くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「伽羅の家」上杉可南子

2010-05-22 04:56:16 | コミック
高校生のころ、友人に貸してもらった上杉可南子の「うすげしょう」。傑作でした。もう一度読みたいのです。妹が買い直したのに、その後捨ててしまったらしくて。「はるしげ」という寺の息子との恋物語、忘れられない。
最近の上杉さんはライトなコメディーものが主流になっていますが、重厚な短編を書かせたら本当に文学的ですばらしいのです。これ、復刊してくれないかなー。古本屋で探しているんですけどね。
で、本屋に行ったら発見したのが「伽羅の家」(小学館)です。ピンときましたね。これは、あの作品を継ぐ系譜だ、と。
もう十五年以上前の作品を集めたものだそうです。表題作のほかに「四辻の社で」「蛍の火」「葵の上」「水の女」を収録。どれも独特の雰囲気があって、読ませます。
どれかひとつ、といわれれば、「四辻」をあげるかと思います。地主の息子朝と生家が没落して一人くらす兼穂。二人の間には幼なじみの喜和の存在がありました。
あるとき、村はずれの沼から喜和の遺体が見つかり、間もなく兼穂が村からいなくなります。
そのあたりのことを、淡々と描いていく筆力。すごい。
美しく痛ましい。そして、切なく愛おしい。上杉さんの美の世界が展開されています。やっぱりいいわーこの作品世界。
……子供の運動会なのに、つい読んでしまいました。もっと同じ傾向の作品があるのではないでしょうか。読みたーい。
こういう作品を描く人って、ほかにはいないような気がするんです。
しんみりと麗しい上杉可南子作品、是非復刊希望。