魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

ニジカジカ

2017年04月30日 11時37分16秒 | 魚紹介

久しぶりの北海道産魚シリーズ。スズキ目・カジカ科・ニジカジカ属のニジカジカ

ニジカジカの第一背鰭

ニジカジカは日本では1属1種とされている。実際にはベロというよく似た種がいるのだが、これはベロという別属になっている。この2種は別属とされているが、見分けるのは意外と難しい。体側の模様からは同定できないという。同定のポイントとされているのは後頭部の様子で、ニジカジカは後頭部の皮弁が単一形であるが、ベロのそれは総状となっている。また前鰓蓋骨の形状もベロとは違っているようである。以前瀬能 宏博士にこの2種の同定方法についてお伺いしてみたが、背鰭の斑紋も同定のポイントになるという。ただし残念ながら私はベロを手にしたことがない。もしベロを採集されたという方はぜひとも見せて頂きたい。

食性はほかのカジカの仲間と同様に動物食性で、以前三陸沖産の本種を解剖した際にはかなり大きなヤドカリが胃の中から出てきた。小魚や小型の甲殻類も好んで捕食しているものと思われる。沿岸のごく浅い場所から水深200mを超える深海にまで生息し、底曳網や刺網など、さまざまな漁法で漁獲されている。

ニジカジカは太平洋岸では茨城県まで分布しているが、日本海岸では山口県にまで分布している。よく似た魚であるベロはそれよりも少しだけ分布が狭く、北海道~島根県・宮城県の沿岸に分布している。また生息水深も水深18m以浅と、ニジカジカよりも浅海に生息している種といえそうだ。北方性のやや深い海に生息する魚は日本海岸では広く分布していることが多いような気がする。海外では朝鮮半島からロシア沿海州にまで分布している。北海道などで食用とされている海産カジカ類はトゲカジカ、ギスカジカ、ヨコスジカジカなどの大型種が中心であるが、本種も味噌汁や焼き物などにして食べると美味しい。今日は短いですがここまで。坂口太一さん、ありがとうございます。

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ボウズハギ

2017年04月28日 20時40分48秒 | 魚紹介

以前小三郎jrさん(このぶろぐでもしばしばコメントいただきました、ありがとうございました)に送っていただいた個体だが、同定できず長い間冷凍庫で眠っていた個体。スズキ目・ニザダイ科。テングハギ属のボウズハギ。しかしこの属の稚魚は同定が難しいのだ。ただこの個体はテングハギなどのように成長するとツノが生えてくるような種や、そのほか尾柄部の骨質板が二つあるような個体と見比べると少しは同定しやすいように思う。

多くのテングハギ属と異なり、ボウズハギでは尾柄部に骨質板がひとつだけあるのだが、写真からはなかなかわからなかった。Facebookのコミュの中で加藤昌一さんに教えて頂いたのだが、尾柄部中央部の丸いのが骨質板のようである。成魚は生時体に黒くて細い横縞模様がでたり、黄色の太い縦帯があったりするが、夜間などは灰褐色の模様になったりする。幼魚は一様に青かったり、ぶち模様が出たりしているが、水中写真でみるとアイゴの仲間にも見える。おそらくアイゴ同様に保護色になっているのだろう。

背鰭棘数もほかの多くのテングハギ属魚類と比べて少なく、4棘となっている。日本産種でもう1種の尾柄部に骨質板がひとつしかないキビレボウズハギは背鰭に5棘ある。一方フィリピンやインドネシアに生息するNaso caeruleacaudaは4~5。この種は日本には分布していない。

ボウズハギの分布域は成魚は琉球列島、伊豆・小笠原諸島、東アフリカ~トゥアモトゥ諸島に至るインドー中央太平洋域(マーシャル諸島にはいない)。幼魚は千葉県館山湾以南の太平洋岸でも記録がある。成魚はサンゴ礁域で大きな群れをつくっていたりする。成魚の生息地では食用になったりするようだ。この個体を送っていただいた小三郎jr.さん、同定していただいた加藤昌一さん、ありがとうございました。

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トクビレ

2017年04月28日 08時09分05秒 | 魚紹介


今朝は以前にもご紹介した魚を。スズキ目・トクビレ科・トクビレ属のトクビレ。

トクビレの雄はハッカクとも呼ばれ、最近はスーパーの中の魚屋さんでさえ見るようになった。つまり、スーパーでも販売されるほどによく知られた美味しい魚ということである。以前もこの種をお刺身でいただいたのだが、美味しいものであった。北海道では「軍艦焼き」という料理があり、それに似たものを作ってみたがかなり美味しかった。またこの種を手に入れる機会があればそれをやってみたい。残念ながら最近はこの魚を購入したスーパーの魚の品ぞろえもだいぶ保守的になってしまった。

トクビレの雄の特徴は巨大な背鰭と臀鰭なのだが、雌の個体はこの背鰭と臀鰭が小さいのだ。残念ながら私がであったトクビレは大きな背鰭をもつ雄ばかりで、雌には出会ったことがない。どなたか雌のトクビレを持っているという方は私にご一報願います。

