魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

ミナミゴンベ

2024年02月29日 22時47分34秒 | 魚紹介

さて、今日は4年に1回の閏日。これで2月もおしまいです。今月は「ニジマスの放流」と、職場のオバサンに振り回された一か月となった。魚も今月はチカを購入しただけ。なんといっても借金が100万円あり、こつこつ返済している私のことなので、あまり魚を購入することができなかったということもあるんですが(というか最近、競り負けているというのも大きい)。

ということで今日も以前我が家にやってきたが紹介できていなかった魚を。ゴンベ科・オキゴンベ属のミナミゴンベ。

ミナミゴンベは同じ属のオキゴンベによく似ていて、大きな暗色の斑点が体側にあるのが特徴である。頭部には斑点が少ないが、鰓蓋には大きな暗色斑があるのもミナミゴンベの特徴である。また眼の下の模様は横帯のようになるところも特徴的であるが、斑紋には変異があるため同定のキーとしては使いにくいのかもしれない。まあ実際、同属のほかの種も、横帯になっていることが多く使えないのだろう。

ミナミゴンベの尾鰭には目立つ斑紋はない。体側には薄い横帯がある。生息環境によりよく目立っているのだが、本個体は薄い。

この種によく似ているものにヒメゴンベという種がいる。私も最初にヒメゴンベを釣ったときにはミナミゴンベと誤同定したことがある。しかしヒメゴンベは普通頭部に斑点が多く、尾鰭にも赤い斑点がある。色彩的にはヒメゴンベのほうが美しいことも多いのだが、このヒメゴンベは分布域が極めて広く、バリエーションも多い。このあたりの種もしっかり分子分類とかやれば別種になるのかもしれないが。

ミナミゴンベの分布域を見ると、千葉県館山、伊豆半島、八丈島、屋久島、琉球列島...とあるが、伊豆半島と屋久島の間では得られていないとか、そんなことはなかろう。実際に「魚類写真資料データベース」においては和歌山県串本や高知県柏島でも撮影されている。この種は浅場~深場にいる種で水中写真はそこそこあるようなのだが、やはりダイビングスポットだと採集も難しいのであろう。

オキゴンベ属は8種が有効種として知られており、日本には従来オキゴンベ、ヒメゴンベ、サラサゴンベの4種が知られてきたが、近年になって日本からもう一種キリンゴンベというのが日本初記録種として報告されていて計5種となった。私はオキゴンベ、ヒメゴンベを釣ったことがある。サラサゴンベは沖縄ではそこそこ見るというのでチャンスはあるだろう。一方、キリンゴンベは日本では水深20~45mということなので、採集するのは難しいだろう。釣りであってもきついかもしれない。なおキリンゴンベの分布域は伊豆半島、伊豆大島、小笠原諸島、インドネシア、モーリシャス、マダガスカル、レユニオン、アリワルショールということで、この分布域はハタ科ハナダイ亜科のオシャレハナダイというのによく似ている。これも昔モーリシャスで見つかったのが伊豆諸島や西太平洋に出現したもののようである。そのうちエレガントフラッシャーやインディアンバタフライフィッシュが日本で見つかる可能性は...なさそうであるが。

ゴンベの仲間は食用になることはほとんどないのだが、今回のミナミゴンベは煮つけにして美味であった。今回のミナミゴンベは私が釣ったものではなく、小笠原諸島で山田良一さんにより釣られたもの。いつもありがとうございます。

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釣り堀のはなし5

2024年02月26日 22時57分27秒 | 環境問題

さて、長良川のニジマス釣り堀でついに国が動いたというニュース。まあ、河川を区切って釣り堀を作っていたわけで国交省サマの出番となったわけですが、もう最初の釣り堀の時点でそれを見抜くことができなかったのだろうか。まあTwitter民(Xと改名)のほうが見抜くスピードが早かったわけですな。報告して再度許可が下りれば運営再開ということになる。というか、もう運営再開しなくてもいいよ。

しかしながらこの「ニジマス釣り掘」というのは恒久的なものではなく、鵜飼のオフシーズンに観光客を呼び込むというもので、河川に網を張ってそれでおわらせるというようなもので、逃げるのは時間の問題であったように思える。さらに言えば、この点だけでなく、「河川を仕切ってニジマスを放流し、釣り掘りやつかみ取り」というようなイベントは現在も日本のあちらこちらで行われているのである。であれば、今回のような「ニジマス事件」は、夏になれば全国各地の釣り堀で行われるだろう。つまり、今後もニジマスが逸出するような機会は完全に失われたわけではないということである。賢明な読者の方はぜひ各自治体や地域の行政をチェックするようにしてほしい。みんなで力を合わせて漁協・悪質な生物放流者・行政から生物多様性を守ろう!

