参議院議員を経験した山田譲氏の著書『センセイと言われるほどの馬鹿になり』を読みました。1988年12月初版、かや書房の発行。さすがのアマゾンにも在庫はなく今では貴重な本となっています。群馬県立図書館ではストックがありますので借りられます。
慎ましかった山田貧乏議員
山田譲さんは実直な人でした。著書の表紙には、議員歳費の内訳である「昭和61年6月分支払明細書」がそのまま転載されています。差引支給額は376,847円也。本文の中で国会議員の懐具合をさらにオープンに語られています。月末に別途、文書通信交通費が追加されるものの私設秘書費、慶弔、東京事務所費などの多くの支出を差し引くと約27万円が最終的に手元に残り山田家の家族3人の生活費になっていたといいます。一見、収入は多いものの支出も多く貧乏社会党議員の実態が伺われます。
官僚は社会党に冷たかった
全野党、全労働団体から請われ、役人から革新陣営へ移ってこられた山田譲さんでしたが、古巣の官僚組織は社会党嫌いが多く、本省からは山田には一切近づいてはならぬ、とのお達しがあり旧同僚の局長以下幹部職員とは絶縁状態になってしまった。ただある若手の優秀な課長がこっそり「山田さんが議員になられて今迄、はるか遠い存在でしかなかった社会党がぐっと身近に感じられるようになりました」といわれ著者は涙が出たと・・。
国会内では、与野党を問わずお互いを先生と呼び合う。しかしマスコミがカタカナで「センセイ」と書く場合は間違いなく冷やかし。自分が偉いがゆえに先生と呼ばれているとふんぞり返っているうち、いつの間にか程度の低い人間に成り下がっていることにさえ気がつかなってしまう、つまりセンセイと言われるほどの馬鹿になり、と自嘲する山田さん。なんでも正直に話される著者山田譲議員の謙虚で初心を忘れない人間性が随所に感じさせられる“証言本”でした。
全野党、労働団体が一丸となって推す「山田譲方式」選挙をもう一度やってみたいものです。
山田譲(やまだ ゆずる 1924-2012)群馬生まれ。東大(法)ー自治省ー群馬県労働基準局長ー革新統一候補で知事選ー群馬地方区から参議院議員(社会党)1期。