「普天間」交渉秘録守屋 武昌新潮社このアイテムの詳細を見る |
私は守屋武昌さん(元防衛事務次官)を誤解していたようです。
鈴木宗男さん、佐藤優さんについて正確な知識を持ち合わせていなかったことによる理解不足の時と良く似ています。
守屋武昌さんといえば、贈収賄事件のイメージが強く、好ましくない官僚と思っていました。しかし7月発刊した「普天間交渉秘録」を読み、基地返還交渉の仕事を粘り強く行った広い防衛構想を持つ有能な事務方官吏と認識を改めました。
著者は短命になった鳩山内閣について「(普天間基地の)これまでの経緯や現状を知る政府関係者が余りに少ないことに驚いた。マスコミも同じことだった」として黙していることを是としない気持ちになったようです。
普天間移設についてもすでに辺野古周辺とはいえ8つの案が検討されていたのには驚きです。
当初、著者ら防衛庁側は海を汚すことの無い「キャンプ・シュワベ陸上案」を主張。しかし外務省は米国側とともに、陸上案ではなく埋め立て方式を。
著者、守屋さんは、沖縄の政治家や経済界の二枚舌を批判しています。同じように国側の沖縄担当大臣や外相なども熱意を感じられなかった。
米国から提示されたパッケージ案(座間への司令部移管とグアム移転)に対して外務省はグアム移転のみ受け入れる案で異論を唱えてきた。変わり行く米軍の安保環境再配置との認識の差があった。
日本政府内の見解もしっかりまとまっていない。そうこうしているうち14年経ていまだ何も解決できていない。時間だけを無為に費やし、本気さ欠けていたダム建設、拉致問題にも、どことなくよく似ています。
それにしても、守屋さん。
よくぞこれまでの秘録を公にするお気持ちになってくださいました。本書は、普天間基地問題に関心のある人には、必読の貴重な資料になっていると思いました。できれば鳩山政権が倒れる前、もし4月頃までに本書が世に出ていれば、より議論のプラスになったものと思いました。
【守屋武昌】1944年宮城県生まれ。東北大学(法)卒。71年防衛庁入庁。防衛局防衛政策課長を経て96年内閣審議官として普天間問題にかかわる。防衛庁長官官房長、防衛局長、2003年から4年防衛事務次官。2007年退職。
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