない。刺繍糸をほぐして三本どりにできない。糸通しを使わないと針に通せない。糸先をなめて通した子に「不潔」だという。
 いや、これはわたしの見てきた例です。学校現場で実技教科が減ったために、生活力が摩耗しているのではないかと思うのです。
 戦地から帰った若者は、自分が信じていた正義はつくりものだったと気づきます。
「世界には憲法で戦争を放棄している国もあったんだってことを、ぼくは世界から帰ってきて初めて知ったんです」
 と言った青年の一言。現在憲法9条を変えようとする動きに、わたしは反対しているのですが、この本を読んでますますその思いを強くしました。
 ちなみに、学業が振るわない生徒には軍のプログラムをやらせるシステムがあって、そちらからも入隊に傾く子どもがいるそうです。
 二重三重のたくらみが感じられますよね。 
 それを、ネットなどを手段にしてうちやぶる学生も出てきてほッとしました。