くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「うさぎパン」瀧羽麻子

2012-04-12 21:06:18 | 文芸・エンターテイメント
 この人の本を探しに行きたいなー。と思わされる作家はいいですよね。瀧羽麻子さん、なかなか気に入りました。でも本を探しに行く暇かない。今週参観日だし、代休は図書館やってないし。 
 「うさぎパン」(幻冬舎文庫)です。多分ダ・ヴンチ文学賞をとったとき、本誌を購読していたと思うのですが、きっと読んでないんですね。もったいない。もっと前に出会いたかったな。
 義理の母親ミドリさんと暮らす優子は、家庭教師の美和ちゃんと仲良くなります。同級生の富田くんと「パンが好き」という理由で親しくなり、彼の父親の店「アトリエ」やさまざまなパン屋さんを一緒に訪ね歩きます。ある日、なんと美和ちゃんに死んだ母親の聡子が乗り移って……。
 ……あらすじだけ書くと結構荒唐無稽ですね。でも、さわやかでほのぼのとした雰囲気で、楽しめました。
 死んでからもなお、夫との恋愛を大切にしている聡子。ミドリさんが当時彼の愛人であったことを知っていても、思いがぶれることがないのです。さらに、聡子の口からは意外な真相が語られ、うさぎパンの温かさ、再現してくれた富田くんの優しさとともに胸に染みます。
 同時収録の「はちみつ」は、美和ちゃんの幼なじみ桐子が主人公。半年間べったりだったはずの恋人が出ていき、食事をとろうとすると吐いてしまうという状況が続きます。美和ちゃんからは「喪に服す」と言われ。特に好きだったパンが食べられないのですよね。なんとか打破したいと思いながらも、体調が戻らないのはやはり彼女が「恋愛体質」だからなのかも。
 ここでもおいしそうなお弁当が登場するんですよ。教授が持ってくる手づくりのお弁当。肉のしぐれ煮、だし巻き卵、かぼちゃの煮つけ、プチトマト、ブロッコリー、おにぎり三種。次の日のちらし寿司もいいよねぇ。新しい世界が開けるような感じを覚えた桐子の今後を予感させるところが好きです。