くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「かがみのもり」大崎梢

2011-07-16 09:55:22 | YA・児童書
新任の中学校国語教師・片野厚介は、教え子の笹野と勝又からきらびやかなお宮を見つけたと話されます。そこは立入禁止の山の洞窟で、花鳥風月を象った金の彫刻や狼の像があり、冒険を夢見る二人はすっかり魅了された様子。
ブログに発見の経緯を綴るうちに、うろんなメールが入ってくるようになります。それは十数年前に近隣で我が物顔に振る舞った新興宗教の一派で、どうやら再び息を盛り返すつもりのようで……。
大崎梢「かがみのもり」(光文社)。なぜこの題名がひらがななのか、なんとなくわかります。
主人公の厚介は自転車通勤。教科書や辞書も持ち歩く律儀な人です。(この鞄、結構重要)
隣県の神社の三男という設定で、わりと一般の人が知らないような知識をもっています。お宮の細工の写真や造りで、即座にどんなものなのかわかり、専門用語も把握している。
神とは何か。そのようなことも含みながら物語は展開し、大崎さんらしい大団円を迎えるのです。
ヒーロー志望の中学校男子二人はもちろん、宮司、娘のひろ香、他校生で教団関係者の娘らしい「レオナちゃん」、同僚の先生方(副校長もいるので結構大きい学校のようです)、そしてふとしたことで知り合った調査員の与木。
主人公よりもこの与木の方が、実は恰好いい。クールガイです。でも、なにやら秘密がありそうな。
ひろ香の祖父が騙されて売ってしまった奥宮。「レオナ」の父親とは。隠されていた箱に何が入っているのか。彼女に近づく浅黄の目的は?
様々な謎が絡み合い、スリリングな物語が展開します。その中で厚介は、結構真面目に6時間めまで授業をしてからトラブルに巻き込まれたり(笑)。
この実生活と地続きのリアリティがいいですね。
エンディングは夏休み前の期末テストと、季節感もちょうどよく、爽快でした。
現在と過去の重なり合いや、二人の少女とその父親の思いが、とても心に残ります。