くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「掌の中の小鳥」加納朋子

2012-04-17 21:43:50 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 四月上旬、大会あり授業参観ありで休みがなかったわたし。やっと代休、と思ったら読む予定の本を職場に忘れてきてしまい、ちょっとがっかり。また来週は子どもの参観日と部活なのに……。でも! わたしには買い置きの文庫があったことを思い出して、早速読み始めました。加納朋子「掌の中の小鳥」(創元推理文庫)。
 加納さんのヒロインって、おっとり駒子タイプか勝ち気な陽子タイプが多いかと思いますが、これは後者ですね。赤いドレスが似合う穂村紗英。高校生の頃に理不尽な校則に抗議し、不登校になります。彼女の葛藤をゆるやかにほどいてくれたおばあちゃんの思い出話に隠された真実を解き明かした冬城圭介と親しくなっていきます。
 二人が訪れてゆったりとした時間をすごすのが、〈エッグ・スタンド〉という洒落た店。季節に合わせた花が大胆なアレンジで飾られ、女性バーテンダーは小粋なカクテルを作ってくれます。わたしはお酒はあんまり飲まないんですが、こういうお店、行ってみたいですね。上野公園から切ってきたようなみごとな枝ぶりの桜とか(花屋さんで買ったそうです)、アバンギャルドなヒマワリ、チューリップの花束、ススキの穂なんかが飾ってあるの見たいなあ。常連客も皆さん個性的ですし。
 パターンとしては、紗英が持ち込んだ日常の謎を圭介が解く感じで、駒子と瀬尾さんの関係を彷彿とさせます。幼なじみの武史との関わりがいいですね。頭が切れるのに友達が少ない武史が、信頼できるパートナーと結ばれる「できない相談」が好きです。
 「エッグ・スタンド」では二人の甘やかなラストシーンも楽しい。みちるさんの気持ちが甘苦しくてたまらないですね。
 小説を読むときはタイトルのことも考えるべきですよね。小鳥の生死を掌に握り、賢者を出し抜こうとした子どもの寓話がモチーフとなっていますが、ここではなんとか孫の悩みを解消したいと考えるおばあちゃんが登場します。彼女の掌に握られた碁石のトリックは予想がつきやすいですが、やはりこの短編が二部構成になっているところも注目すべきでしょう。前半は、圭介と佐々木先輩との再会が描かれます。佐々木の妻容子は圭介の友人で、画家としての才能を持ちながら、ある事件のために筆を折ります。
 「雲雀」と題した油絵。完成後に四隅をクリップでとじてしまい込まれ、しばらくして見るも無惨な絵として発見されるのです。絵を汚した犯人は? 
 容子が留守電に残したメッセージ、この絵と自分を重ねているのでしょうね。毎日少しずつ殺される。雲雀になれなかった。圭介の見る自分と佐々木が見る自分。どちらを選ぶのかきっかけがほしかったのでしょう。しかし、選んだ方を後悔している。
 容子に対して、紗英は潔いですね。この文庫レーベルらしいおもしろさでした。