そしてそれはニジマスばかりではない。「ニジマスがだめならアユならよかろう」と安易に考える向きもあろうが、結局アユもアユで逸出する可能性もあるし、別系群の個体がもたらされる可能性もあるし、そうなったら「同じ種で外見で判別できない」ためニジマス以上に厄介である。もちろん寄生虫の問題もあり。こういう「河川を区切った釣り堀」というのは、もう前世紀の「負の遺産」というべきであろうか。

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釣り堀のはなし4

2024年02月23日 20時27分32秒 | 環境問題

以前「釣り堀のはなしは3でやめ」と書きましたが、結局4まで。たぶんこれが最後である。

やはりというか、当然というか、例の長良川の釣り堀からニジマスが大脱走したもようである。2月としては想定外の雨が降り、釣り堀にいたニジマスの9割以上が流れたのではないか、という。個体数にして19000匹が流出したのだから、その9割だと相当な数が逸出したということになるだろう。すでに岐阜大学の向井貴彦教授により、「アユに悪影響が出ることが考えられる」と述べている。

今回の件では「2月にこれほどの大雨は想定外」と述べていた長良川の漁協関係者であるが、もう「河川を区切って外来種を放して釣り堀を運営」するというのは時代遅れであるといわざるを得ないだろう。ニジマスはサケ科の魚なので、海水でも影響はないのかもしれない。そうなれば海へ降りてほかの河川にも遡上してしまうことも考えられる。広域に拡散する事態は何とかして防いでほしいのだが・・・。ニジマスがさらに厄介なのは「特定外来生物」でないということで、一部の地域では「在来種」のようなイメージが築かれているということである。だから駆除の理解も薄いだろう。うーん、厄介なことをしてくれたものである。なお写真はニジマスと同じサケ属のアマゴ。主に太平洋岸にそそぐ河川に放流されたが、赤い点が美しいアマゴは、亜種関係にあるヤマメの生息域にも移され問題になっている。

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ウミタナゴ

2024年02月21日 16時57分56秒 | 魚紹介

今回は普通種であるものの、このぶろぐでは紹介できていなかった魚をご紹介。ウミタナゴ科のウミタナゴ。

従来の本ではウミタナゴ科の魚はオキタナゴ・ウミタナゴ・アオタナゴの3種のみが掲載されていたが、現在はウミタナゴ科は先述の3種のほか、アカタナゴという種が知られ、合計4種からなり、このウミタナゴの亜科にマタナゴというのがおり、日本産種は合計2属4種と1亜種の合計5種・亜種からなる。しかしこの5種・亜種は東アジアに生息するウミタナゴのすべてでもある。Fishbaseによればウミタナゴ科は世界で24種がいるというが、先述の5種・亜種を除いてほぼすべての種が東太平洋に生息する。ケルプの生えた岩礁域を北米産のウミタナゴ類であるサーフパーチが泳ぐというのは現地の人にとってはお馴染みなのだろう。日本の磯でメジナやクロダイが群れるように。

そしてもうひとつの例外がカリフォルニアの河川に生息するロシアンリバートゥールパーチで、この種は純淡水域に生息するウミタナゴ科とされ貴重である。しかしながら拡大写真を見ると、ああ、ウミタナゴの仲間なのだな、とわかる。

ウミタナゴ科は繁殖様式ではほかの魚と大きく異なり、卵を産まず子を産むとして有名である。この個体は何も入っていなかったが、大型の雌は腹がぱんぱんに膨らんでいて、中には体長5cmほどの胎仔が見られた。

