くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「命のバトン」堀米薫

2013-05-20 21:23:13 | エッセイ・ルポルタージュ
 図書館に三回行ったけどずっと貸出中だったので、たまりかねて注文しました。堀米薫「命のバトン 津波を生きぬいた奇跡の牛の物語」(佼成出版)です。五月に入ってから堀米さんの本を読み続けていますよね。
 東日本大震災で宮農の校舎が壊滅的被害を受けたことはニュースで幾度となく目にしました。生徒は分散してよその高校に間借りしながら授業を受けたことも。その一校の校長は、わたしの恩師。
 あの震災で、たくさんの命が失われました。津波がくる、と知ってなにかしらの策を講じる隙はほとんどなかったと思うんです。わたしは内陸に住んでいますが、多方面からその被害の様子は耳にしています。昨日、子どもたちがおじいちゃんに南三陸まで連れていってもらいました。
「まだ瓦礫がたくさん残ってた!」と言っていましたよ。
 宮農の先生は、牛舎に戻って牛の留め具(スタンチョン)を外し、必死の思いで高台の鉄骨によじ登った。牛はあちこちに逃げて、ビール工場や町の人に保護されていたそうです。
 牛の血統を途絶えさせてはならない。そんな思いが随所に感じられました。
 作品の冒頭には、家畜とはペットではないという話と、鶏を解体する授業について書かれています。食べるということは、その命を自分の中に受けていくこと。
 宮農で救出された牛は、「共進会」というコンクールに出場することになります。牛にも「美人」がいるんですよ。以前ポイントを教えてもらいましたが、わたしには見分けられませんでした……。(てんぐすびょうも今でもわかりません)
 実はわたし、数年前にこのコンクールを見に行ったことがあります。本を読んでいて思い出しました。
 で、ここで優秀な成績を収めた牛が産んだ子供が、次の年のコンクールでグランドチャンピオンに輝いたのだそうです。この作品の中心になっている陽子さんが、自分の名前にちなんで「サニー」と名づけた牛。
 活躍した生徒に子牛の命名権を与えるというシステムがおもしろいですね。野球部の生徒がつけたから、「ラミレス」という牛がいるそうですよ。