魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

信用できる魚サイトとは

2023年03月31日 23時56分52秒 | 魚類とインターネット

インターネット上での魚図鑑や、魚を紹介しているサイトではいくつかの傾向が見られます。そしてその傾向により、そのサイトが信頼していいのか、そうでないのかを(ある程度)判断することができます。今回は信用できる魚サイトか、信用できない低品質なサイトか、見分けるための傾向をご紹介します。

信用できる魚サイトとは

猛毒を持つ魚もいるが恐怖をあおってはいけない

「信用できる魚サイト」というのは、はじめから信用できる魚サイトにはなりません。解説してある程度時間がたち、多くの人に見てもらう中で「信用」というのがついてくるのです。しかし、残念ながら開設されて時間がたっても信用されない魚サイトが多く、逆に解説されて時間がたっていないサイトで信頼を得ている魚サイトはまずありません。これは近年、とくに2010年代後半以降できたサイトではWordpressをベースとした「誰でも作れる低品質」魚サイトが乱立しているということにあります。

では、どのような魚サイトが信頼性を得ているのか、実際に魚の名前でGoogle検索を行うと、ほとんどの魚種でいくつかのサイトのみが上位にヒットします。具体的に言えば「市場魚介類図鑑」「WEB魚図鑑」「魚類写真資料データベース」、そしてあまり信頼はおけないが便利で使用している人も多い「Wikipedia」の4つです。これらのサイトはどれも20年以上運営されており、その分大きな信頼を得ているともいえます。実際に信頼性がなければこれほど長いことサイトは運営できません。

一方近年生まれたサイトも多少は出てきますが、それは「飼育」やら「釣り」など特定のワードを組み合わせた場合のみヒットされています。しかしこのようなサイトは検索からの流入者数を増やすために「猛毒」など「大げさなワード」を出したり、飼育したこともないのに生物飼育情報を出すなども多く、信用できるものではありません。そしてこれらのサイトの多くが開設して1~3年ほどで更新を終了してしまっています。

 

サイト作成の動機

獲れた魚の名前を知りたい人も多いはず

信用できる魚サイトはどのような目的で作成されているのでしょうか。色々ありますが、多くの場合「知」の情報提供があげられます。これは、ヒトに潜在している「知」の欲求、知的好奇心を満たしてもらうためです。たとえば、釣りやダイビングで見た魚の名前が知りたい。きれいで感動した。いつみられるのか、友達とこの感動を分かち合いたい、というものです。上記の「市場魚介類図鑑」や「WEB魚図鑑」では詳細な解説もあり、これを満たすことができるはずです。一方、低品質サイトでは断片的な情報やWikipediaにあげられた不正確な情報がメインとなっているので、なかなか知的好奇心を満たすことはできません。

この「魚のぶろぐ」ではいつもこのような低品質魚サイトを問題視してきましたが、彼らにとっては「誹謗中傷」とされているようです。ですがこれほど誹謗中傷されてきたのにいまだに続けられている理由は簡単で、低品質サイトの運営者にとってはこれが資金稼ぎになっているのです。魚のコンテンツでこんなことはやってほしくはないのですが、彼らがやってきている「トレンド追っかけサイト」などはもうすでにレッドオーシャンになっていて、ほかの記事、例えば車だの、ホビーだのさまざまなジャンルでもレッドオーシャンとなりつつあり、まだまだライバルが少ないこのジャンルに進出してきているのだと思われます。

広告を貼り付けて非常に簡単な資金稼ぎとなっていますが、このようなサイトは半永久的に残すべきとは正直思えません。実際低品質サイトの運営者も同様に思っている人が多く,ある程度運営に行き詰まったと判断すると、サイトを売却してしまうのです。全く更新されていないサイトは、おそらくサイトの更新をあきらめてやめてしまったからだと思われます。

 

文章コンテンツの出典

魚の記事を書くなら魚類検索は参考にしたい

信用できる魚サイトの文章コンテンツは主に書籍や論文からきています。しかし、それだけなら低品質サイトの運営者にも同じことができます。もっとも、低品質サイトの運営者は、魚の解説をかくために必要な書籍を購入したり、文献を入手したりするなんていうことはほとんどないのですが。