最後に、私が出会ったトクビレ3個体を。

名古屋市の柳橋市場で購入(2011)

つくば市の魚屋で購入(2014)

今回。北海道羅臼から送っていただいた(2016)

格好いい魚。坂口太一さん、ありがとうございました。今日は短めなのですが、このへんで失礼いたします。

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ビクニン

2017年04月27日 12時11分06秒 | 魚紹介


今日はバケムツの耳石を採取したが、魚体については、体が黒い以外はアカムツによく似ている感じがした。しかし耳石の形状はアカムツとだいぶ異なっていた。さて、ムツシリーズのあとは、クサウオシリーズになるのかもしれない。

スズキ目・クサウオ科・クサウオ属のビクニンという魚である。

クサウオ属の魚は変異個体である(とされる)オーストンクサウオを含めて日本に11種、世界で60種以上が知られる大きなグループ。本種は鼻孔が2対、鰓蓋下端は胸鰭下端よりも下方にある、胸鰭に欠刻がある、尾鰭基底付近に明瞭な白色斑がない、背鰭と尾鰭は尾鰭後半部でつながる、背鰭軟条数45~48、臀鰭軟条数は37~40であることにより、日本産のほかの同属魚類と区別することができる。

尾鰭には縞模様があるが、クサウオにみられる白色斑ほど明瞭なものではない。背鰭や臀鰭と尾鰭がつながり、ウナギ類やアシロなどのような尾鰭となっている。

日本国内での分布域は意外と広く、北海道の各地沿岸から日本海岸では島根県まで、太平洋岸では茨城県あたりまでその姿を見ることができる。海外ではサハリンから朝鮮半島までに分布する。生息水深が広くダイバーが入れるような浅い海から水深数100mの深海にまで及ぶ。底曳網などで漁獲されるが、クサウオの仲間は本種を含め、日本ではあまり食用とされていない。韓国ではクサウオが市場で売られているような写真を見たことがあるが、どのように食するかは気になるところである。今回は標本用としてしまったので、残念ながら食卓にアップすることはできなかった。

今回のビクニンは兵庫県の漁師さんから送っていただいたもの、こうやって魚を送ってくださる方々のおかげで魚を理解することができるのだ。自分だけの力でなく、たくさんの人に支えられてこれまで魚を理解することができたのだ。いつもありがとうございます。クサウオの仲間は種類が多くて難しいが、検索図鑑やインターネットなどの力を駆使し同定できた時にはとてもうれしい気持ちになるのだ。

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ムツ

2017年04月26日 00時50分36秒 | 魚紹介

昨日「バケムツ」をこのぶろぐでご紹介したので、今回は「本家」のほうも紹介しておかなければいけない、ということで。スズキ目・スズキ亜目・ムツ科・ムツ属のムツ。

私は深海魚を見たり触ったりする機会が多いのだが、ムツについてはほとんど見たことがない。釣りでは浅い岩礁域を探って小物を釣るような釣りが好きなので、ムツに触れ合う機会はなかなかない。あっても、上のような幼魚ばかりである。

ムツは幼魚のときは沿岸のごく浅い岩礁域や藻場に生息していて、その時はごく浅い場所でも本種と出会うことができる。そして大きくなるにつれて深場へと移動し、大きなものは水深700m以浅の深海に見られるようになる。4月に高知県の浅瀬で全長5cmくらいの幼魚が群れていた。6月にもモジャコ狙いの漁によりイシダイやイシガキダイ、そして「モジャコ」とともにこれより小さな幼魚が採集された。この個体は2009年7月に採集されたもの。場所は高知県の宿毛湾。4月ごろ高知県の浅瀬に出現した幼魚が大きくなったものなのだろうか。

ムツ科は世界で3種が知られている。うち1種は西大西洋にすみ、日本には2種が分布する。もう1種のクロムツは本種に似ているが、体はもっと黒く、側線上方横列鱗数および側線下方横列鱗数がムツよりもやや多いこと、側線有孔鱗数も同様にムツよりも多いことなどにより区別される。

ムツは日本では広い範囲に分布している。具体的には北海道~琉球列島近海に分布している。海外では朝鮮半島や台湾に生息しているが、モザンビークや南アフリカにもいる。しかしその間、たとえばオーストラリアやインド、スリランカなどにはいないのだろうか。奇妙な分布である。一方クロムツはおそらく日本の固有種で、福島県から伊豆までの深海に生息している。

この仲間、ムツとクロムツについては「呼称」の問題がある。ムツはよくクロムツという名前で市場やスーパーなどで販売されている。アカムツや、オオメハタ属(俗にシロムツと呼ばれる)と区別するねらいがあるのだろうが、クロムツという名前の魚がいる以上、ムツをクロムツと呼んで販売するのは好ましくない。ムツはムツ、クロムツはクロムツと呼んであげたい。

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