くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「夕暮れのマグノリア」安東みきえ

2011-07-11 08:01:30 | YA・児童書
しっとりとした優しい物語でした。安東みきえ「夕暮れのマグノリア」(講談社)。
中学一年生の灯子の視点で、彼女の周囲の大切な人々とともに巡り会った不思議を語ります。
これ、何かに連載されていたのでしょうか。奇数月ごとに前回のお話のラストに登場した人物とのエピソードが紹介されるのです。
例えば、二話「循環バス 凜さんとのふしぎな七月」。凜さんはこの話では中心人物ですが、一話の最後でエレベーターに乗っていく姿が描かれています。同様にこの話の最後に車窓越しに見える友人の千夏が、次の話のキーマンになります。しりとり形式ですね。こういう構成大好きです。
とくにおもしろかったのは、「黒森の宵祭り 関田くんとのふしぎな十一月」ですねー。初恋ものとしてよくできていますし、お祭りの舞台設定がきいています。
凜さんから、おたふくかぜをひいた子の代役として獅子舞の「藤の木」を踊ってほしいと頼まれた灯子。特訓の結果、なんとか一日で形をつけますが、メンバーの中に憧れの関田くんがいることに気づいて……。
とってもかわいいのです。お囃子の調子と獅子の躍動が目に見えるよう。うちの地区も明日からお囃子練習が始まるのですが、メンバー構成って大事ですよー。笛の子がまとまって卒業してしまい、その子たちが助っ人にくるまではまともに吹けるのは一人しかいない状況です……。
灯子の経験する不思議は、怖いときもあればうっとりするほど美しいこともある。
リュウグウノツカイに乗って現れるおじいさん。理科室で、今でも生徒が不正なことをすると悲しむ熱血先生。なだれで亡くなった登山部の生徒たち。おばちゃんのことを見守る、おじちゃんの優しい目。
幽霊、というよりはこの世とあの世が重なり合う感じでしょうか。あわいをのぞくような、森閑とした美しさ。
やっぱりいいですねー。白木蓮の花を見たくなってきました。