くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「リリース」草野たき

2010-05-02 13:04:53 | YA・児童書
小杉! この小説の胆は、彼のような気がします。たいへん魅力的な人物がいろいろ出てきますが。仲間を得たいと感じる彼の思いが、不器用ながらも光ってる。
あとは真野くんのサポートぶりとか、篠田さんのかわいいけどちゃっかりしているところとか、いいですね。
草野たき「リリース」(ポプラ社)です。中学二年後藤明良の夏を描いています。
明良が誕生した日に、医者だった父は交通事故に巻き込まれて亡くなりました。その遺志を継ぐと期待されて育った彼は、中学に入学するとバスケ部に入ります。父がかつてインターハイに出場したから。すっかり夢中になった明良は、医者になるよりも、NBAの選手になりたいと夢をもつようになるのです。
しかし、出場一回戦負けのチームでは、明良の夢は果たせそうにありません。
そんな中にバスケの強豪校から小杉が転校してきます。彼とならコンビプレーができる。張り切って練習するのですが、キャプテンとして最低だ、と小杉から言われてしまうのです。
しかも、尊敬する兄の秘密を知っているという女の子が現れて……。
これまで順風満帆。自分はなんでもできると信じてきた少年が、成長の中で感じる違和感。大きな挫折と誤解で、これまで気づかずにいたことが次々とあらわになっていきます。
リリースとは「解放」を意味する題ですが、明良だけでなく、兄も、母も何者かから解放されていく。
看護師として働く母の潔さ。新しい道を歩こうとするおばあちゃんの決意など、周囲の一人ひとりが存在感をもっていて、読むと元気になれる気がする。さすがは草野たきです。
今度、中学生主人公の本を特集しようと思っているのですが、これもリスト入りですね。