ですが信用できる魚サイトを作り、文章コンテンツを出している人たちは大体が魚のことが好きな人たちなので、実際に魚に触れ合ったという方が多いはずです。そのため文章コンテンツにおいても、概ねその触れ合いの中の経験というものが生かされてきています。一方低品質サイトの運営者は魚にあまり触れあったことがないという人も多く、サイトに掲載されている文章はほとんどが同じように書いている低品質サイト、もしくはWikipediaなどのもので、その分品質や信憑性はどうしても低くなってしまうのです。

 

画像コンテンツの出典

画像の無断使用問題は何らかの対策が急がれる

画像コンテンツも、信用できるサイト、信用できないサイトともに非常に多くあります。信用できるサイトは基本的にバナーなど一部の素材をのぞいて、サイトの運営者が用意します。画像を自ら用意するので、著作権法なども特に怖いことはありません。中には「魚類写真資料データベース」や「WEB魚図鑑」のように、他者からの画像やデータをお借りして図鑑をつくるというサイトも存在します。この場合、第三者の写真が使用されていないかどうか、注意する必要があるといえますが、これは例外的なものといえます。逆に低品質サイトや、しょうもないYoutubeチャンネルなどから狙われる可能性があることには気を付ける必要があります。

一方信用できない低品質サイトの画像はどこからきているのでしょうか。まず低品質サイトを象徴する外国人の写真素材など、フリー素材のサイトから借りてくるというケースが多いです。近年はほかにも写真素材を販売するサイトなどもありますが、フリー素材ではないものもあり、著作権に関する引用表示の必要性なども含めて使用には注意が必要です。さらにフリー素材は数も少なく、いくつかの全く同じ写真や画像が複数のサイトで見られるなんていうこともあります。

さらにひどいものになると、いくつかのサイトでは別のサイトからの写真を勝手に使っているなんていうケースもあります。特に「市場魚介類図鑑」などから引っ張ってきているものが多いです。こういう無断使用の画像は使用料を徴収するのが一番ではありますが、弁護士への相談など、使用料の徴収よりも高くつくケースが多く難しいこともあります。

 

記事を書く・出すタイミング

深場の魚は低水温で飼育したい

記事を書くタイミングも、信用できるサイトとそうではないサイトでは大きく異なります。信用できるサイトでは特に外部に左右されずに記事が出てきますが、信用できない低品質サイトでは、何か動きがあったらすぐに出てきます。「動き」というのは「テレビで紹介された」とか「ネットニュースで話題になった」などです。このような動きがあると、競い合うように記事が出てきます。もっとも出てくる記事は見るに堪えないレベルであり、あるイトヒキベラが新種記載されたときなど、いち早く飼育情報を作成した生物サイトがありますが、飼育されたことがないはずなのに飼育情報が掲載されていてお笑いものです。水深50mの深さの魚など28℃で飼育したらやばいとおもうのですが。このような早さを重視し信頼性は軽視というのは英国のある島の鉄道とか、以前よく見られたトレンドブログに通ずるものがあります。

最後に

信用できるサイトも、信頼できないサイトであっても、それは「結果」でしかない。本当は(動機がどうであれ)信用できていない魚サイトであっても、本当は信用できるサイトを作りたかったのかもしれない。しかし結果的には信用できないサイトになってしまったというケースが散見される。では、信用できない魚サイトになってしまった原因というのは何か。

答えのうち二つは「資金不足」と「経験不足」である。お金をかけないで良質なサイトをつくることはできないし、いいサイトをつくるのであれば情報源の入手が重要になってくる。一方「経験不足」というのは「文章コンテンツの出典」にも書いたとおりで、実際に「魚を探す」「魚を採集する」「魚を食べる」「魚を飼う」「魚を実際に同定してみる」など、一連の行動の経験がないと、どうしても本をだらだら模写しているだけになってしまいがちである。では、どうすればよい魚サイトをつくることができるのか。これはまたいつか考えてみたい。

