魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

ソコキホウボウ

2022年06月13日 16時53分59秒 | 魚紹介

久しぶりの「深海魚ハンター」さんからの魚のご紹介。キホウボウ科・ヒゲキホウボウ属のソコキホウボウ。写真は残念ながら鮮度が落ちてしまって残念な色彩になってしまったもので、実際にはもっと濃いオレンジ色。ソコキホウボウはヒゲキホウボウ属であるが、ヒゲキホウボウとは吻突起の形状が大きく異なっている。ヒゲキホウボウは三角形だが、ソコキホウボウではやや細長いのである。キホウボウ属とも似ているが、ソコキホウボウでは前鰓蓋骨に大きな棘があり、顕著な棘のないキホウボウ属との見分けはそれほど難しくはないだろう。以前モヨウキホウボウを見たとき一瞬ソコキホウボウあたりかと思ったが、前鰓蓋骨棘といえるようなものがなかったので見分けることができた。

ソコキホウボウの吻。やはり色彩が変になっているが、これは鮮度が落ちているため。もともとはきれいなオレンジ色であった。魚類検索の第三版では、吻突起の様子について、ソコキホウボウは「左右の吻突起は外に向かって開く」とあり、一方トゲキホウボウについては「左右の吻突起はほぼ僅かか、わずかに内側に向かう」とされている。ただし、実際には吻突起の形状によりこの2種を見分けることはできないようだ。一方、近年新種記載されたウスヒゲソコキホウボウは吻突起にボール状の肉質突起をもつことが特徴とされ、トゲキホウボウやソコキホウボウと見分けることができるようである。

現在ソコキホウボウとトゲキホウボウは下顎のひげの数で見分けるのが正確に見分けられるポイントのようである。ソコキホウボウでは3対あるが、トゲキホウボウでは1対しかない。黒い矢印で示したのがそれだが、ピントがうまくあわないのでこのような見た目になってしまっている。もう片方にも3本あるのだがピントがうまく合わなかったので、確認ができなかった。トゲキホウボウの体側の黒い模様は特徴的だが、同定のポイントにはなっていないようで、個体によって変異があるのかもしれない。

なお、ソコキホウボウの学名は長いことScalicus engyceros (Günther 1872)とされてきた。しかしこれは日本近海で見られるソコキホウボウとは別種である。ハワイ諸島近海で発見されたものを基に新種記載されている。この種はハワイのほかに天皇海山にも生息しており、トウホウソコキホウボウという標準和名が2019年についている。なお、現在のソコキホウボウの学名はScalicus quadratorostratus (Fourmanoir and Rivaton 1979)となる。ソコキホウボウは水深300mくらいの海底に多く生息し、生息する環境もソコキホウボウと似ている。底曳網で漁獲されるがほとんど食用にはなっていないようである。ただしキホウボウのように茹でて食べれば美味しいと思われる。この個体は「深海魚ハンター」さんにいただいた日向灘の個体。いつもありがとうございます。

●文献

Kawai, T. 2019. Revision of an armored searobin genus Scalicus Jordan 1923 (Actinopterygii: Teleostei: Peristediidae) with a single new species. Ichthyological Research, 66: 437–459.

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