ポポロ通信舎

(旧・ポポロの広場)姿勢は低く、理想は高く。真理は常に少数から・・

『拉致問題を解決できない理由』を読んで

2009年08月18日 | 研究・書籍
安倍内閣発足時に「拉致担当大臣」を置いたにもかかわらず一向に進展を
みせない「拉致問題」。
すでに小泉訪朝から2400日以上もたってしまった。
『日本が拉致問題を解決できない理由』荒木和博著を読んでみました。

特定失踪者問題調査会の代表である著者は、
「拉致」とは何か、なぜ解決できないか、どうやって取り返すかを自身の
運動の経験から縦横に考え、分析しています。

拉致問題対策本部の年間予算は5億円。担当大臣は一時、中山恭子(現首相
補佐官)が就任した。政府発行のパンフレットを作成した時のエピソードが
紹介されている。

「忘れられないのは、情報を寄せる窓口をパンフレットに載せるかどうかで
議論になり、その結果、載せないことにしたという中山補佐官の言葉だ」
せっかくのパンフに「情報提供のお願い」を書かないで印刷しようとする
神経を嘆く著者に、そういう気合いの入っていない形だけの対策だった
のかと妙な納得をしてしまった。

中山恭子氏は、群馬の前橋女子高の出身で東大仏文卒。夫とともに華麗な
大蔵官僚の道を歩まれた方。てっきり上州生まれかと思ったら、それは
ちがっていた。

控え目で穏やかな感じの経歴同様、エレガントな女性。こういう人が意外
に山を動かせるのでは、と大いに注目した。彼女が参議院議員に当選した
のも国民の大きな期待があったからだと思う。

政府の独自調査で判明した事例は、特筆するものは何もないようだ。
ひたすら「北朝鮮の心変わりを願う」待ちのスタイル。
「日本政府の力で奪還する」という強い決意と意志が示されていない。

絶好の外交カードになるはずの「金正男不法入国」の一件も、当時の田中
真紀子外相だけの責任だったのだろうか。当時も拉致被害者救出を考え、
なんとか拘留を延ばそうとする気概を持った政治家、官僚が見当たらなかった。

拉致問題は、最高責任者の総理大臣をはじめとする政治家、外務省など官僚、
ジャーナリスト、そして日本国民が勇気を持って取り組まなければならない。

なかなか説得力のある運動実践者による報告の書でした。



【著者】荒木和博
 あらき・かずひろ 昭和31年東京生まれ。慶大(法)卒。民社党全国青年部
副部長、拉致被害者の支援組織「救う会」事務局長を経て特定失踪者問題調査会
代表。拓殖大海外事情研究所教授。



日本が拉致問題を解決できない本当の理由
荒木和博
草思社

このアイテムの詳細を見る
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 農大二高、粘りでまず1勝 | トップ | 迷惑メールをかき分けて »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

研究・書籍」カテゴリの最新記事