くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「『守り人』のすべて」上橋菜穂子

2012-04-23 21:50:22 | 書評・ブックガイド
 図書室にこのシリーズを揃えたので、ガイド本も買ってみました。上橋菜穂子「『守り人』のすべて」(偕成社)。
 何度か書きましたが、本校図書室、非常に品揃えが悪く本棚も少なく、学習空間としての使い勝手も悪い。今年は委員会も担当できるので、表示をつけたり並びを替えたり学級文庫を始めたりと、正面切って改革に乗り出してみました。
 ちなみにこのシリーズも、「蒼路」で止まっていました。担当がころころ変わって継続購入していなかったのですね。
 今回「炎路を行く者」を読んで、シリーズ全体を読み返したいと思ったのは、多分わたしだけではないはず。そんなときの復習にも役立ちます。
 全体のあらすじと人物紹介、用語解説、各国の情勢といったところや、佐藤多佳子さんとの対談、関わりのある方々からのメッセージなども収録されています。佐藤さんとの対談は初出の雑誌で読んでいるのですが、お二人の熱のこもったお話についにやにや。お互いの作品を読み込んでいるあたりが合評会みたいだったり、共有するバックボーンに肯かされたりします。
 「炎路」についての話題もありましたよ。「下町のしょーもないガキだった頃の話なんだけどね」だって。
 でも、この本でわたしがいちばんおもしろく読んだのは、平野キャシーさんとの対談でした。「守り人」を英語圏に紹介すべく尽力するキャシーさん、編集のシェリルさんと、メールでやりとりしながらの作業のお話がとにかくおもしろい。上橋さんが自腹を切ってでも翻訳をお願いしたいと決意するときに、偕成社が協力を申し出てくれる。日本語と英語の言葉感覚の違い。トロガイが女であることを隠しておかないとチャグムが驚くシーンが活きてこないから、「master」と呼ばせることにしたけれど、男性を表す形容詞だから「ヤクーは、たとえ女性でも、すぐれた呪術の技を持っている者はマスターと呼ぶ」という注釈を入れたという話とか。
 また、「気」という言葉には文化的な概念が強いので翻訳には使いたくないというお話も納得でした。(それなのに「レコ」はいいのか?? とも思いつつ)
 短編「春の光」もいいですよ。タンダとの穏やかな暮らしが見える。どうしても養い親のジグロがクローズアップされてしまう中で、バルサに自分の父親の記憶が残っていることも、なんとなくうれしい。
 ところで、先日新聞に「バルサ敗れる」とかいう見出しがあって驚いたのですが、サッカーのバルセロナチームをそう呼ぶのですか? すみません、世間知らずで。
 「闇の守り人」は読み返したいと、現在痛烈に思っております。