ウミタナゴとマタナゴは先述した通りに亜種関係にある。分布域はウミタナゴが北海道沿岸、東北地方太平洋岸、日本海全域、宇和海、九州東シナ海沿岸(タイプ産地は長崎)であるとされるが、ほかにも宮崎沿岸でも本亜種とおぼしき個体が見られる。海外では朝鮮半島、済州、黄海、渤海に見られ、一方のマタナゴは千葉県以南の太平洋岸、紀伊水道、瀬戸内海、豊後水道で分布する。写真の個体は宇和島産で、どちらの亜種も分布する海域の産でありしっかりチェックしてみたい。

ウミタナゴとマタナゴを識別するのは頭部の模様で行うのがよいとされる。ウミタナゴもマタナゴも眼の下や前鰓蓋縁に明瞭な黒い点があるのが特徴である。

写真の黄緑色の矢印(前鰓蓋縁隅角部)で示した黒色斑はウミタナゴにもマタナゴにもあるが、赤い矢印で示した前鰓蓋縁前下方の黒色斑はウミタナゴにはあるものの、マタナゴにはないので見分けることができる。マタナゴについては成魚の良い写真を有しておらず紹介することはできなかった。またいつかいい個体が入手出来たら「魚のぶろぐ」でも紹介したいと思っている。メバルとともに「春を告げる魚」とされ、釣りの対象魚である。身はやわらかいが塩焼きが大変おいしい。

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チカ

2024年02月19日 21時47分14秒 | 魚紹介

記念すべきことに「魚紹介」もついに1000回目である。1000回目ということで、何か「特別な」魚にしようかと思ったが、この間またしてもいい魚が手に入ったのでご紹介したい。サケ目、ないしはキュウリウオ目・キュウリウオ科・ワカサギ属のチカ。キュウリウオ科の魚の紹介は2017年の春にキュウリウオを紹介して以来6年半くらいぶりである。

チカの鱗

チカといえば北海道の沿岸では人気がある、有名な釣りのターゲットである。アジやサバなどの代わりに釣り人が防波堤で本種を狙うらしい。ワカサギとは同じ属であり、縦列鱗数はチカで62~68枚、ワカサギでは54~60枚であることや、背鰭起部が腹鰭起部よりもわずかに前にあること(ワカサギでは腹鰭起部のほうがわずかに前にある)、またチカでは上顎の歯が小さいかない(ワカサギでは上顎に尖った歯がある)ことで区別することができるらしい。

ワカサギは河川や湖などにすみ、海で生活し遡上するものもいる。ワカサギは日本のあちこちに移植されているが、このチカは一生を北海道各地や東北地方の沿岸域に生息する海産魚である。英語名Surf smeltもそこからきているのだろうか。なお日本産のワカサギ属魚類にはもう1種イシカリワカサギというのがいるが、この種は残念ながらいまだに見ることがかなっていない。イシカリワカサギは縦列鱗数51~60枚でワカサギと被るが吻や脂鰭の長さにより見分けることができる。なお、このイシカリワカサギは日本産キュウリウオ科魚類で唯一、現物を見たことがない魚である。北海道にお住まいの方、ぜひともよろしくお願いいたします。

2012年に入手したチカ

なお、チカを入手したのは今回が初めてではない。12年ほど前にスーパーで北海道産の個体を入手したことがある。その時よりは写真も充実したのかな、とも思うのであるが。いずれにせよサケ目の魚はなかなか入手できなく撮影する機会も多くない。今後は積極的にサケ目も入手しようと思っているのだが、サケ目のいくつかは特に入手しにくい。マスノスケという種が欲しいのだが、これは非常に高額である。

チカの唐揚げ

チカは北海道では刺身や唐揚げなどにして食されているという。今回は別のものを揚げて食べた後ということで、これも唐揚げ粉をまぶして唐揚げで食した。7匹同時に入手したのであるが、そのすべてが子持ちシシャモならぬ子持ちチカ、であった。身は白身で骨からの離れもよく、卵も併せて非常に美味しい。さすが北海道で親しまれているもので、我が家でも北海道の味覚を堪能することができた。北海道はいつか行きたいところである。珍しいタウエガジ類やカジカ類の宝庫なのだ。

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