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ヒレタカフジクジラ

2023年03月30日 23時44分28秒 | 魚紹介

お久しぶりです。ネタが少なく、更新できていませんでした。ほかにも忙しい理由もできてきました。ということで、今日は以前に採集された魚のご紹介。ツノザメ目・カラスザメ科・カラスザメ属のヒレタカフジクジラ。

ヒレタカフジクジラ(2009年5月)

カラスザメ属は意外と大きなグループで、本種の含まれるフジクジラグループのほか、日本産ではカラスザメ、リュウキュウカラスザメ、ニセカラスザメ、フトカラスザメといった種がほかにも知られているが、古い図鑑ではツノザメ科の一員とされていたことがある。また魚類検索第二版では、ツノザメ目ではなくヨロイザメ目とされていたことがあった。またヨロイザメ目はツノザメ・エイ上目とされていた。

ツノザメ目のサメは鰭に特徴があり、背鰭は2基で,その前方に大きな棘があるという特徴と、臀鰭がないという特徴である。このうち背鰭の前方に棘があるというのはネコザメの仲間にも共通するが、ツノザメの仲間は臀鰭がないところが特徴だという。

近縁種にホソフジクジラやフジクジラといった種がいるがこれらの種とは臀鰭上方にある奇妙な形の斑紋によって見分けられる。この斑紋は前・後方に分岐しているのであるが、本種では後方の分岐が長いためフジクジラと見分けられる。ホソフジクジラはヒレタカフジクジラと比べるとこの後方の分岐が細いのが特徴であるという。またヒレタカフジクジラは第2背鰭上に鱗がないがホソフジクジラではあるということでも見分けられるようだ。

分布域はニューサウスウェールズ、ニュージーランド。および相模灘~土佐湾までの太平洋域、沖縄諸島、沖縄舟状海盆であるが、どうやらオーストラリアやニュージーランドのものと日本のものは異なるという。本種の学名Etmopterus molleriはニューサウスウェールズ産のものがタイプ標本とされているので、日本のものには別の学名が与えられるべきかもしれない。そうなっても標準和名の変更はないだろう。深海釣りでは決して珍しくはないものの、食用としてはあまり利用されていない。大体200~300mほどの深さで網をひくとよく入ってくる魚であるが、860mくらいの深さにまで見られるという。

今回の個体は有限会社 昭和水産の沖合底曳網漁船「海幸丸」で2009年に漁獲された個体。いつもありがとうございます。

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キツネベラ

2023年03月21日 23時51分25秒 | 魚紹介

朝8時に起きてテレビで野球を見ていたらウツボ水槽が予想以上に汚れてしまったので急遽掃除。今日ご紹介するのは久しぶりに入手した大型のベラ、キツネベラ。この種は全長50cmを超える大型種であり、このタキベラ属としては同じように大型になるタキベラに次ぐ大きさになる。

キツネベラの体側後方の暗色斑

キツネベラと名前が似ているものにキツネダイがいる。どちらもベラ科・タキベラ亜科・タキベラ属ではあるのだが、亜属がことなる。キツネダイはVerreo亜属なのに対し、キツネベラはDiastodon亜属で、タキベラなどと近縁とされる。しかしキツネダイは吻がもっと長く、体側に赤い点が入っていたりする。一方キツネベラは体側後方に大きな暗色斑が見られる。ただこの個体は大型個体のためか、この暗色斑は不明瞭である。なおキツネダイについてはこちら

こちらはキツネベラの下顎。大型個体では下顎が黄色っぽくなっている。

一方幼魚は成魚とはだいぶ色彩や模様がことなっていて、頭部から背中にかけて黄色が入り、背鰭から臀鰭にかけて太い横帯がはいる。なおこのキツネベラの幼魚はごくまれに海水魚店で販売されていることもある。しかし水槽でもある程度のサイズにはなるし、この仲間を飼育するのであればカエルウオの仲間やスズメダイの仲間を入れられない。だから安易に手を出してはいけない。水族館でもこの仲間は性格がきついためか、美しい魚のわりにはあまり見られないように思う。一方、琉球列島の市場にはよく水揚げされる魚である。例の「沖縄さかな図鑑」はベラ科に対して「市場価値はない」だの、あんまりな評価が目立つが、本種はそのような表記はなく、琉球列島ではふつうに食されている。地方名は「あかれー」とのこと。以前入手したキツネダイは薄造りがよかったが、今回のキツネベラも薄く切り。しゃぶしゃぶにしてみたが非常に美味しい。今回のキツネベラは長崎の石田拓治さんより。ありがとうございました。

