くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「僕は坊さん。」白川密成

2010-05-05 06:01:12 | 哲学・人生相談
お坊さんたちが何人か揃って食事に行ったときのこと。店員の女性に、
「どうしてみなさん、同じヘアースタイルなんですか?」と言われ、年かさの僧侶が顔色ひとつ変えずに、
「僕たち、全員、野球部なんです」と答えたというエピソードにうけてしまいました。
さらに、お坊さんの野球チームは本当にあって、その名も「ナム・スターズ」。いいなあ、このセンス!
白川密成「僕は坊さん。」(ミシマ社)です。やっぱりお坊さんの生活、気になりますねー。気がつくと、去年から寺ものを四冊も読んでいます。あともう一冊買ってある。
剃髪用のバリカンのエピソードも好きです。発注しようとカタログを見たら載ってなくて、直接業者に注文。(カタログにあったという位牌用のプリンターとか正座が楽になるという足袋とかが可笑しい)
早速使ったら痛くてしょうがないので問い合わせたら、
「あなたは、プロですか」と聞き返され、ではプロとは何者かというと、散髪屋さんのこと、らしい。で、散髪屋さんにマイバリカンを持ち込んで使ってもらったそうです。やっぱり、プロにまかせると心地よく感じたのだとか。
住職になったとき、彼は24歳。四国八十八ヶ所霊場の五十七番札所・栄福寺を継ぐことになったのです。
仏教について様々な視点で語る白川さん。とても身近に捉えていて、おもしろいと思いました。オリジナルブランドを立ち上げたりアーチストの歌にもひらめきを感じたりするのに、寺の建て替えでガラス戸をサッシにしようと言われるとやっぱり木にこだわったり。
なんというか、様々な事象に宗教を感じていることが伝わってきます。
わたしたちは同じように物を見ているつもりでも、自分というフィルターを通して見る世界は恐らく一人ひとり違うのです。白川さんが聞いた歌をわたしが聞いてもこういうふうには考えられない。
それを誰かに伝えようとすると、わたしの視点とほかの人の視点では、ディテールに差が出てくる。それがおもしろい。
自分の根底にあるもの、白川さんなら仏教、わたしなら言葉でしょうか、それにつながる部分に近いものの見方をするのだな、と感じさせられる一冊でした。