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ヒゲナガヤギウオ

2023年03月19日 21時26分14秒 | 魚紹介

こんにちは。今日は3月19日。元HKT48、宮脇咲良さんのお誕生日です。ちなみに実人気は5位。さて、この間福島県の方から珍しい魚が我が家にやってきました。スズキ目・トクビレ科・ヤギウオ属のヒゲナガヤギウオ。

ヒゲナガヤギウオの特徴は何といっても、下顎の先の細長い「ひげ」である。このひげは非常に長く、頭部よりも長い。ヤギウオでは眼径より短いのが特徴とされている。「魚類検索」第三版では「ひげの長さにはかなり変異がある」とされている。体はほかのトクビレ科と同じように、一様に硬い骨板に覆われている。その数は50~53個とされているが、ヤギウオと数値は被るのだろうか。

筆者の手持ちの本「原色魚類大圖鑑」ではヤギウオは図示掲載されていないがヒゲナガヤギウオのほうは図示掲載されている。分布域は「富山湾から北海道に分布」とされているが、この個体は気仙沼産。日本海岸だけでなく太平洋岸にもいるようである。ヤギウオは青森県以北の日本と元山に分布するとされる。なお、当時は「くまがえうお科」とされ「(別名 とくびれ科)」としてかっこ付で紹介されていた。なお、本種は近年まではヤギウオの異名とされていたが、近年復活するうごきがあるらしい。まだ「あるらしい」というのはまだ文献が出ていないため、そういうあいまいな言い方しかできないからである。申し訳ない。ヤギウオ属はFishbaseで調べたところヤギウオのみの1属1種とされているが、本種のほかにも復活する可能性がある種がいるらしい。Fishbaseによればヤギウオの分布は広く、北日本から極東ロシア、北米西海岸にまで至る。ヤギウオは浅海の浅場にすむとされるが、ヒレナガヤギウオは深場にすむとされる。

今回2個体我が家にやってきたのだが、いずれも雌で卵を持っていた。卵ごと焼いて食べてみた。トクビレの場合は「軍艦焼き」という料理がよく知られているのだが、本種は小さくて軍艦焼きがしにくいかもしれない、というよりはみそ焼きがあまり好きではない。ということでノーマルな塩焼き。

あまりにも小型であり細いため、指で身をこそぎ取って食べるしかない。しかし、味はよい。今回の個体は田母神真広さんからのいただきもの。ありがとうございます。

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ロウソクギンポの近況

2023年03月17日 01時30分57秒 | 魚介類飼育(海水)

こちらはこの間のタマギンポのいた高知県の潮だまりで採集したロウソクギンポ。あの潮だまりでは、イソギンポやナベカはほぼおらず、この種に入れ替わっている。カエルウオはいるが、関東程多くはない。タネギンポ、タマギンポ、センカエルウオ、シマギンポ、そして見ただけのハナカエルウオ属の何か、といった種類も関東のカエルウオのニッチに入りこんでいるため、と思われる。なおこのロウソクギンポはコケはカエルウオほど食わず雑食性で、そういうところもカエルウオと違ったところであるが、分類学的にはナベカ族ではなくカエルウオ族となっている。

サンゴ水槽で飼育中。手前左のサンゴはオレンジのヤッコアミメサンゴなのだが、フラグにすると色がわかりにくくなる。ニラミギンポ属やセダカギンポ属などはサンゴの表皮をなめてしまうこともあるのだが、ロウソクギンポは概ね問題なし。我が家では2匹飼育中であるが、結構争うので60cm水槽であれば1匹で飼育するのが安全といえるだろう。

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